「お互い様」と言いあえる場所をつくりたい。岡部さんが米原で育む、人と農のかたち

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2026/09/24

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東京やインドでの暮らしを経て、滋賀県米原市へとたどり着いた岡部さん。 現在は農を軸に人と人とがつながる場を目指し、地域の方々と手を取り合いながら「おむすび農園」を始めました。

けれど、そこで彼女が目指しているのは単に野菜を育てる場所ではありません。

「お互い様と言い合えるコミュニティを作りたい」 「失敗を恐れず、まずはやってみようと思える場にしたい」

その想いの根っこには、これまでの人生で出会ってきた人々や訪れた土地、そしてそこで肌で感じてきた温かな記憶がありました。

導かれるようにたどり着いた、米原という土地

米原へ移住する前、岡部さんは東京で生活していました。さらにその前には、インドで働いていた時期もあります。

多様な文化が混ざり合うインドで強く印象に残ったのは、人と人との圧倒的な距離の近さでした。 子どもがいれば地域みんなで見守り、困っている人がいればごく自然に誰かが手を差し伸べる。

「少しおせっかいかもしれないけれど、人間として心がほっとするような体験がたくさんありました」

そんな温もりに触れていたからこそ、のちに暮らした東京では、人間関係の距離感や希薄さにどこか違和感を覚えるようになったと言います。

そんな中で迎えた、コロナ禍。 東京で暮らし続ける意味を問い直し始めた頃、知人から届いた「米原っていう場所があるよ」という一言が転機となりました。

新幹線を使えば東京へのアクセスも良く、家賃も手頃。 「3ヶ月ほど試しに滞在しても、東京の1ヶ月分の生活費とさほど変わらない」——そんなお試しで始めた米原での暮らしでしたが、実際に足を運んでみると、思いがけずこの土地の魅力に心をつかまれました。

ある日、散歩の途中でふと目に入ったアパート。 カーテンのない窓を見て「ここなら伊吹山が一望できるはず」と直感が働きました。すぐに問い合わせてみると、偶然にもそのタイミングで不動産契約を任されている営業担当者がオーナーさん宅に来ており、トントン拍子で入居が決定。

そして暮らし始めてから、ますます米原が好きになっていきます。

特に岡部さんの心を捉えたのが、伊吹山の存在です。 「この山がなかったら、米原に住んでいなかったかもしれません」

雪をまとった壮麗な姿や、夕焼けに染まりギラッと光を放つ一瞬。 仕事から米原へ戻ってくると、空気がガラリと変わるのを感じます。窓を開ければ、鳥のさえずりや虫の音が響く。都市部から訪れる人にとって、自然と隣り合わせのそんな日常は、まるで物語の一場面のようです。

しかし、岡部さんを魅了したのは自然環境だけではありませんでした。

「お客さん」じゃなくて、ともに歩む仲間がほしい

米原での地域とのつながりを深める直接のきっかけとなったのが、「まいばら農業塾」https://smout.jp/plans/28251への参加でした。

「私が参加した時の受講生の構成は、地域の方が3分の2、移住者などの外から来た人が3分の1ほど。地元の人々と顔馴染みになる絶好の機会となりました」 そこで面白さを感じたのは、同じ畑で同じ作物を育てていても、育てる人によって野菜の育ち方に驚くほど個性が出ること。豪快に育てる人もいれば、丁寧に手をかける人もいます。

農業塾の修了後も農を通じた交流を継続したいと考えた岡部さんは、地域の課題解決や価値創造を学ぶ「おうみ未来塾」へ。そしてこの夏、講座で出会った仲間とともに、米原・大野木地区の皆さんの協力を得て「おむすび農園」を立ち上げました。

最初から完璧な計画があったわけではない、と彼女は振り返ります。 「全部自分で決めてるようで、多分決めてない。流れというか。いろんな人に出会いながら道ができていく感覚なんです」

そんな岡部さんが活動の根っこに掲げているのが、「お互いさま」と言える関係性です。

求めているのは、イベントに来てくれる「お客さん」ではありません。 「お客さんって、ついお客さん扱いして、お客さん扱いされちゃって、仲間になりきれないじゃないですか」

だから目指すのは「お客さん」ではなく仲間。 困ったときには遠慮なく「助けて」と言える。頼られたら「いいよ」と笑って応えられる。 農繁期で人手を必要とする地元の人も、都会の喧騒に少し疲れて羽を伸ばしたいと感じた人も、フラットに支え合える。そして何かあったときには「いつでもおいで」と温かく迎え入れられる場所。

その根底には、食糧を自分たちの手で生み出せる安心感への想いもあります。

「食べるものを作れるって、すごく強いことだと思うんです。『これ食べなよ』って差し出せるものがあるのって、純粋に素敵ですよね」

岡部さんにとって農業とは、単に作物を栽培する作業ではありません。人と人、そして人と自然を結びつけ、困ったときに助け合える健全な関係性を育むための営みなのです。

「とりあえず、やってみよう」が言える場所へ

岡部さんがもう一つ大切にしているテーマが、「失敗してもいい」と思える環境づくりです。

かつて滞在したインドでは、たとえ結果が失敗に終わっても「挑戦した人が偉い」と挑戦したこと自体を称える空気がありました。だからこそ恐れずに新しい一歩を踏み出せる。一方で日本の社会では「間違えてはいけない」というプレッシャーが強く、挑戦すること自体をためらってしまう傾向があります。

「そうした不自由さのない世界を、作っていきたいんです」

その想いは、農の現場とも深く響き合います。 畑では、思考錯誤したプロセスがそのまま野菜の形となって現れます。失敗したからといって、誰かに責められるわけでもありません。だからこそまずは試してみる精神が活きてきます。

実際に「おむすび農園」がある大野木地区では、「やってみたい」と声をあげると、地域の先輩方が「やってみなよ」と温かく背中を押してくれることが多いそうです。

サツマイモの苗植えイベントの直前、長雨の影響で畑の準備が大幅に遅れていたことがありました。すると当日の朝、地元の方たちが自発的に集まり、雨を含んで重い土を汗だくになりながら動かして畝を作ってくれたのです。そして、一番楽しい「苗を植える作業」をイベント参加者が存分に体験できるように終始裏方として気を配ってくれました。

初心者が失敗しそうな場面でも過度に口を出さず、伸び伸びと作業を見守ってくれる寛容さ。 「ないと思ってた世界が、米原にはあるって思っちゃうんですよね」

仲間とスタートしたばかりの「おむすび農園」も、完成されたサービスを提供するのではなく、発展途上の状態からみんなで手探りで作り上げていきます。不完全だからこそ、関わる一人ひとりが仲間の一人として場を育んでいけるのです。

世代も、住んでいる地域も、バックグラウンドも異なる人々が集い、一緒に汗を流す。そんな場所から生まれる予期せぬ化学反応を、岡部さん自身が何よりも楽しんでいます。

最後に、これから移住を検討している人に向けて、岡部さんはこんなメッセージを寄せてくれました。

「いきなり移住を目指さなくても、まずは定期的に通うくらいでいいと思うんです。大野木に限らず、ここへ足を運ぶ『自分なりの理由』を見つけてもらえたら」

暮らしの拠点を変えるのは大きな決断です。だからこそ、最初はふらりと遊びに来るだけでいい。イベントを覗いてみたり、週末だけ農作業を手伝ってみたりする。そうして行き来を重ねるうちに、自分にしっくりくる土地がわかるはずです。

「もし日常で少し息苦しさを感じているなら、羽を休めにおいでよ」

そう言える場所をつくりたいと岡部さんは語ります。

米原の地で岡部さんが育て始めたのは、野菜だけではありません。 人が出会い、助け合い、試行錯誤しながら次の誰かへと温もりを繋いでいく。そんな有機的な関係性そのものを、じっくりと育み始めたのかもしれません。

 

<文:斉藤ミワ>

このプロジェクトの地域

滋賀県

米原市

人口 3.57万人

米原市移住コーディネータ―・紲ya-ツナギヤ-が紹介する米原市ってこんなところ!

関西・東海の主要都市へのアクセスの良さが特徴です。「1時間の移動が苦にならない」という人にとって、米原は最高に自由な拠点になります。 四季の移ろいをカメラで追いかける時間も、仕事終わりの一杯のラーメンも。休日に自分だけのとっておきのカフェやパン屋を見つける愉しみも、少し車を走らせれば琵琶湖や海がある環境も、すべてがこの暮らしのグラデーション。 何を選び、どう楽しむかはあなた次第。米原市は、あなたの「こう生きたい」にちょうどいい、自分流の暮らしが叶う場所です。

このプロジェクトの作成者

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米原市から委託を受けて移住コーディネーターとして、理想の暮らし実現、ご自身も地域も幸せな移住のための伴走をさせていただきます。2022年から米原市の地域おこし協力隊として移住し、約1年半かけて空き家をDIYで再生し 【旅と移住の真ん中、お試し暮らしの宿 紲ya-ツナギヤ-】 を開業しました。卒業後は、移住の目的であり理想の暮らしである、循環する暮らし、自給的暮らしを目指しつつ、米原市移住コーディネーターとして、移住相談・現地案内オーダメイドツアーを承ってます!米原に移住したい人はもちろん、移住したいけどどうしたらよいのかわからない方、まだ情報収集中の方、なかなか家や仕事が見つからないってかたも、何かとお手伝いできるかと思います。お気軽に声かけてください。

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