古着と古本の店主が語る、山中温泉の余白が秘める可能性と「自分らしい居場所づくり」vol.2

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2026/09/08

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2026/09/03

前回のvol.1では、重吉祐輔さんの「COSMO」開業までの道のりや居場所についてのお考えをご紹介しました。

続くvol.2では、山中温泉にある余白や、「COSMO」開業後、お店を営みながら自分らしい居場所づくりを模索する、そのリアルをご紹介します。

〈プロフィール紹介〉

重吉祐輔(しげよし ゆうすけ)

山中温泉で古着と古本のお店「COSMO」を営む。 石川県小松市出身。 エンジニアとしてキャリアをスタートしたが、転職で広島、東京で働いた経験を経て、2021年に加賀市の地域おこし協力隊としてUターン。 「高校魅力化プロジェクト」のメンバーとして、高校生の探究支援と居場所づくりに携わる。 2025年7月にお店をオープンさせた。

〈店舗紹介〉

COSMO USED CLOTHING AND BOOKS(石川県加賀市山中温泉富士見町オ33)

Instagram @ cosmo_used

メイン通りから離れた場所が秘める可能性

■山中温泉で開業することへの不安

山中温泉でお店を始めることに、最初は不安もありました。山中温泉には高級旅館が多く、上質で落ち着いた観光地というイメージがあります。観光で来る方も、少しハイエンドなものを求めている人が多いのかなと思っていました。

一方で、COSMOはもっとカジュアルで、少しごちゃっとしていて、古着や古本をきっかけに誰かがふらっと立ち寄れるような場所にしたい。だから最初は、山中温泉の雰囲気とCOSMOが合うのかどうか、不安に思っていました。

でも実際にお店を始めてみると、無理にお店の雰囲気を街に合わせなくてもいいのかもしれないと思うようになりました。山中温泉の中に、COSMOのような少し違う温度の場所があることにも意味があるのではないかと感じています。

■メイン通りから離れているからこそ、「裏山中」として栄えたら面白い

COSMOの場所は、山中温泉のメイン通り「ゆげ街道」から少し離れたところにあるため、見つけてもらえるのか不安もありました。でも、実際にお店を始めてみると、メイン通りから離れているからこその良さもあると感じるようになりました。

離れているからこそ、街の雰囲気に合わせすぎずにいられる。観光地らしい分かりやすさや、温泉街らしい上品さに寄せすぎなくても、COSMOはCOSMOとして存在できます。もちろん、立地としての難しさはありますが、本当に気になってくれた人は、少し離れていても探して来てくれる。地元の人がふらっと立ち寄ってくれることもあります。メイン通りのにぎわいとは少し違う場所にあるからこそ、COSMOらしい空気をつくれているのだと思います。

そして、COSMOの周辺にはまた違った可能性があると思っています。山中温泉の中心には、旅館や観光客が歩くメイン通り「ゆげ街道」があり、それは山中温泉の大切な魅力です。一方で、そこから離れた場所に、もう少し自由で個性的なお店や場所が点在していくのも面白いと思います。たとえば東京でいう「裏原宿」のように、メインの通りとは少し違うカルチャーが生まれる場所があるように、山中温泉にも「裏山中」のようなエリアができたら面白いなと。観光地として分かりやすく整えられた場所だけではなく、少し入り込んだ先に、思いがけないお店や人との出会いがある。そういう余白のあるまちの方が、自分としては魅力を感じます。

COSMOがそのきっかけのひとつになれるかは分かりませんが、メイン通りとは違う温度の場所が少しずつ増えていったら、山中温泉はもっと面白くなるのではないかと思います。

僕が欲しかった秘密基地「COSMO」。みんなの居場所へ。

■COSMOと、自分たちの遊び場をつくっていく

COSMOという店名は、もともとWebメディアの名前でした。東京にいた頃、東京の人たちは遊ぶのが上手いなと感じていました。好きな服を着たり、大人も夜通し遊んだり、周りの目を気にせず、自分が面白いと思うことを楽しんでいる人が多い。「こういう格好をしてもいいんだ」とか、「大人でもこんなふうに遊んでいいんだ」と思わせてくれる人たちがいました。

一方で、地方では周りの目や世間体を気にしてしまう場面があります。突拍子もないことをやると、浮いて見えたり、変わった人だと思われてしまう。でも本当は、地方でももっと面白く遊べるはずだと思っていました。

遊ぶ場所がないなら、自分たちでつくればいい。

そんなDIYのような気持ちから、友人にモデルをお願いして、何気ない道をランウェイのように見立てて写真を撮り、Instagramで発信したのがwebメディアCOSMOのはじまり。特別な場所に行かなくても、見方を変えれば、いつもの風景も少し面白くなる。そういう感覚を形にしたかったんだと思います。

今のCOSMOにも、その感覚は残っています。古着と古本のお店ですが、ただ商品を並べるだけではなく、自分たちの遊び場を自分たちでつくっていく場所でもありたいと思っています。

■色んな引っ掛かりを散りばめることで、混ざり合い、反応が生まれる

COSMOの商品セレクトは、自分の目線で「これは何か引っかかるな」と思ったものを置いています。古着も、古着好きの人はもちろん、詳しくない人でも「このデザイン可愛いな」と思えるものや、気軽に手に取れるものも置いています。古本も同じで、ジャンルを絞りすぎず、自分が面白いと思ったものや、誰かの入口になりそうなものを選んでいます。文学、漫画、雑誌、写真集、サブカルチャーなど、店内のあちこちに「引っかかり」がある状態にしています。

服を見に来た人が本に引っかかったり、本を見に来た人がレコードに引っかかったりする。最初に来た目的とは違うものに出会う。そういう偶然の出会いから何かが生まれる瞬間を見るのが、自分としては面白いです。

COSMOは、完成された世界観を提示するより、いろんなものや人が少しずつ混ざり合う場所にしたいと思っています。服、本、音楽、人の会話や記憶が偶然つながり、そこから新しい気づきや会話、小さな出来事が生まれていく。

自分の中では、COSMOはビオトープのような場所に近い感覚があります。いろんなものが混ざっているからこそ、思いがけない反応が起こる。そういう生態系のようなものを、お店の中につくっていけたらいいなと思っています。

■COSMOは僕が欲しかった秘密基地

COSMOは、誰かのための居場所である前に、僕自身が欲しかった場所でもあります。

小さい頃から、本やゲーム、好きなものに囲まれている空間が好きでした。押し入れの中にこもったり、狭い場所に自分の好きなものを集めたりする感覚が、すごく落ち着くんです。きれいに整いすぎた場所よりも、いろんなものが詰まっていて、どこを見ても何か気になるものがあるような空間の方が居心地が良い。

COSMOにも、そういう感覚があります。古着があって、本があって、レコードや雑誌があって、誰かが持ってきたものや、誰かとの会話の痕跡が少しずつ増えていく。自分の好きなものや、誰かの好きなものが重なっていくことで、少しずつ場所の空気ができていく。

僕にとってCOSMOは、お店であると同時に、自分がずっと欲しかった秘密基地のような場所でもあります。

様々な経験を得て辿り着いた、COSMOらしい居場所づくり

■友達の家みたいに過ごせるように

COSMOでは、何かを買うことだけを目的にしなくてもいいと思っています。本を読んだり、コーヒーを飲んだり、話したり、店内を眺めたりするだけでもいい。お店というより、友達の家に遊びに来た時のように、それぞれが好きな過ごし方をしてくれたらいい。買い物をしてもしなくても、その人なりの過ごし方があっていいと思っています。そういう時間も、COSMOらしいなと思っています。

僕自身が欲しかった場所として始めたCOSMOが、少しずつ誰かにとっても落ち着ける場所になっていく。そういう変化が起きていることが、今はすごく嬉しいです。

■自分を薄めなくてもいられる場所に

みんなに分かりやすく開かれた場所も大事ですが、少し偏っていたり、好きなものが強かったり、どこか少数派だったりする人たちが、自分を薄めなくてもいられる場所も必要だと思います。COSMOが、そういう人たちにとって、自分の好きなものをそのまま持ち込める場所になったら嬉しいです。そこから会話が生まれたり、人と人がつながったり、新しい何かが始まったりする。そういう反応が自然に起きる場所にしていきたいと思っています。

■まちの中の余白、そして誰かの居場所に

加賀市にはもともと、居場所のような空気を持ったお店や場所がまだ残っていると感じています。昔からある喫茶店や飲食店に入ると、隣の席の人が自然に話しかけてくれたり、店主の方がゆるく受け入れてくれたりすることがあります。

一方で、昔の駄菓子屋のように、子どもや若い人がふらっと立ち寄れる場所は少しずつ減っているとも感じます。学校でも家でも職場でもない場所。誰かに用意された居場所というより、まちの中に自然にある余白のような場所。

COSMOも、そういう地域に残っている居場所の空気を受け継ぎながら、古着や古本、音楽や映画などの話を通して、また少し違う形の居場所になっていけたらいいなと思っています。最初から何か大きな目的があるわけではなくても、そこにいるうちに少し気持ちが落ち着いたり、誰かの言葉に引っかかったり、自分の好きなものを少しだけ外に出せたりする。そういう時間が、誰かにとっての居場所になっていくのだと思います。

■自分をそのまま持ち込んで、新しい何かが生まれる場所に

僕自身、教育の仕事を通して居場所づくりについて考える中で、自分が本当にやりたかったことが少しずつ見えてきました。

それは、誰にとっても分かりやすい場所をつくるより、少し偏っていたり、好きなものが強かったり、どこか少数派だったりする人たちが、無理に自分を薄めずにいられる場所をつくることだったのだと思います。

COSMOが、そういう人たちにとって、自分の好きなものや考えていることをそのまま持ち込める場所になったら嬉しいです。

古着、古本、音楽、映画、人の会話や記憶。いろんなものが混ざり合う中で、思いがけない気づきや会話、新しい何かが生まれていく。

COSMOはこれからも、そんな生態系のような場所として、少しずつ変化し続けていけたらいいなと思っています。

ーーー

【編集後記】

重吉さん自身が心地いいと思える空間を、少しずつ丁寧に育てていった結果、その場所が、いつの間にか誰かにとっても居場所になっていったCOSMO。

最初から誰かのための居場所をつくろうとしなくても、自分自身が心から面白いと思えることや、心地いいと思えるものを大切にしながら営みを続けていく。その先に、誰かとの思いがけないつながりや、新しい居場所が生まれていくのかもしれません。

このプロジェクトの地域

石川県

加賀市

人口 5.75万人

山中温泉 移住起業ストーリーが紹介する加賀市ってこんなところ!

山中温泉は、温泉、自然、伝統工芸が魅力のまち。 「ふらっと温泉暮らし」 「豊かな自然に囲まれた暮らし」 「日本の伝統工芸と隣り合わせの暮らし」 そんな暮らしが叶います。

そして、何よりも「本物志向の人」が魅力のまち。 各々が信念を持ち、自分の「好き」や「やりたい」を形にしながら日々を営んでいます。

また山中温泉は1300年もの歴史を持つ温泉観光地。 今でも年間約33万人もの観光客が訪れます。

そんな山中温泉はアクセスも良好。

・金沢・福井まで車で約1時間 ・小松空港まで約30分

最寄りの加賀温泉駅まで車を約20分走らせれば ・東京駅まで新幹線で約3時間 ・京都・大阪駅まで新幹線で約2時間

と関東からも関西からもアクセスしやすい立地です。

このプロジェクトの作成者

プロフィール画像

私たち、山中温泉地域デザイン研究所は、石川県加賀市山中温泉に特化した「まちづくり団体」です。現役の地域おこし協力隊が対応いたします。

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