秘境に一軒だけの温泉宿を、27歳で引き受けた人がいる
公開日:2026/08/24 00:49
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2026/08/24「興味ある」が押されました!
2026/08/24和歌山県橋本市北宿。大阪からも近く、高野山からも車で約30分という場所にありながら、そこは「秘境」と呼ばれるエリアです。
県立自然公園の中、県の指定名勝地である玉川峡を眼下に望む谷あいに、温泉宿が一軒だけ建っています。「やどり温泉いやしの湯」。天然温泉と、一棟貸切のコテージを備えた宿です。
まわりに何もない、と言うこともできます。けれど春には桜が咲き、初夏には新緑とホタルが出る。夏は川で泳げて、秋は紅葉、冬は雪。テラスに座っているとひぐらしが鳴きはじめる。都会では意識しないまま過ぎていく季節の変わり目が、ここでは目の前で起きます。
「ここで働き続けたい」から始まった会社
この宿を運営するのは、SCRUMきのくに株式会社。代表の西裕生さんは、もともとこの宿の一従業員でした。
転機は、以前の運営管理事業者が経営難で撤退したときです。宿がなくなるかもしれない。そう思った西さんは、会社を設立して指定管理者に名乗りを上げました。27歳のときでした。
「やどり温泉で働き続けたいという一心でした。当時27歳、若いからこそ踏み出せたんだと思います」
経営の経験はありません。開業から3年近くは赤字が続きました。それでも手探りで続けた結果、温泉総選挙2018のファミリー部門で全国1位、わかやまおもてなしの宿アワード2018では旅館・ホテル以外の部門で最優秀賞を受けています。
面白いのは、その後の姿勢です。
「私は経営者を目指していたわけではありません。やどり温泉で働きたいから会社を作っただけ。だから、やどり温泉を大きくするという事業拡大はあっても、他の施設運営にまで事業を広げる考えはないんです」
規模を追わない。この一軒だけを、深く育てていく。手放したくないという気持ちが、そのまま経営方針になっています。
「おかん」がつくる、山と川のごはん
宿に併設されたお食事処の名前は、「おかん's café」。
イノシシ、鹿、山菜。橋本市の名産である玉子、ひね鶏。清流で獲れた川魚と、地元の新鮮な野菜。そうした食材を使った料理を出しています。厨房に立つ料理長は、開業当初から西さんと一緒に働いてきた70代のベテランです。地元の「おかん」でもある人。
もともとは、家庭で家族に料理をつくるところから始まったそうです。家族に喜んでもらうのも、お客様に料理を出すのも、根っこは同じ。誰かに「美味しい」と言ってもらえたら嬉しい。その感覚を、いまも仕事の中心に置いています。
いま、この厨房には人が足りていません。
ただ、料理人としての経歴がある人を待っているわけではないようです。西さんも料理長も、そこはほとんど見ていない。「料理をつくるのが好き」「誰かに美味しいと言ってもらえると嬉しい」。まずはその気持ちがあるかどうかだと言います。実際、始まりは配膳や簡単な調理補助からで、そこから少しずつ覚えていくことになります。
技術は教えられる。でも、誰かに喜んでもらいたいという気持ちは教えられない。だから後者を持っている人に来てほしい、という考え方です。
パートを含めて、働いているのは12人ほど。小さな組織なので、役割はきっちり分かれていません。フロントのスタッフが調理場に入ることもあります。裏を返せば、宿全体がどう回っているのかが、一人ひとりに見えるということでもあります。
料理長は70代、フロントマネージャーは西さんと同級生の38歳。正社員やフルタイムで働くスタッフは30代が多く、主任として現場を担っています。勤続10年近い人もいて、辞める人が少ないのがこの宿の特徴です。
「何でも相談できる家族のような会社にしたい」
西さんはそう話します。人数が少ないぶん、誰が何に困っているかが見えてしまう。その距離の近さを、面倒がらずに引き受けている職場です。宿には「入浴まかない制度」もあります。仕事終わりに、そのまま温泉に入って帰る。渓谷の一軒宿で働くというのは、そういうことでもあります。
もし気になったら
大自然の中にぽつんと建つ一軒の温泉宿と、それを「我が子のよう」と言う人がいる。
和歌山県では、実際に現地に行って数日間その仕事に触れてみる「しごと暮らし体験」という仕組みを用意しています。やどり温泉いやしの湯も、その受け入れ先のひとつです。
橋本市の中心部から車で30分。JR和歌山線の橋本駅までは送迎もあります。もし少しでも気になったら、まずは温泉にお越しください。
宿のこと、玉川峡のこと、ここでの働き方のこと。お伝えできることはたくさんあります。
このプロジェクトの地域
橋本市
人口 5.71万人
わかやまキャリアチェンジ応援プロジェクトが紹介する橋本市ってこんなところ!
なんばまで直通約50分という通勤圏にありながら、世界遺産高野山の麓に位置し紀の川の清流も流れる自然豊かなまちです。「出産・子育てしやすい街」として関西圏で評価された実績もあり、子育て支援制度が充実。都会と田舎のいいとこどりの暮らしを実現できます。
このプロジェクトの関連地域
和歌山県全体
人口 87.56万人
このプロジェクトの作成者
東京都に住みながら、キャリアコンサルタントとして、和歌山の仕事の情報発信や、職業体験の企画をしています。
和歌山のこと、お仕事のこと、なんでもお気軽にご連絡ください。