
山間部へ行くほど生活の知恵は深まる?万博で発表しました!
公開日:2025/07/01 07:56
最新情報
「興味ある」が押されました!
2025/07/09「興味ある」が押されました!
2025/07/08令和7年6月8日、大阪・関西万博ポップアップステージ西「関西 食の「わ」プロジェクト~祭 MATSURI~」ステージで発表をしてきました!会場で滋賀県多賀町の紹介をして、郷土料理「ぼんがらもち」3分間クッキンパフォーマンス!ハプニング続出でしたが、何とか15分以内に町の魅力を凝縮して紹介できました!!
近畿農政局が、食や食文化の振興と次世代への継承、これを生み出す農林水産業や食品産業の振興を図ることを目的に立ち上げたプロジェクト、「関西食の「わ」」に、昨年、YOBISHIプロジェクトは認定いただきました。
通りかかった見知らぬ方に、その葉っぱ、懐かしいもん持って来てるやんかぁ!と。どちらからお越しか伺うと、三重県からと。 そうですよね!と、そこから話題が広がって懐かしい食の話に花が咲く・・・この取り組みをしていて良かったと思う瞬間に万博会場でも恵まれました。
ステージ発表ネタを紹介!私達の活動する町ってどんなところ?
【食文化の多様性は、立地にあり?!】 滋賀県の東側に位置し、岐阜県と三重県の県境に隣接するまちです。平野部が20%で80%が山間部です。 関西の文化圏ですが、鈴鹿山脈を越えると、東海地方です。山を越えてすぐの集落、岐阜県大垣市や、三重県いなべ市などと昔から交流があったようです。農耕のための、牛の貸し借りも、山を越えて盛んにあったと聞きました。 古くから多賀大社参拝の人でにぎわうまちです。戦後まもなくまでは、春祭(古例大祭)には、鈴鹿の山を越えて早朝より晴れ着姿で山越えをしてくる岐阜県の人、三重県の人がたくさん歩いて多賀大社に来たと聞きます。現在でも、年間、約160万人の参拝者が訪れる滋賀県を代表する神社です。 人口が約7300人のまちで、小学校が2つ、中学校が1つあります。高校・大学はありません。 多賀町には、2本の一級河川、芹川と犬上川があります。川沿いを中心に、約44の集落がありますが、芹川上流の集落は、住民票はあるのですが、誰もすんでいない集落が約14集落もあります。
【YOBISHIプロジェクトの「よびし」とは??】 「よびし」とは親戚やご近所さんを招いて、おもてなしをする「よりあい・よびしゅう」が訛った多賀町周辺の方言です。 「多賀の食べるをつなぐ」をコンセプトに、多賀町の食文化を、「知る、伝える、つなぐ」活動をしています。3年前には文化庁100年フードに認定されました。
多賀町内で10年ほど前から、集落ごとに、民俗聴き取り調査をしてきました。
そのなかで、同じものなのに、呼びかたや作り方、素材が違う「おやつ」があることを知りました。集落ごと、また、家ごとに伝えられている食文化の多様性に驚きました。
特に今、田植えが終わったこの時期に作られる「ぼんがらもち」の作り方を今日は紹介します。
【町内だけで呼び方が10通りもある?!】 「サルトリイバラ」という、トゲのある、つる性の植物があります。 ツルっとした葉っぱは、爽やかな香りがして、抗菌作用もあるそうです。 米粉や小麦粉を水で溶いた生地に、餡子を包み、この葉で挟んで、5分ほど蒸した素朴なお菓子です。 集落で聞いた話では、子どもの仕事は、「ぼんがら(サルトリイバラ)」の葉を山へ採りに行くこと。甘いおやつがたくさん無かった時代だったので、早く食べたくて楽しみで仕方なかったそうです。
町内では、この葉っぱのことを「ぼんがら」と呼んでいます。西日本では端午の節句に柏餅を包む葉っぱで、様々な呼び方があるようです。 「ぼんがら」は、多賀町独特の呼び方で、ほとんどの集落で「ぼんがら」と呼ばれています。ごく少数派の「がらたて」はお隣の彦根市や長浜市での呼び方のようです。また、山を越えてすぐの三重県での呼び方、「がんたち」や「いばら」が山間部の集落に伝わっています。 町内だけでも、呼び方が10通りもあるのに驚きました。


3分クッキング パフォーマンスにチャレンジ!
3分クッキングのあの音楽が流れてきました!近畿農政局スタッフの粋な選曲!ありがとうございます。打ち合わせの時に冗談で、3分クッキングの曲に合わせて作れたら楽しいですよね?とは話していましたが・・・当日サプライズに驚きました(笑)。
【餡を丸めていきます。】 餡は、小豆とそら豆の2種類あります。「そら豆って珍しいですよね!!」 昔、あずきは高級品で、普段は田んぼの「ほた(あぜ)」で作ったそら豆で餡を作っていたと聞きます。 今では、そら豆で作る餡の方が珍しく、あっさりとした美味しさには驚きます。 そら豆は、乾燥そら豆を使います。作り方は、小豆と同じように茹でこぼします。ここからは、ひと手間かかりますが、皮を丁寧に剥きます。砂糖を加えて、こし餡にして煮詰めて仕上げます。
【3タイプの生地】 YOBISHIプロジェクトでは、地元の方から習った郷土料理を「よびし通信」に綴って多賀町内に配っています。 「ぼんがらもち」のレシピも、若い世代に伝えたくて、4コマ漫画にして「よびし通信」に書いて発行しました。
そしたら、ありがたいことに、それを見て作ってくださったと連絡がありました。 「どうも昔食べた味とちゃうでぇ。昔は、ほんな、パン作るみたいな強力粉なんぞ無かったし、薄力粉でも作れるはずや。」 「そんな分厚い小麦粉を食べるんやのうて、もっと薄皮にするんやで」 「今から作るで おいない」と連絡をいただきました。 このとき、初めて同じ町内でも作り方が違うという事に気がつきました。
「ぼんがら餅」の生地は、どうやら3種類あることがわかってきました。 勝手にタイプわけしてみることにしました。 1つ目が、山の集落で習った、米粉を挽いて作る「 団子タイプ」。 2つ目が、パンを作る強力粉のグルテンを活かしたスライムのように粘りのある生地、「 麩まんじゅうタイプ」。 3つ目が、「違うで!」と連絡をくださった方の、天ぷらの衣より粘り気のないサラサラの薄力粉、「 きんつばタイプ」で餡子を楽しむ食べ物。
【団子タイプ】 「団子タイプ」の生地の作り方は、粉(こう)にな、お湯を加えて、ほんで、しゃもじでカイカイする(掻く)。耳たぶのかたさになるまで調整するんよ。ぬれ布巾をかけて30分寝かせるんやけど、昔は一晩寝かせてたんや。生地を広げて餡を包んで、葉の上に置いて、上から葉をかぶせてな。
【麩まんじゅうタイプ】 「麩まんじゅうタイプ」の生地の作り方はな、強力粉に水を入れてよ~混ぜるんやで、 力いっぱいこねてもかまへん。一晩寝かせて粘りけ 出すんやで。 手のひらを水で濡らしといてな。とろ~んと生地をのせるんや。丸めた あんこをのせて… ほしてな、指先であんこをつつむんよ。 ぼんがらの葉っぱの上に置くやろほして、葉っぱで挟むんやで。
【きんつばタイプ】 「きんつばタイプ」の生地の作り方は、薄力粉に水を加えて、お箸で天ぷら粉を溶くようにさっさっと軽く切るように混ぜるんやで、ダマも気にしやんといてや。 ふるいにかけたらええやんな。 昔はそんなにな、丁寧にしてやらへんで…。衣をくぐらせるイメージで、餡に生地を流し、ぼんがらの葉に挟んでな。
ほしたら、次、蒸していくで!


食べ物と、建物の素材は、実は深い関係だった?!
ぼんがらの生地と、屋根の素材、集落の場所は無関係ではなかったのかも。
昔、屋根のふき替えに麦ワラを使っていたと平野部で聞きました。ワラぶき屋根のワラとは「稲ワラ」ではなく「麦ワラ」で、屋根のふき替えのために栽培していたそうです。
山間部に行くとカヤぶき屋根で、山に各集落のカヤ場があり、収穫して家の屋根裏のツシというつころにストックしてふき替えに備えていました。村の中のとなり組で、今年はこの家の屋根をふき替えすると決めて、順にとなり組で協力して屋根のふき替えをしたそうです。 写真は多賀町栗栖という集落で、2021年秋に、「カヤぶき屋根の修繕ワークショップ」を開催した時のものです。
また、胡宮神社の境内にあるヨシぶき屋根の社務所にはカマドがあり、それを使ってぼんがら餅をセイロで蒸したり、ご飯を炊いたり、活用しながら文化財を守っています。
「ぼんがら」に小麦粉を使う背景には、小麦栽培があったのだと知りました。 小麦が栽培されていない山間部集落では、米粉を使った団子タイプの「ぼんがら団子」を作っている傾向に気付きました。 このように、まちで食文化の多様性を深掘りしてみたら、周辺地域の影響を受けつつも独自の食文化が伝わっていることに感動しました。 滋賀県多賀町には、ぼんがら餅をはじめ、たくさんの伝統料理があり、食文化と風景が共存しています。 ぜひ、多賀町に足を運んでくださいね!!


このプロジェクトの地域

多賀町
人口 0.64万人

龍見 茂登子が紹介する多賀町ってこんなところ!
『古事記』にも記録がある多賀大社は、「お伊勢参らば お多賀へまいれ お伊勢お多賀の 子でござる」と、古くより「お多賀さん」と呼ばれ親しまれています。年間約170万人の参拝客が多賀大社に訪れています。 8月3日、4日、5日は「万灯祭」がとりおこなわれます。 杉坂山(ご祭神イザナギノミコトとイザナミノミコト降臨の地)の三本杉、ご神木の元で火を熾す神事が行われます。そののち、麓の調宮(ととのみや)神社での神事を経て、御神火が多賀大社に運ばれます。多賀大社の神事ののち、夕方1万灯を超える提灯に明かりが灯される幻想的なお祭りです。
このプロジェクトの作成者
香川県東かがわ市生まれ 高校卒業後、県外の大学に進学 大学卒業後、東京で就職。 転職後、京都市内に住む。 結婚して、京都府木津川市に住む。 その後、天理市、奈良市に住み、 現在パートナーの実家がある滋賀県多賀町に住んで17年になります。 多賀町の自然の美しさに感動し、草花の種類の豊富さに驚き、越して来たころは植物図鑑片手に植物の名前を調べ歩きました。 2014年頃より、多賀町の民俗聞き取り調査に参加。 主に食文化について調査しています。 2019年、多賀町中央公民館オープン時に、地元の郷土料理を展示してふるまうイベントをみんなで開催しました。 2019年4月より、「多賀の食べるをつなぐ」をコンセプトにYOBISHIプロジェクトがはじまりました。 現在YOBISHIプロジェクトの代表をしています。 YOBISHIよびしとは、多賀町の方言で親戚やご近所さんを呼んで行事の時などにおもてなしをすること。 多賀町に伝わる郷土料理の聞き取り調査をして、レシピ化する活動をしています。聞き取った内容は、noteに綴り公開。また、動画撮影をしてYouTubeで少しずつ公開しています。 イベント情報はYOBISHIのInstagramアカウントで発信中。 年数回イベントに合わせて、町内全戸に「よびし通信」を発行。















