
ジンジャーエールがつないだ縁─高知と東京、二つの地を結ぶ新たな挑戦
公開日:2025/09/22 00:19
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2025/11/03「興味ある」が押されました!
2025/09/24東京・神楽坂にあるクラフトジンジャーエール専門店「エール」。店主の内藤雅之さんは、これまで向き合ってきた生姜を手に、今、高知県・土佐町で新しい挑戦を始めています。高知と東京、二つのエリアを行き来しながら、少しずつ着実に歩みを進める、内藤さんの現在に迫ります。
コロナ禍で「生きる」ことを見つめ直す
2020年、内藤さんは東京でコピーライターとして活動していました。 コロナ禍で社会全体が不安に覆われる中、「自分の無力さを痛感し『生きる』ことに直結する仕事がしたい」と強く思うようになります。近所の商店街が休業していくのを見て、「何かできることはないか」と思ったのが始まりでした。
そのような状況で、医療従事者の方々などが冷たいお弁当を食べながらも頑張っている姿を目にします。その姿に胸を打たれ「手づくりのもの」や「温かいもの」、突き詰めていくと「温度」を届けることができたらと考えるようになりました。周囲の方々の力添えもあり、手づくりのサンドイッチやお弁当、クラムチャウダーと試行錯誤しながらも、少しずつ進むべき方向性が見えてきたのです。
活動を通じて、体を温めるために生姜を加えたクラムチャウダーが好評だったこともあり、内藤さんは生姜の持つ可能性に強く惹かれるようになります。さらに、ジンジャーエールを作ってみると「これは美味しい」と言っていただけました。この発見が、クラフトジンジャーエール専門店「エール」のオープンにつながっていきます。
「お店の名前には『応援する』という意味を込めましたが、伴走に近いイメージですね。挑戦には難しさがつきまといますが、だからこそ、誰かが一歩を踏み出そうとしているときには、エールをおくれるような自分でありたい。でも実際は、自分自身も多くのエールに支えられてきました」と内藤さんは言います。


生姜がつないだ土佐町との出会い
ジンジャーエールに使う生姜について、もっと深く知りたい。 生姜を扱う者としての責任感のようなものが芽生え、内藤さんは生姜の生産量日本一である高知県のイベントや移住フェアに足を運ぶようになります。そこで、美しい棚田が広がる土佐町と出会い、この地が持つ豊かな自然や温かい人々に惹かれました。
土佐町では、地域の加工品をつくるというプロジェクトが動きはじめていて2024年に食品加工場「丘のテーブル」ができたところでした。「この加工場でもジンジャーエールをつくることができる」というお話をいただけたことも、移住を決意する後押しになりました。
2025年4月、内藤さんは地域おこし協力隊として土佐町に着任。生活の拠点を東京から土佐町に移しました。 「東京にいた頃は、夜型の生活で、どちらかというと朝は苦手でした。でも、土佐町に移住してからは、自然と朝6時には目が覚める。鳥の声や自然の音、土の匂いに包まれ、生活のリズムが整っていくのを感じています。」


土佐町の恵みを生かした商品づくり
地域おこし協力隊としてのメインの仕事は、加工場「丘のテーブル」での製造・販売・商品開発です。着任後すぐに、幻の和牛・土佐あかうしと地域の伝統的な味噌づくりの文化を生かした肉味噌「今宵の土佐あかうし」の営業活動がはじまりました。
「今宵の土佐あかうし」には、地域の方たちの想いが込もっています。土佐町の山間地域に広がる美しい棚田は、長年にわたり地域の人々が大切に守ってきたものです。しかし、近年では高齢化が進むことで米作りが衰退しつつあり、棚田を維持することが難しくなってきています。また、耕作放棄地が増えることで、イノシシやシカといった獣害の被害も深刻化しています。寒暖差が生み出す旨みのある棚田米の魅力を多くの人に知ってもらうことで、この状況を改善したいという想いで、集落活動センター松ヶ丘(※)から生まれた合同会社アグリドマーニが地域の人たちと一緒につくった商品です。
現在は、念願だったクラフトジンジャーエールの開発がはじまっています。周囲の支えを受けながら、少しずつ形にしていると言います。 「土佐町の棚田が広がる景色は圧巻で、寒暖差のある自然環境など、山間の地ならではの自然の循環を感じます。その特徴をギュッとつめて昇華させたような商品にしたいんです」。 内藤さんは、この地域の自然の恵みや文化に光を当て、新たな価値を創造する挑戦をはじめています。
都会と地域をつなぐエール
高知県に拠点を移した後も、土佐町の魅力を伝えるべく月に1度ほど東京へ足を運び、営業活動やお店をオープンさせているそうです。 「私はエールの循環を大切にしたいと思っています」。内藤さんは穏やかに語ります。「今宵の土佐あかうしやクラフトジンジャーエールなどの地域に根ざした商品を通じて、土佐町の大地や、そこで暮らす人々の魅力を少しでも届けられればと考えています」。
コロナ禍という逆風のなかで始まった挑戦は、今、土佐町の豊かな大地で、静かに歩みを進めています。彼が作るクラフトジンジャーエールは、この地域の魅力を多くの人に伝えるきっかけとなりつつあります。
※集落活動センターとは、地域住民が主体となって、地域外からの人材も受け入れながら、旧小学校や集会所などを拠点に、それぞれの地域の課題やニーズに応じて、生活、福祉、産業、防災といった様々な活動に総合的に取り組む仕組みです。(高知県庁HP「えいとここうち」より抜粋)
★土佐町を含む土佐れいほく地域の交流会を東京で開催します。内藤さんもゲストとして参加予定です。内藤さんのお話をもっと聞いてみたい方、地域で挑戦してみたい方、大歓迎!ぜひお気軽にご参加ください。 (2025年10月5日(日)開催・事前申込制・25名様限定)
詳しくはこちらをご覧ください⇒https://smout.jp/plans/24790


このプロジェクトの地域

土佐町
人口 0.34万人

川村 幸司が紹介する土佐町ってこんなところ!
吉野川の源流に位置する美しい自然を誇る町です。 西日本一の貯水量を誇る早明浦ダムには自然体験型観光の拠点「湖の駅 さめうらレイクタウン」があり、カヌーやSUPといったアクティビティが楽しめます。

















