世界遺産の参道と、ニュータウンの朝。ふたつの道を走るバス運転士

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2026/09/30

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2026/09/29

和歌山県橋本市。南海高野線に乗れば、大阪・難波まで乗り換えなしで出られるまちです。市の北部には、ベッドタウンと呼ばれる新興住宅地が広がっています。

そこから山を登ると、景色はがらりと変わります。標高およそ800メートルの山上にあるのが、空海が開いた真言密教の聖地・高野山。2004年に世界遺産に登録され、いまも国内外から参拝者や観光客が訪れています。

ニュータウンの暮らしと、世界遺産の山上。性格のまったく違うこのふたつのエリアで、路線バスを走らせている会社があります。南海りんかんバス株式会社です。和歌山県外から来られた方も活躍しているとのことでお話を伺いました。

毎日の足と、参拝の足と

南海りんかんバスは、1993年に南海電気鉄道のバス部門から分かれて生まれました。橋本と高野山、ふたつの営業所をそのまま引き継いだ会社です。

橋本営業所が受け持つのは、林間田園都市駅を起点に、三石台や城山台といったニュータウン、橋本市民病院などを結ぶ路線。市から受託したコミュニティバスやスクールバスも走らせています。乗るのは、通勤や通学、通院の人たちです。

高野山営業所の路線は、ケーブルカーの着く高野山駅から、金剛峯寺や奥の院といった山内の主要な場所を結んでいます。京都と高野山を結ぶ高速バスも担当し、観光シーズンには臨時便が増えます。海外からの来訪者が多いため、車内放送は日本語・英語・フランス語の3か国語で流れるそうです。

従業員は43人、車両は40両。決して大きな会社ではありません。

「通勤・通学など日常路線と、世界遺産・高野山をめぐる観光路線。性格が異なる二つの営業所があることが、当社ならではの大きな強みだと思います」

採用を担当する方はそう話します。地域の日常を支える仕事と、遠くから来た人を迎える仕事。そのふたつが、ひとつの会社のなかに同居しています。

高野山の山内を走る路線バス
高野山の山内を走る路線バス
ニュータウンと駅を結ぶ橋本営業所のバス
ニュータウンと駅を結ぶ橋本営業所のバス

運転しながら、道案内もする

高野山営業所の運転士の一日は、乗務前の点検から始まります。高野山駅から奥の院までを往復して、およそ1時間。10分から1時間ほど休憩をとって、また走り出す。その繰り返しです。

山上の町は大きくありません。時速20〜30キロでゆっくり走る区間が多く、車内の案内をしながらの運行になります。

もうひとつの仕事が、道案内です。乗り場はどこか、この寺へはどう行けばいいか。海外から来た人に英語で尋ねられることも珍しくないといいます。うまく伝わらないときもある。それでも、喜んでもらえたときの手応えは大きいそうです。

「月並みな言葉ではあるんですけど、お客さまへの案内で喜んでもらったときなんかはすごく励みになるんですよね」

会社のホームページには、ある運転士の話が載っています。宿を決めずにやって来る観光客が多いので、バス停ごとに近くの宿坊をまとめた早見表を自分でつくった。質問にすぐ答えられたら格好いいから、と。しかもそれは自分に限った話ではなく、運転とガイドの両方でエキスパートになるという風土が社内に根付いているのだとか。高野山駅で到着した人に案内のチラシを配り、英語で道を伝える取り組みは、和歌山県の観光功労賞も受けました。

バスの運転手と聞いて思い浮かべる姿より、人と話す場面はずっと多い。高野山の路線は、そういう仕事です。

高野山駅から奥の院までは往復でおよそ1時間
高野山駅から奥の院までは往復でおよそ1時間
観光客への案内も運転士の大事な仕事
観光客への案内も運転士の大事な仕事

未経験から始めた人たちと、ふもとの暮らし

意外なのは、運転士のほとんどがバスの乗務未経験から入っていることです。経験者は全体の1〜2割ほどで、大型免許に触れたこともなかった人が大半だといいます。大型二種免許は入社前に教習所へ通って取り、その費用は会社が負担する仕組みです。路線バスから始めて、高速バスや貸切バス、運転士を育てる指導教官、運行を管理する立場へと進む道もあります。

「ダイヤの乱れが少ないので、あせりを感じることなく、落ち着いて走れる。そこは田舎ならではだと思います」

これは、ある運転士の言葉。交通量が比較的少なく、短い距離の路線が中心なのも、この地域の特徴です。

勤務は日中が中心で、職場は40代以上が多く、ほとんどが中途入社。車やバイク、狩猟と、趣味を楽しんでいる人がよく目につくそうです。年齢から想像するよりずっと活発で、冗談の飛び交う職場だと聞きました。60歳の定年後も、75歳まで乗務を続けられます。

橋本市には、日々の買い物ができる店や医療機関もそろっています。都市ほどの便利さはなくても、自然の近さと暮らしやすさを両立しやすいまちです。地方に移り住むとき、地域のしきたりになじめるかを心配する人は少なくありません。この点について、採用担当の方の見方ははっきりしていました。

「都会にお住まいの方が地方をイメージする時、独自のルールが強すぎて馴染めないとかよく聞くんですけども、橋本市は、そうした不安をあまり感じずに入ってこられる地域という気がします」

橋本は、高野山へ向かう人々が泊まる宿場町として栄えた土地でした。外から来る人を自然に受け入れる空気は、そこから育ってきたのかもしれません。

和歌山県では、実際に現地へ行き、数日間その仕事に触れてみる「しごと暮らし体験」という仕組みを用意しています。南海りんかんバスも、その受け入れ先のひとつです。運転こそできませんが、運転士のすぐ隣で、一日の流れを間近に見ることができます。

もし少しでも気になったら、まずは高野山のバスに乗ってみてください。山上の町のこと、ふもとの暮らしのこと、ここでの働き方のこと。お伝えできることはたくさんあります。

落ち着いて走れる、田舎のバス
落ち着いて走れる、田舎のバス
運転士の多くはバス未経験からのスタート
運転士の多くはバス未経験からのスタート

このプロジェクトの地域

和歌山県

橋本市

人口 5.71万人

わかやまキャリアチェンジ応援プロジェクトが紹介する橋本市ってこんなところ!

和歌山県は、本州最南端の県で一年を通じて温暖な気候と起伏に富んだ地形が豊かな自然を育んでいます。特に南部は冬でも暖かく、南国ムードにあふれています。 大阪中心部から電車や車で約1時間、関西国際空港からもリムジンバスで約40分という近さです。

公共施設、医療施設、教育施設などが充実しています。 快適で安全な生活環境を実現させるため、基幹道路網や生活道路の整備を進めています。 海水浴場や温泉などの観光資源が豊富にあり、釣りやマリンスポーツなどのレジャーが充実しています。

このプロジェクトの関連地域

和歌山県

高野町

人口 0.24万人

このプロジェクトの作成者

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東京都に住みながら、キャリアコンサルタントとして、和歌山の仕事の情報発信や、職業体験の企画をしています。

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