耕作放棄地の増加に加えて、椎葉村ならではの課題もあります。それは中心部にある「八菜館（やさいかん）」という農産物直売所が閉店してしまうことです。ここでは野菜などの農産物や種苗、お弁当などが販売されていました。その場が無くなることで、出荷者の販売先が無くなりさらなる離農につながった結果、耕作放棄地が増えるという悪循環に陥る可能性があります。

　この悪循環を防ぐために、「農の守り人」というミッションを募集するのですが、業務の開始方法として二通り考えています。

　一つ目は、八菜館跡施設で販売員として働き、農家の方とコミュニケーションを取りながらどんな野菜を栽培したら良いかを考えることから始めることです。普通の移住者の立場だと、農家の方と作物の話まですることは難しいと思いますが、販売員として働くことで意見を聞いたり言ったりすることがしやすくなると考えています。農家の方とのコミュニケーションの中から、耕作放棄地を減らしたり、営農意欲を高めたりする方法を考えていただければと思います。

　二つ目は、「中山間地域等直接支払制度」における集落協定の広域化を担っていただくパターンです。この場合は役場に席を置いていただき、集落協定という農地管理における共同体の約束事のようなものを広域化、つまり複数の集落協定間で合併したり協議会を作ったりするサポートを、役場の担当職員と共に行っていただきたいと思います。この説明だと役場の人員補填に感じるかもしれませんが、決してそうではありません。農業に携わる方々とスムーズにコミュニケーションを始めるために有効な手段だと考えました。

　いずれの入口かを、応募者様に選んでいただきたく思います。どちらにしても最終的に達成したい状態は、耕作放棄地を可能な限り発生させないことであり、そのための方法を動きながら考えていただければと思っています。

　椎葉村の農業は「小農」と呼ばれるものです。これは利益を得る経済的な農業ではなく、暮らしの一部として行っている農業のことを指します。自分の持っている畑で自分が食べる分プラスアルファを耕作するイメージです。

　「小農」は景観を形成することはもちろん、耕作する方にとっての生きがいにもなっています。現状耕作者は高齢の方が多いため、出荷先が無くなることによる営農意欲の減退で離農した場合、福祉の課題にもつながる可能性があります。

　つまり「小農」を守ることは、住民の生きがいを守ったり、福祉予算を削減したりすることにもなります。もちろん冒頭で述べたように、耕作放棄地を減らして山の豊かさや海の豊かさを守ることもできます。

　増え続ける耕作放棄地という課題を、「小農」という観点から解決してみたい人をお待ちしております。

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