
Meets中山道(Vol.5) 開催レポート
公開日:2025/10/03 02:47
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2025/10/06「興味ある」が押されました!
2025/10/05愛荘町では、令和6年度より関係人口創出事業「Meets中山道」を立ち上げ、町内外の多様な人材がつながり、自己表現・自己実現の機会を得られるプラットフォームづくりを推進してきました。令和7年度も引き続きこの事業を実施し、「チャレンジする人が集まるまち」「起業家が選ぶまち」の実現を目指しています。
令和7年7月29日に、今年度1回目のMeets中山道(Vol.5)が開催し、愛荘町内外で活動する4名の登壇者による熱のこもった話題提供と参加者の交流会を行いました。 登壇者は、愛荘町役場から転職し現在株式会社SALMON GARAGEで「愛荘こどもの大学」事業を担当する寺田奈緒さん、吉本興業所属のファミリーレストランとして滋賀県住みます芸人を務めるしもばやしさん、大阪出身のIターン農業者として「継ノ農園」を代表する村上大喜さん、そして「しがとせかい株式会社」代表として図書館づくりプロジェクトを推進する中野龍馬さんの4名でした。会場には約40名の参加者が集まり、活発な交流が行われました。
トークダイジェスト①
◆寺田奈緒さん:移住者だからこそ伝えられる地域の魅力
最初に登壇したのは4月に愛荘町役場から人生初のベンチャー企業「株式会社SALMON GARAGE」へ転職した寺田奈緒さんです。京都からの移住経験を持ち役場では5年間移住担当として勤務し移住者の視点で地域の魅力発信に力を注いできました。 寺田さんは、滋賀県には3つの織物があることを紹介しました。愛荘の麻織物、長浜ちりめん、そして高島ちぢみです。大学時代に染織を学んでいた寺田さんですが、当時は全く気づかなかった魅力を改めて発見したといいます。「絹、麻、綿が全て揃っている滋賀県って、本当にすごいと思う」と滋賀県の繊維産業への誇りを熱く語りました。 現在取り組んでいる「愛荘こどもの大学」は、愛荘町教育委員会からの委託事業として、町内の小学生向けに地域の事業者やプロフェッショナルを講師に迎え子どもたちが学校の外で学ぶ機会を創出する取り組みです。月4講座程度開催しており、昨年度は41講座を実施しました。「昆虫標本づくりができる大人って案外いないと思いませんか?そういう人を発掘したい」と会場に向けて協力を求める場面もありました。 今後は地域に「憧れる大人」を増やし人と人とのつながりを愛荘から滋賀全国へ広げていきたいと展望を語ります。また、外国ルーツの子ども向け日本語教室にも参加しており、「言葉以外のコミュニケーション」の重要性を実感していると語りました。イラストや音楽、写真など五感を使った多様な表現方法を通じて、自分のバイタリティと地域をつなぎたいという強い想いが印象的でした。
◆しもばやしさん:芸人として気づいた"気づき"と"自責"の大切さ
芸歴27年、49歳のしもばやしさんは、ファミリーレストランとして滋賀県住みます芸人の活動を行い、独特の視点から地域活性化に取り組んでいます。「芸人という仕事は最高の仕事だと思います。ただし、売れてたらですけど」という率直な言葉から始まったトークは、会場を一気に引き込みました。 40歳を過ぎ「なんとなく」芸人を続けてきたと気づいたしもばやしさんは売れている芸人との違いを「権利」の有無と分析しました。その権利とは、常に学び、成長し続け、目標に向かって正しい努力をすることだと説明しました。「この権利を得てない人間は、100%どうにもならない。これは芸人の世界だけでなく、どの世界でも同じです」と力強く語りました。 2011年から滋賀県住みます芸人として活動する中で発見したのは、大阪での活動との「距離感」の違いです。大阪では演者とお客さんという関係でしたが、滋賀県では共に作り上げる仲間のような関係性を築けるようになったといいます。 2023年に立ち上げた「滋賀を元気にするプロジェクト」では、滋賀県の雑談力が全国47位中45位という課題を発見し、コミュニケーション力向上の研修を提供しています。研修の核となるのは「気づき」と「自責思考」の2つの概念です。気づきについては「なんで?という疑問を頭に持ちながら生きていくことが成長につながる」と説明し、自責思考については「他責ではなく、自分の責任として考える思考法が重要」だと強調しました。 「自分が輝かないと他人に価値提供できない」との信念を持ち中小企業診断士資格取得を目指して勉強中。さらに毎朝6時にInstagramで自身の思考を発信し続けています。この2年間の継続について「人からの評価を得ようとしてやっているわけではなく、自分の成長のためにやっているから続けられる」と語り、自らを律し続ける姿勢が印象的でした。


トークダイジェスト②
◆村上大喜さん:五感を震わせる野菜づくり
大阪出身で滋賀県立農業大学校に進学し、8年前にIターンで就農した村上大喜さんは、「継ノ農園」を経営する若き農業者です。農業を志したきっかけは高校時代に遡り、一次産業として無限の可能性を感じたことから始まりました。6次産業化への展開が可能で、食べ物という素材を持っていればどんな事業ともコラボできると考えたのです。 愛荘町で出会った後継者のいない老夫婦から「やるか」と声をかけられ、当初は田んぼ1つとハウス1つを借りてスタートしました。師匠からは「知識、場所、機械は貸すが、給料は払らない、自分の分は自分で稼いでいけ」と言われ、自ら営業に回ってお客さんを獲得していく日々でした。「継ノ農園」という屋号には、師匠の約40年の積み上げた歴史と栽培技術を継承し、次の世代として発展させ、さらに次の世代へ継承していくという思いが込められています。 村上さんが掲げる理念は「五感の感動を追求する農業」です。「皆さん、5日前の晩ご飯覚えてますか?」という問いかけから始まり、記憶に残る特別な食事体験を提供することを目指していると説明しました。野菜の味・見た目・香り・情報など五感すべてを震わせる野菜づくりに取り組んでおり、主に契約レストランに出荷しています。シェフに農園まで来てもらって栽培方法や思いを伝え、それをお客さんに語ってもらうことで、食事を記憶に残るものにしようと取り組んでいます。 独自の栽培方法として、木のチップを敷き詰めた微生物豊富な土づくりを30〜40年続けており、発酵糖蜜やアミノ酸を使用して甘みとうまみを向上させています。「微生物を飼育しているイメージで、住みよい環境を作ってやることで病気を抑え、持続的な農業ができるよう工夫している」と詳しく説明しました。 現在は飲食店やスーパーと契約しながら、観光や教育とも連携を図っています。ひまわり畑の中でその場で収穫した野菜をフルコースで提供するイベントも実施するなど、農業の枠を超えた取り組みを展開しています。28歳の村上さんは「30歳を節目ににもう一つ新しい挑戦をしたい」と次のビジョンを模索しており、「体制を整えて、さらなるワクワクする事業を探求したい。そのワクワクは自分1人では発掘できず、いろんな人との出会いとコラボによって生まれる」と今後への意欲を語りました。


トークダイジェスト③~交流タイム
◆中野龍馬さん:"図書館をつくりたい"から始まる滋賀の未来構想
最後に登壇した中野龍馬さんは、紙芝居を使った自己紹介で会場を沸かせました。学生時代は「五教科合計で100点も取れない」ほど成績が悪く、社会人になっても「使い物にならない」状態でしたが、20歳でホームページ制作会社を起業し、失敗と成長を繰り返してきました。 当初は失敗続きで「毎日もやしを食べていた」という苦労を経て、チラシ制作会社として再起を果たしました。その後、2014年に空き家を借りてコワーキングスペースを開始しましたが、週3日13時から18時のみの営業で「誰も来ない」状況でした。そこで地域密着のWeb制作や情報発信サイトを立ち上げて認知度を高め、世界各国の成功事例を1年かけて研究した結果、2017年に銀行から借り入れをして本格的なコワーキングスペース「今プラス」を開設しました。月4人の利用から月800人利用へと大幅に拡大し、地域に必要とされるスペースとなりました。 コロナ禍では一時的に事業を停止しましたが、その後の補助金需要により売上がV字回復しました。しかし、この経験を通じて会社の存在意義について根本的に見直し、2022年に滋賀を「世界で住みたい街ナンバーワンにする」という目標を掲げ、「しがとせかい株式会社」として新たなスタートを切りました。 現在は村田製作所、滋賀銀行、平和堂と連携して「一般社団法人co.shiga」を設立し、地域課題をビジネスで解決する取り組みを行っています。昨年は6回のプレゼン大会を開催し、多くの人が地域の困りごとを相談してくれるようになりました。 そして最新のプロジェクトが「まちづくり図書館」です。本好きが高じて思いついたこの構想は、町づくりの本がたくさん置いてある図書館で、本を借りる代わりに地域の困りごとを書いてもらう仕組みです。「守山を皮切りに、愛荘町、長浜、草津、大津と各地に展開すれば、滋賀県全体の困りごとが集まり、それを企業や大学、市民が解決したいと思うようになる」と壮大な構想を語りました。図書館を起点に地域の声を可視化し、行動につなげていく仕組みづくりを目指しており、現在1000人への認知を目標として活動中です。
ーー交流タイムの様子ーー
イベント後半の交流タイムでは、参加者同士が活発に情報交換を行い、登壇者それぞれの活動への関心の高さが伺えました。各登壇者の活動が教育、農業、情報発信、コミュニティづくりという異なる分野でありながら、相互に関連する部分も多く、今後の連携可能性についても積極的に話し合われました。 「登壇者さんそれぞれとても熱い思いを持たれていて、自分も何か力になれたらいいなと思いました。」「地域に貢献したい、地域が好きと言う気持ちがよく伝わりました。また、自分だけでは繋がれないような業種の方ともお話ができたのが楽しかったです。」といった前向きな感想が多く聞かれ、参加者にとって有意義な交流の場となりました。


このプロジェクトの地域

愛荘町
人口 2.14万人

愛荘町役場が紹介する愛荘町ってこんなところ!
愛荘町役場が紹介する愛荘町ってこんなところ! 平成18年に2つの町が合併してできた現在の愛荘町は、今年で19年目を迎えます。琵琶湖に流れる川の上流・湖東地域に位置しており、鈴鹿山系からの豊かな清水と自然に恵まれ、古くから水との関わりが深いまちとして発展してきました。
町の東側には、聖武天皇の勅願で行基が開山した湖東三山の一つである金剛輪寺があります。昔から四季折々の雰囲気を楽しめるスポットとして地元の方々をはじめ多くの人に愛され続けている場所です。また、近世には中山道66番目の宿場として愛知川宿が栄え、後の明治には郡役所や警察などの官公署が置かれ、近江鉄道が開通するなど、古くから地方の中心としても栄えてきました。
国の伝統的工芸品に指定されている「近江上布」を中心とした麻織物や、瓶のなかにてまりが入った不思議で美しい滋賀県の伝統的工芸品「愛知川びん細工手まり」など、愛荘町でしか見られない手仕事ならではの「ワザ」が光る工芸品を見られるのも特徴です。
















