
地域おこし協力隊から継承者へー五島の伝統菓子“かんころ餅”に込めた決意(前編)
公開日:2025/10/17 02:10
最新情報
「興味ある」が押されました!
2025/11/28経過レポートが追加されました!「後編の記事が掲載されました♪」
2025/11/07地域おこし協力隊の任期を終えた後も島に根ざして生きる人がいます。
奈良出身の元新聞記者・竹内紗苗さんは2015年、地域おこし協力隊として着任するために上五島に移住。やがて2005年にスタートした農産加工グループ「花野果(はなやか)」と出会い、移住仲間の岡本幸代さんとともに、五島の伝統菓子「かんころ餅」を未来へつなぐ決意を固めます。レシピだけでなく、畑の手仕事や季節の温度、年の瀬に届く「今年もお願いします」という声まで——地域に残る時間そのものを受け継ぐ覚悟です。本編では、二人が島に魅せられ、継承を決め、工房の新築移転とカフェ開設へと踏み出すまでをたどります。次回の後編では、インタビューを中心にその心の内をお届けします。
島で生きる道を選んだ、協力隊として“来た人”から、伝統をつなぐ“島の人”へ。
鳥の声と教会の鐘――上五島に心を奪われて移住
にぎやかな鳥のさえずり、大海原へと乗り出す小さな漁船、教会の鐘の音とともにミサへ向かう人々ー。2015年、当時新聞記者として働いていた竹内紗苗さんは、初めて訪れた新上五島町の穏やかな時間の流れに心を奪われ、地域おこし協力隊として移住することを決めました。協力隊の任期が終了してからも、地域に根ざした生き方がしたいと考えていた竹内さんは、農産加工グループとして活動していた「花野果」さんと出会います。 新上五島町は急峻な地形で田んぼが少なく、かつては段々畑で育てたサツマイモを主食として食べていました。しかしサツマイモは寒さに弱く、冬になると傷んでしまいます。そこで、サツマイモを薄く切って湯がき、北風にさらして天日で干し、カラカラに乾燥させて保存しました。このカラカラの干し芋が「かんころ」で、かんころをもち米と一緒に蒸し、砂糖を加えてつきあげたものが「かんころ餅」です。花野果さんは、地域の人たちが手作りした「かんころ」をかんころ餅に加工する仕事をしていました。島を離れた子どもや親戚に、自分のかんころで作ったかんころ餅を届けたいという地域の人々の思いをカタチにしてきました。


心が決めた花野果継承の決断 私たちの手で残す「かんころ餅」
「地域のためにも、これからもかんころ餅を作り続けてほしい」。花野果さんから事業承継の依頼を受けた竹内さんは、移住者の先輩で農業にも携わっていた岡本幸代さんに相談します。「島ではサツマイモを作る人がどんどん減っている。このままではかんころ餅がなくなってしまう。一緒に花野果さんを継いで、かんころ餅を残そう」。力強い言葉に背中を押された竹内さんは、岡本さんとともに花野果の工房に通い、かんころ餅をはじめとする郷土菓子の作り方を1年かけて学びました。畑を借りてサツマイモ作りも始め、2018年にバトンを受け継ぎ、2人は2代目花野果として活動を始めました。


「残したい」――移転と事業拡大へ踏み出した二人
2018年、竹内さんと岡本さんは先代の思いを受け継ぎ、花野果の二代目として歩み始めます。岡本さんは食品商社や人材派遣会社などで培った経験を生かして工房の経営を支え、竹内さんは記者時代に身につけた発信力で広報を担当。2020年には、教会と海が見渡せる土地に工房を新築移転し、週末限定のカフェスペースを開設しました。国の補助事業を活用して新しい設備を導入し、店内で飲食できるカフェを開業。地域住民や観光客の交流の場となり、販路も広がりました。 現在の工房では、昔から愛されてきた素朴な味を生かしたお菓子作りをしています。かんころ餅を薄く切って乾燥させたチップス「かりころ餅」や、島のお母さんたちが子どものおやつとして手作りしていたどこかなつかしいおやつの「かりんとちゃん」、北海道産小豆や自家栽培のサツマイモ、五島産そら豆のあんこを使った地域の行事やお祝い事の席で食べられていた「ふくれまんじゅう」など、島の素材にこだわったお菓子を揃えています。二人は週末カフェで新作スイーツを出したり、地元マルシェやイベントに出店したりと地域活動にも積極的です。 移転後の工房には大きな窓があり、目の前には青い海が広がり、白い教会が見えます。初めて島を訪れたときに島の良さを感じた風景の場所を選定し、ここに根付く決意で建てました。2人の担当カラーである岡本さんの赤色と竹内さんの緑色のワークユニフォームがその風景に溶け込み、訪れる人々を温かく迎えます。イベント会場で「花野果さんだ!」と声をかけられることも増え、二人は「島の味と時間を届けることが自分たちの仕事」と改めて実感しています。
花野果の歩み(年表)
2011年 岡本幸代さん、京都府から新上五島町へ移住 2015年 竹内紗苗さん、地域おこし協力隊として着任 2018年 二人で「花野果」を正式に承継 2019年「かりころ餅」が「ながさき手みやげ大賞」で大賞を受賞。 2020年 カフェスペース併設の工房を新築し移転。週末カフェがスタート。 2024年 岡本幸代さんが「商工会女性部主張発表」で県知事賞(最優秀)受賞、九州ブロックでも最優秀。
次週は、2人にこれからを聞いた後編をお届けします。
*この記事を読んで新上五島町に興味を持たれた方は、まずは「興味ある」ボタンから、お気軽にご連絡ください。
また、島の暮らしをもっとイメージしたい方は、ぜひ「新上五島町」が発信しているほかの記事も読んでみてください。きっと新上五島町での生活が、よりリアルに思い描けるはずです。


このプロジェクトの経過レポート
このプロジェクトの地域

新上五島町
人口 1.50万人

新上五島町が紹介する新上五島町ってこんなところ!
この島は、自然との距離が近い。 時を忘れて浸ることができる。 街を歩けば、神社仏閣、教会など、 歴史や文化が生活に溶け込んでいる。 町民の気質は「お互い様」。 訪問客とも飾り気のない触れ合いをする。 この島にいる間は、時間に縛られなくていい。 自分の体内時計に従って、 のんびり自由に過ごすことができる。 頭と心をリセットし、 自分のやりたいことを見つけよう。
私たちは、世界中の人たちに、 自分と向き合う時間を提供します。
このプロジェクトの作成者
・新上五島町は、長崎県五島列島(九州の西端)に位置する島で、7つの有人島と60の無人島で構成されています。 ・新上五島町は細長い島で、山々が連なり入り組んだ地形をしており、リゾート地のようなエメラルドグリーンの海や水平線に沈み島を赤く染める夕陽、圧倒的な自然や教会群が魅力です。 ・島には、コンビニ、スーパー、ドラッグストア、ホームセンター、病院、学校(大学を除く)等の施設があり、生活するうえで必要なものは島内で購入することが可能です。 また、漁業・農業・建設業・医療・介護・交通・各種サービス業等、様々な業種があり特産品の「五島手延うどん」や「椿油」、「かんころもち」等の製造業もあるなど歴史や文化を感じながら働くことができます。 (新上五島町公式HP:https://official.shinkamigoto.net/) (新上五島町観光HP:https://shinkamigoto.nagasaki-tabinet.com/) (新上五島町移住HP:https://kami510.com/)

















