チョウザメ養殖は利益が出るまで長期間かかる事業。魚肉になるまで３年、キャビアの収穫まで10年必要で、最初の１-２年は利益は全く出ないそうです。また、天候にも左右されやすく、雨が降ったときは１日つきっきりになることもあるそう。

チョウザメが死んでしまうと努力が水の泡になる。かかる時間と労力を考えると、とてもリスクが大きいお仕事ですが、その分やりがいもあるそうです。

「自分のやり方で、チョウザメの表情が明らかに違うのが分かるんです。昨日餌やりすぎたから今日は減らそう、とか毎日試行錯誤した結果が目に見えるのが面白いです。正解が見えない。そこに楽しさがありますね。」

また、自分の仕事が村に大きな影響を与えることもやりがいの１つ。村に20代の男性は10数名しかおらず、1人1人の影響力が非常に大きいんだとか。

現在小早川さんは、チョウザメ事業を通してメディアに出演され、観光客の誘致や養殖に興味のある人を増やしています。

「日々新しいアイデア試して、自分の事業を伸ばした先に村の発展に貢献できている実感があります。それがとても嬉しいし、また工夫していこうという原動力にもなります。」

現在チョウザメ養殖以外にも、学習塾の運営、農業と3つの事業を掛け持ちしている小早川さん。

チョウザメ事業で収益が上がるまでの稼ぎ口でもありますが、村の人たちの課題を解決することをとても大事にしています。

例えば学習塾は、子供たちが習い事に通う大変さを知ったことで立ち上げました。

「村の外の塾には片道１時間かかるんですよ。みんなすごく大変で。自分が塾を開けば、子供たちや親御さんの困りごとも解消できるなと思って始めました。」

また、誰かの課題を解決しようと思えるのは、村の風土が大きいそうです。

「豊根村は何でも自分たちで解決しようとする人の集まりです。あそこのガードレール壊れてた、じゃあ直そうか、みたいな。みんなが村を自分ごとに捉えているから、人任せにしないんです。」

貢献心あふれる小早川さんですが、「貢献とは人のためだけど、実は自分のためでもあるんです。」と言います。今の仕事が次に繋がって、その連鎖が自分のキャリアを紡いでいく感覚があるそうです。

貢献とは他者のためではない。むしろ”自分のためが誰かのためになる”、そう感じるお話でした。

企業に勤めていると、自分の仕事が何になっているか分からない虚しさがありますが、自分を含めた”誰のためか”が分かると、やりがいを持って、イキイキと働けるのかもしれません。

村の課題解決のために自ら仕事を作り、真摯に向き合い続ける小早川さんとの出会いから、しなやかに発想するヒントを得られるはずです。

本企画は「あいちの山里関係人口創出事業」による募集となります