【前編】人をつなぐ"マチ"をつくる　連載：大津な想い人　山中真樹さん(旧大津公会堂 館長)

公会堂：人どうしをつなぐ場

――旧大津公会堂というのは、どういった場所なのでしょうか。 山中：交流イベントの開催や地域活動への貸し出し、地域の情報発信が主な役割です。ただ稼働率を上げるだけでなく、「どうやったら気軽に来てもらえるか」をいつも考えています。

――山中さんが大津に関わるようになったのは。 山中：三年半ほど前です。当時はマーケティングの仕事をしながら各地を行き来していました。そんな時、NPO法人BRAH=art.が公会堂の指定管理を受けることになり、営業企画の経験を評価して声を掛けてもらいました。実はその時に初めて公会堂の存在を知ったんです。

――前職の経験は今に生きていますか。 山中：はい。情報を分析し、企画を形にして企業と消費者を結びつけるのがマーケティングの面白さでした。その力は公共施設の運営にも役立っています。行政や機関の広告に関わった経験も、少なからず今につながっていると思います。

――公会堂といえば、まちづくり団体との連携も目立ちます。 山中：そうですね。Otsu Living LabとはBRAH=art.を通じて、まちづくり大津とは前任からの引き継ぎで出会いました。今ではマルシェや映画祭、福祉関連の交流会など、イベントの幅が広がり新しい利用者層も増えました。

――公会堂の魅力をどう感じていますか。 山中：幼いころから公会堂に親しんできた人が多く、今も市民活動に使ってくださっています。その積み重ねが新しい利用者との出会いにつながっている。住民の方が本当に大切に思ってくださっているからこそ、人と人とのつながりが生まれるのだと思います。

――日々の運営で大切にしていることは。 山中：「一度きりで終わらせない」ことですね。イベントは数百人が集まりますが、それだけではもったいない。大事なのはその後も来てもらえるかどうか。「特に用事はないけれど、ちょっと寄ってみました」と思える場所にしたいんです。

――たしかに、この部屋も居心地がいいですね。 山中：ここは「座」と呼んでいるスペースです。本や服を自由に交換できるコーナーを設けていて、ふらっと立ち寄りたくなるような仕掛けを工夫しています。

――最後に、これからの公会堂に期待することは。 山中：これまでの歴史を大切にしつつ、新しいつながりを紡ぎ続けたいですね。イベントで集まる瞬間の熱気だけでなく、日常の中に自然と存在する場所でありたい。その積み重ねが、このまちで愛される公会堂の未来をつくるのだと思います。

（後半につづく）