どうして、ここをドローンの飛行場にされたのだろう。

（伊賀並）目的としては地域おこしなんですが、単純に、私がやってて面白いというのがいちばんの動機です。何事も楽しくないと続かないですから

そう言って笑うと伊賀並さんは、ヘッドマウント・ディスプレイを貸してくれた。装着すると、ドローンに搭載されているカメラが映した景色が眼前に広がって、壮観。まるで鳥になった気分で、美しい田園や伊吹山系の濃い森林の緑をダイナミックに眺められる。

（伊賀並）よし！このまま山の上のキャンプ場まで飛んでみよう！

空中散歩を楽しんでいると、傍らで伊賀並さんが楽しそうな声を上げた。そう、このドローンおじさんはいつも笑顔で楽しそうだ。ドローンはぐんぐん高度を上げて、やがて、活動拠点から林道を８００メートルほど進んだ山の上にある、キャンプ場に到着した。

四方を森に囲まれた約３０００平方メートルのスペースが整地され、デッキや簡易トイレ、水場などが設置されている。ほんとうに「どうしてこんなところに？」と言いたくなるような場所にある、“ポツンと一軒家”ならぬ“ポツンとキャンプ場”だ。

（伊賀並）ここは私が仲間といっしょに開拓して、造成した深山林キャンプ場です。いちばんの魅力は、自由さと開放感。誰に気がねすることなく、思いのままにアウトドアを楽しめます。近くで渓流釣りや山菜採りもできるし、なんといっても夜、星が綺麗ですよ。人工的な光が一切無いから自分が宇宙の一部になったような感覚を味わえます。

目を閉じれば、川のせせらぎ。鳥のさえずり。焚火を眺めゆったり寛ぎながら、都会の喧騒を離れて、のんびりと家族や友人とプライベートな時間を楽しむことができる最高のスペースだ。

伊賀並さんは地区の市民グループ『里山を守り生かす会』の代表。グループは２０１９年から３年間、林道整備に取り組んだ。
不法投棄されていた電化製品や建設廃材の撤去なども進めながら、道路も補修。周辺の木約１５０本を間伐するなかで、この深山林キャンプ場も“開拓”した。

（伊賀並）２０２２年の春にはこのスペースで、ジビエ料理の試食や音楽を楽しめる、全国植樹祭を勝手に応援するイベント“もりであそぼ”を開催して盛況でした。なんせ、どれだけ大きな音を出しても、誰にも迷惑かかりませんから（笑）。コロナ禍で密を避けることが大事になったし、ソロキャンプなんかも流行してるから、ここは最適だと思うんですよ。

最後に、どうして伊賀並さんは、こんなに熱心にキャンプ場づくりやドローンに取り組まれているのかを聞いてみた。

（伊賀並）消防士をやっていたんですが６０歳で引退して、そこから地域のためにできることを自分なりに楽しみながらやってきました。色々やりましたよ。例えば、あそこに薪が積んであるでしょう。あれは山から伐り出してきた木材を地域の若者たちといっしょに加工して薪にして売ってるんです。米原市のふるさと納税の返礼品にもなってますよ。

“プレミアム薪ホワイト”というネーミングで確かに返礼品になっている。
広葉樹である楢（なら）の木が原料で、「皮を取り除く」というひと手間を加えることで虫が付きにくく、灰も少ないという高品質。最近人気の薪ストーブ愛好家に、よく売れているそうだ。

その傍らには、昔懐かしい“屋外五右衛門風呂”なんかもある。

伊賀並さんは活動拠点（ドローン練習場と併設キャンプ場）と深山林キャンプ場を総称して“伊吹弥三郎ベース”と名付けている。伊吹弥三郎とは、伊吹山にまつわる民話で伝承されている“伝説の巨人”だ。
みなさん、地域おこしの「巨人」伊賀並さんの楽しい秘密基地で遊んでみませんか？
興味あるボタンを押された方に、伊吹弥三郎ベースの詳細情報をお届けします。