きっかけは「水」。困ったらヒラスイに行け！

ーーーー生山：大津北部、湖西での暮らしは、どのくらいになりますか？ さちこさん：大津歴でいうと17年になりますかね。きっかけは「水」なんです。普段は比良山系の水を非加熱で仕上げたナチュラルミネラルウォーターを製造・販売する会社を経営しています。2008年に、母が偶然、廃業していたミネラルウォーターの会社に設備が残っていること知り、足りないものは買い足す形で一緒に事業を始めました。初めは別の仕事をしていたので京都から通ってお手伝いをするくらいの感覚だったのですが、この事業に割く時間が増えてきて大津に住むことを決めたという流れです。その後、代表を母から引き継いで今に至ります。 たすくさん：大津への移住前は、京都の社会福祉法人で障害福祉の仕事をしていました。湖西に来てからも介護福祉士・ヘルパーとして働きながら、農業を始めて米作りもしています。

ーーーー生山：2022年にはナチュラルミネラルウォーターの事業だけでなく、「日用品の店ヒラスイ」も始められたそうですが、始めたきっかけは？ さちこさん：大津の西武百貨店が閉店してしまい、買い物しようと思ったら京都か草津に行かないといけなくなったんです。もともと京都の雑貨WEBショップで働いていたので、WEBショップを始めようと思ったのがきっかけです。ところが、今の敷地に在庫があることを知った地域の人が直接お店に来ることが多くなっていき、実店舗を構えることになりました。

ーーーー生山：この地域では「困ったらヒラスイに行け」が合言葉になっているようですね。 たすくさん：「地元の人に愛される場所にしたいね」という想いで始めたので、ガッツリ儲けたろとは思ってなくて。だから、うちの店がほんまにみんなが普段から来る場所になっていて、割と何も買わずに喋るだけ喋って帰っていく。「喋るだけかい（笑）」と思いながらも、うちの店は喋りに来る場所なんです。やっぱり一緒に過ごす時間って大事やなと思って。これからの時期なら、一緒に隣あってアイスを食べるだけでもいいんですよ。 さちこさん：この前なんか、急に「別荘を売りたいんですけど…」と相談しに来られた方もいましたもんね（笑）

ーーーー生山：昨年2024年の「かんじる比良」から実行委員会の会長に就任されたそうですが、どのような経緯があったのでしょうか？ （※「かんじる比良」→湖西の地に代々暮らし続けてきた人、移住してきた人、ギャラリー・工房を構え創作活動する人など、さまざまな人々が手をとりあい、「自然」「歴史」「文化」「アート」「食」を通じて元気な比良を発信することを目的に2007年発足） さちこさん：会長って呼ぶのはやめて。代表で（笑） 最初は出展者側だったのが、実行委員になり、前代表の退任を機に「かんじる比良」自体の存続が危うくなり… こんなに長い間やっているイベントを畳むのはもったいないと思い、仲間の協力も得ながら代表を務めることを決めたんです。 協力してくれている仲間とは「日用品の店ヒラスイ」を通じて信頼関係ができていたことが大きかった。ひとりじゃ絶対無理でした。

ーーーー生山：昨年、はじめて代表を務めてみてどうでしたか？ さちこさん： 実行委員会が総入れ替えに近かったんで、まずは「何を大切にするか」の話し合いから始めましたね。外から来てほしいというイベントでもあるけど、この地域の人がもっと絆を深くしたり繋がれるイベントにしたいという想いがあったんです。何度も「今年が大変なんや。来年以降は楽になる。」とみんなにも自分にも言い聞かせながら進めていきました。JRが湖西線開通50周年ということもあり全面協力していただけることになり、ポスターも滋賀県の全駅と山科駅・京都駅に貼っていただけました。マルシェ会場を増やしたことで、出展数も47から82に。あとは巡回バスを出したことがとても好評で。それもみんなで話し合い、１週間前くらいに決まったんですが。 この準備を通じて、仲間達とさらに仲良くなったのは間違いないです。一緒に踏ん張った存在はやっぱり信頼できますよね。

ーーーー生山：移住を考えている方に、湖西の魅力を改めて聞かせてください たすくさん：このあたりがおもしろいのは、やっぱり自分で何かを生み出す人が多いところ。家のなにかが壊れたときも、「ちょっと俺が直すわ」と言って直してくれる。あと僕らが意識していることは、地域の中でお金回すこと、経済の循環みたいなものを作れたらいいなって。田舎でもamazonで買い物が完結できてしまう。それよりも近くの手作りクッキーを買ったり、知り合いのところで野菜を買ったり。それぞれが自分で生み出す得意なジャンルがあって、それを共有しながら助け合っている感じです。 「かんじる比良」の実行委員をやっているメンバーって、やっぱりこの地域が好きで移り住んだ人がほとんど。この好きな地域をもっとおもしろい地域にしていきたいって思っている。「かんじる比良」の時だけじゃなくて、普段からほんまに一緒に遊ぶような仲間がめちゃくちゃ広がって増えました。「ちょっと田植えやるから手伝ってくれへん？」と声をかけたり、お互いの子どもを預けあったり。 そして、この地域をこれから背負っていこうと思ったら、どんなことを大事にしてどんなことが必要なのかと話すこともあります。 都会には都会の生き方、生活の仕方があるとは思うけど、このあたりには「琵琶湖で泳いで、ちょっと農作業して、知り合いの農家から野菜もらう」といった、心が豊かになる暮らしがあるんです。 人によって価値観は違うから、一概にこれが正解ですよっていうのはないけれど、僕らにはこれが心地いいんです。

ーーーー生山：本当に素敵な人柄のおふたりで、地域の皆様に愛される理由がわかりました。湖西への移住に悩んでいる方はぜひ、おふたりに会いにいってください。きっと、地域の人たちとつながるきっかけになるはず。合言葉は「困ったらヒラスイに行け！」です。