根付く想い、実る夢 伊平屋発ワインプロジェクト始動

沖縄県の最北端に位置する伊平屋島は、約40kmの周囲を美しいサンゴ礁に囲まれた小さな島で、那覇市から北方に117km、フェリーが発着する今帰仁村運天港より41.1kmの距離にあります。人口は約1200人、のどかな自然と伝統文化が残る場所です。近年、旅行ニーズの多様化で島の手付かずの自然・歴史文化への評価が高まり、マリンレジャーを中心とした観光地としても急速に脚光を浴びています。 現在、伊平屋村では3名の地域おこし協力隊が活動しています。今回は、島の新しい名産品を作ろうと、リュウキュウガネブという沖縄在来種のブドウの栽培と商品開発に奮闘している仲村莉音(りん)さんにお話を伺いました。

伊平屋を選んだ理由は原風景

大阪出身の仲村さん、実は父親が沖縄の久米島出身。幼少期は石垣島、本島南部の南風原と沖縄で過ごしていたこともあり、幼い頃の記憶の原風景は沖縄だったと言います。当初は定年後に沖縄移住を漠然と考えていましたが、大学在学中に地域おこし協力隊という制度を知りました。

「働いてから沖縄に飛び込むより、今から地域と一緒に作っていく一員になりたいという気持ちが強くなりました。他の地域も考えたんですけど、人口が1200名という規模もちょうど良いと感じましたし、あまり開発されていない自然が残る伊平屋村に決めました」

伊平屋島には来たことはなかった、と笑いながら話す仲村さんでしたが、沖縄の離島で持続可能な発展を模索したいという強い想いが、その決断を後押ししたと言います。

「初めての場所に新卒で来たこともあって、最初は右も左も分からなかったです。でも、当時の職場の上司は"この場所に住んでくれるだけで良い"って言ってくれました」

島に来た当初から、職場の温かいサポートがあったと言います。

我喜屋の八月遊び・豊年祭で棒術に興じる仲村氏(写真右)
我喜屋の八月遊び・豊年祭で棒術に興じる仲村氏(写真右)
村青年団協議会による旧盆エイサーの集合写真
村青年団協議会による旧盆エイサーの集合写真

ヤマブドウとの出会い、試行錯誤の1・2年目

配属先は伊平屋村役場企画財政課。活動内容の自由度が高いフリーミッションで活動することになりました。まず、仲村さんは地域活性化の事例や総合計画を調べながら自分の役割を模索していました。 転機は、当時の上司とのドライブ中の何気ない会話でした。上司から島内にも自生している沖縄在来種のリュウキュウガネブ(ヤマブドウの一種)の存在を教えてもらった仲村さんは、地域のアイコンになるような商品をひらめきました。

「上長から、このブドウでワインを作っている場所があるのを教えてもらいました。調べてみると、沖縄本島でも栽培されていて、結構いいかもって思ったんです。ワインは世界中で好まれる商品じゃないですか。伊平屋島という場所を、ワインをきっかけに知ってもらう。島の認知を広めることもできるんじゃないかなって考えて」

農業への興味もあり、上長にも相談しながらプロジェクトを本格化。現在、島内3ヶ所でリュウキュウガネブの試験栽培に取り組んでいます。ただし現実は厳しく、雑草のように逞しい植物という認識は払拭されました。沖縄の湿潤な気候では水捌けの悪さから根腐れが多発し、フランスなど冷涼地での栽培方法とは全く異なるアプローチが必要だったのです。県内の先行栽培者との情報交換を重ね、栽培体系の確立に向けて試行錯誤を続けています。

「リュウキュウガネブは海岸や道端など、色んな場所に雑草みたいに自生していると聞いたので、栽培を甘く見てたところがありました。普通のブドウと野生のブドウは全然違うので、栽培方法を体系化していきたいです」

水捌けを改善するために土壌改良に励む
水捌けを改善するために土壌改良に励む
島に自生していたリュウキュウガネブの実
島に自生していたリュウキュウガネブの実

夢と現実のバランス、伊平屋で描く未来

今後の目標は、島内でリュウキュウガネブの栽培方法を確立し、収穫まで実現すること。そして最終的には伊平屋産ワインの製造を夢見ています。ただし、10~20年かかると現実的に見積もる仲村さんは、兼業農家として他の仕事も検討中。ブドウ栽培一本での成功を待つのではなく、島での生活を持続させながら、長期的に夢を追い続ける道を模索しています。地域の人に支えられ、ここなら暮らしていけるという実感が、その覚悟を支えているのです。

仲村さんがブドウの栽培と同じくらい大切にしていること、それは地域活動です。青年会活動や地域活動へ積極的に参加することで、地域の人達に受け入れられていったと言います。取材の日は診療所の開所式典で村青年団協議会によるエイサー演舞、夜は区の大綱引きで使う綱作りがあるとのことで、見学させてもらいました。

「島に来る前は地域の人達に受け入れてもらえるか不安だったんですけど、エイサーも地域行事も温かく迎えてもらいました。今年でエイサーは3年目なんですけど、最近は"上手になってきてるね~"と言ってもらえるようになって、とても嬉しいですね」

仲村さんの地域に根付いた活動のように、リュウキュウガネブも伊平屋の土地に根付き、島を支える存在になってくれることを願っています。

写真提供:仲村莉音・筆者 取材日:2026年8月3日 外山

開所式典でエイサーを踊る青年団協議会(写真右)
開所式典でエイサーを踊る青年団協議会(写真右)
夜の公民館で大綱引きに向けて地域の人と綱づくり
夜の公民館で大綱引きに向けて地域の人と綱づくり

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エメラルドブルーの海に囲まれ、ゆったりとした時間が流れる沖縄。那覇の街歩きや国際通りのにぎわいもあれば、少し足を延ばすと集落の古民家や赤瓦屋根が残り、地域ごとの暮らしの営みが息づいています。島ごとに異なる伝統芸能や食文化が受け継がれ、祭りや行事を通して地域の人とのつながりを感じられるのも魅力です。観光地として知られる一方で、日常には市場での買い物や浜辺の散歩、庭先での交流など、温かな人との触れ合いが広がっています。都会の便利さと島ならではの自然、そして多様な文化が共存する沖縄は、暮らす人にとっても発見と喜びにあふれた場所です。

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