当初は、直売所を販売の中心としていた「Grosso」ですが、今では北九州や長崎、熊本まで出張し、イベントでの出店販売にも力を入れています。

「ハーブ苗をどんな風に販売しているのかを見てもらうには、春・秋の気候の良い時期の土日のイベントに参加してもらえるといいですね。売上面でもイベントは大事な販売チャネルになっていますから」

「ウチの苗は、決して見栄えが良いとは言えません。でも露地栽培で、根のしっかりした香りが高い苗を育てています。だから直接説明しながらお客様に理解してもらわないと売れないんです」と出口さん。

しかし苗は、買った後にどう大きく育てられるかの方が重要。経験値に左右されるので、机上の空論はなんの役にも立ちません。そのため、出口さんのアドバイスを求めて訪れるリピーターのお客様も多いそうです。

「Grosso」には、ハーブ苗の圃場「Kanatake Herb」が隣接しています。苗の生産過程を見学したり、実際に作業を体験することも可能ですから“香り高い”ハーブを育てるためのノウハウも勉強させてもらいましょう。

また、イベントでの出店がない時期は、お花屋さんなどで、ハーブを使った石鹸作りなど多彩なワークショップを開催しています。九州エリアのハーブの価値や知名度を上げていきたいと考える出口さんのコミュニティの広げ方も学ぶことができるはずです。

「元々は、父が30年前から趣味でハーブを栽培していたことが始まりなんです」

次第に直売所などに苗を卸すようになっていましたが、その頃はまだ関東で会社勤めをしていた出口さん。しかし、仕事で培ったマーケティング視点から、ハーブ販売において、九州はブルーオーシャンであることに気づきます。

「豊富な知識量を伴って、ハーブを栽培できる人が九州にはなかなかいない」

「だったら一緒に手伝おう」とUターン。ハーブに関する知識を更に深め、“アドバイス”を付加価値とする販売方法を確立しました。現在は、主にお父様が栽培を、出口さんは栽培のほか、販売や広報を担うことで販路を広げています。

「Kanatake Herbでは、世界中のいろいろなハーブを栽培しているので季節に関係なく常に手入れが必要です」と出口さん。ハーブは多毛作のため、真夏には室温が50度近くにもなるハウスの中で、苗を増やす挿し木を行うなど日々の作業はかなりハードです。「ラベンダーは、冬に根が成長するので管理に手は抜けません」

そうした経験も「Grosso」の付加価値を高めることにつながっています。

お客様が上手く育てられなかった場合には、鉢ごと持ってきてもらって、根っこをチェックしながら改善策を提示する徹底ぶり。上手く育つようになったら、少し難易度の高いハーブに挑戦してもらうなど、出口さんの接客にはお客様を喜ばせる工夫がいっぱいです。

これこそ「経験値に裏付けられた豊富な知識」の成せる技。教科書的な知識ではなく、実際に使える知識を身につけたい方にぜひおすすめしたい体験です。