首都圏から移住。子育ても仕事もあきらめない!産後の悩みを力に変えて起業『名嘉村まりこさん』

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2025/08/28

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2025/08/27

「ママが笑顔で元気だと、家族が幸せになる。幸せな家族が増えれば、地域全体が元気になる。だから私の目標は『女性の元気を取り戻す』ことなんです」

そう話してくれるのは、2018年に福島県田村市に家族で移住した名嘉村まりこさん。「産後ケア事業」「リユース事業」を手がける傍ら、2024年には家の近くで新たにカフェ併設のクレープ屋をオープンしました。

田村市に移住したきっかけ、起業した理由、田村市での子育て事情などについて話を伺いました。

子どものことを考えるなら、環境の良い場所がいいと移住を決意

首都圏育ちの名嘉村さん。父親の仕事の関係で高校の3年間を福島県富岡町で過ごしましたが、卒業後は首都圏に戻り就職。家電量販店で販売や管理、人材育成などを担当していました。

そのうちに、名嘉村さんの妊娠が発覚します。

「夫も同業でしたが、とにかく忙しい。2人とも朝早くから夜遅くまで働いていました。とてもじゃないけど、こんな状況で子どもは育てられないと思いましたね」

そうして移住を考え始めたところ、名嘉村さんのお父さんが営んでいた田村市の工場で旦那さんが働けることになり、田村市への移住が決まりました。

【出産を通して感じたママへの支援の必要性。「産後ケア事業」から「ママが集える場所作り」へ】

移住後すぐに出産。出産後は、新米ママにとっては「初めて」の連続であるにも関わらず、家族以外とはほとんど会えないとても不安な時期。名嘉村さんも例外ではありません。

しばらくは眠れない、誰とも話さない、子どものお世話と家事でいっぱいいっぱい、そんな時期が続きました。洗濯物をたたみながら涙が止まらなくなったこともありました。そしてある時、プッツンと何かが切れて、名嘉村さんは突然自分の髪をバリカンで刈り上げ始めたそうです。

「もう冷静な判断はできなかったんでしょうね。今考えたら産後うつに近い状態だったんだと思います」

ようやく子どもが保育園に入って働ける!と思っても、熱や体調不良で頻繁に呼び出される日々。仕事に行ったと思ったら電話がきてとんぼ返り、なんていうことも日常茶飯事でした。 これでは到底会社勤めはできません。そこで名嘉村さんは考えました。

「どうせできないのであれば、自分で事業を立ち上げよう」

事業の内容は、自分と同じような境遇にいるママのための「産後ケア事業」と「リユース事業」。

「まぁ、最初の頃は何をやるかははっきり定まっていなくて『便利屋』で登録していたんですけど(笑)。でもある統計を見て驚きました。出産後、産後うつを経験する人の割合は10人のうち8人だそうです。そのうちの2人は重症。ママの多くは、こうした不調を相談もできないままに社会復帰しているんです」

そうして「子ども用品のレンタル」や「パパ、ママ向け産後講座」を開始。協力者も増え、認知度は徐々に上がっていきました。

「ただ何かが足りないと感じていました。ママが幸せでいるためには、家族や友達など共感してくれる人はもちろん、いつでも温かく迎えてくれる場所が必要。その場所がない……と気づいたんです」

ママの困り事解決+地域の困り事も解決。人生初の飲食店に挑戦

「当初、自分が飲食店をやることになるとは全く思っていませんでした」

「産後ケア事業」「リユース事業」を今後どうしていくかを考えている時、近所の方とのおしゃべりの中で地域の課題について話が出ました。

「私たちが住む田村市常葉町には、町外から来た人がランチをしたり、お茶をする場所がほとんどありません。だからみんな素通り、もしくはランチに合わせて移動してしまいますよね。子どものためにも町を廃れさせたくない。足を止めてもらうための場所(飲食店)が必要だよねっていう話をしていました」

飲食店をやるための初期投資はかなり高額です。もしその場所を用意することができたら、飲食店をやりたいという人が現れるのではないか。そう思い、名嘉村さんはシェアキッチンを始めることを思いつきました。

そうして同じく田村市に移住していた妹さんとともに、シェアキッチンをメイン事業とした『サニーさんのハコトリドリ』をオープンすることを決めます。

「サニーは周りを照らす太陽。色んな人が集まって、そこから新しい活動が始まったり仲間ができたり、そんな場所になるといいなと思いこの店名を付けました」

当初は日替わりで色んな人がお店を出せたらいいなと思っていました。ただ、まずは名嘉村さん自身が飲食店の知識を身につけようと、ご自身で『クレープ屋』を始めることにしました。

走りながらのドタバタオープン。

「メニューをクレープに決めたのは、オープンの1週間前です(笑)クレープを作るのも初めてだったから、1週間で猛練習して。最初のうちは失敗作もたくさんできました。妹と毎日笑いが止まりませんでしたね」

オープンから10カ月が経った今、お店はすっかり「町のクレープ屋さん」に。普段は町のおばあちゃんたちが女子会で使うこともあれば、子どもがお小遣いを握りしめて買いに来ることも。誕生日だからと家族で記念にクレープを買いに来る方もいます。

【ママの一人ランチも安心。今後は定期的なイベント開催を考え中】

現在、サニーさんのハコトリドリで行っている主な事業は、 ・シェアキッチン ・飲食提供 ・イベント出店 ・場所貸し ・物販 です。

月曜日から金曜日までクレープの販売をしていますが、その時々によって、キッチンカーが庭先にきて販売していることもあります。

シェアキッチンを使って新商品の開発をする人、料理教室をする人、お絵描き教室や店内でハンドメイド商品、おすすめの本を販売する人など、地域の人がやりたいという活動は、できるだけ取り入れるようにしています。

「産後のママにとって、あたたかみのあるつながりって必要だと思うんです。今後は、産休、育休中のママを定期的に集めたイベントの開催、コミュニティ作りも行っていきたいと思っています」

店内には赤ちゃん用のハイローチェアやおもちゃがあり、メニューには「粉ミルク」(無料)の文字。もちろんトイレにはおむつ交換台も設置してあります。

「抱っこ無料サービスもやっています。その間にママにはゆっくりごはんを食べてもらえたらいいなと思います」

同じママの立場だからこそ気づくサービスが、さりげなく用意されている安心感。

お店では田村市産そば粉を使ったガレットも提供
お店では田村市産そば粉を使ったガレットも提供

移住検討者の方へメッセージ

「夫は『やりたいことをやったらいい』と言ってくれています。仕事が終わると夫が店に立ち寄り、その日の子どもの送迎などについて相談します。

クレープ屋を始めて子どもにどんな影響があったかはわからないですけど、とりあえず、学校でいじめられることはなさそうです。息子の友達がクレープを買いに来てくれることもよくありますし、学校でも『昨日クレープ食べたよ!』とお友達が話しかけてくれているようです」

子ども連れで移住するママにとって「仕事」は一つの悩みどころ。子どもが小さくては会社勤めもままならない。とはいえ、いきなり自分で事業を起こすのも自信がない…

そんな時にこそ「サニーさんのハコトリドリ」をぜひ活用してほしいと話します。

「共働き夫婦が移住して事業を立ち上げるとなると、当然それまでの家計のバランスが崩れます。ましてや移住して家族も知り合いもいない場所でのスタートとなれば、障壁は大きいと思います。

そんな時に、週1だけシェアキッチンを利用するなど、『サニーさんのハコトリドリ』がお試しの場、スモールスタートの機会になったらうれしいです」

一歩踏み出すことで、課題を含めた事業の可能性について見えてくるものがたくさんあると話す名嘉村さん。

「人口が少ない田村市では、何かを始めると目立ちます。だからこそ応援してもらえる。移住支援金や起業支援金、人材育成の機会も用意されているので、スモールスタートには向いていると思います」

一方で、課題もあります。

「おじいちゃん、おばあちゃんとの同居、もしくは近場に住む人が多い田村市で、核家族での移住は大変なことも多いと思います。子どもの送迎や体調不良時の看護など、基本は夫婦でこなさなければいけません。夫婦のつながりが試されますね。

田村市では子育て世帯向けに現金や商品券での支援があります。産後のパパママ向けに子どもの送迎や家事手伝いなどの生活支援制度もあるのですが、あまり使われていないのが実情です」

名嘉村さんは、そうした子育て世代の生の声を集め、行政へ意見として届けられるような女性のネットワークを作りたいと考えています。

「私は田村市に受け入れてもらって、地域の人にとても良くしてもらって、田村市に恩返しができたらといつも思っています。息子の学校は小規模校なので、先生の目が行き届いていると感じます。保育園でも先生方に余裕があるのか、先生自身が楽しそうに働いています。

子どもたちがのびのび育つ環境があるって、いいですよね」

田村市の良いところを最大限受け入れ、活用し、課題には解決のために自ら動く。そうして子どもに少しでも住みやすい田村市を残そうと奮闘する名嘉村さん。

「ぜひ、クレープ食べに来てください!」

名嘉村さんの明るく親しみのある話し方に、思わず顔がゆるみます。

ご家族と一緒に(名嘉村さんご提供)
ご家族と一緒に(名嘉村さんご提供)

このプロジェクトの地域

福島県

田村市

人口 3.52万人

田村市

一般社団法人Switchが紹介する田村市ってこんなところ!

暮らしのスタイルが選べる! 福島県の山間地に位置する田村市は、人口約32,500人が暮らす、自然豊かで多彩なライフスタイルが楽しめる町です。 市域の約70%を占める広大な森林や、丘陵地帯に広がる静かな山間部や畑、さらには国道沿いの利便性の高い生活エリアまで、地域ごとに異なる魅力を持つ田村市。静かにゆったりと過ごすスローライフも、便利な町中での快適な生活も、自分のライフスタイルに合わせて選べるのが大きな魅力です。

さらに、東京から新幹線と電車で約1時間50分、車で約3時間30分というアクセスの良さも田村市の強み。 夏は涼しく、冬は雪が少ないため、都市部からの移住者にも優しい暮らしやすい環境が整っています。

このプロジェクトの作成者

プロフィール画像

興味を持っていただき、ありがとうございます! 私たちは福島県田村市で廃校活用型テレワークセンター「テラス石森」を運営しながら、地域活性化に取り組んでいるまちづくり法人です。 福島県田村市を、よりアツい場所にするべく活動しています。

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