淡佐口さんは和歌山に戻った当初、前職でも携わっていた医療関係の営業の仕事に就き、そこで6年間働いていました。当時は24時間365日、電話対応などの業務に追われる日々で家族とゆっくり過ごせる時間もあまりなかったといいます。

飲食業に転身したのは2019年1月。精神的なストレスは減ったそうですが、自ら営むお店で家族を養うプレッシャーもあり「もっと大変になった」と淡佐口さんは話します。

それでも地元での生活を選び、自分のしたいことをする。そのモチベーションとなっているのはやはり家族や子どもの存在のようです。

「大人は仕事がなくて大変だよということは伝えたい。でも子どもが田んぼのなかで元気に走っているのを見たりすると、帰ってきて良かったなと思います。向こうでできないことができてると思うんで」。

大好きな地元を知ってもらうため、ゼロの状態からまずは飲食の業界に飛び込んだ淡佐口さん。料理にも、これから取り組んでいくあらゆるもののなかにも、たくさんの地元の魅力が織り込まれていくでしょう。

体験当日は、cafe & diningの業務をしつつ、お店の立地や環境、都会と田舎の違いなどをヒントにどうすればお店がもっと軌道に乗るか？ホテルの運営や地元体験を実現するという次のステップに進むためにはどうしたらいいか？などもあわせて考えてみましょう。実際に地方に足を運ぶことで、頭で考える以上の難しさを実感するとともに、地方にしかない良さを感じることもできるのではないでしょうか。

望んだこととはいえ、自分の好きなことや本当にしたいと思ったことにいざ手を付けてみると、予想外の困難があった。そういったことはなにも和歌山県の田舎に限ったことではないはずです。

淡佐口さんの仕事を見て実際にその一部を体験することで、思いがけずいまの仕事の良さを見出す人もいるかもしれませんし、地道さや困難さを前にしても行動に移したいと思う人もいるかもしれません。やりたいことはあるけれど実行に移すかどうか迷っているという人にとっては、自分の現状を知るための機会になるのではないでしょうか。