愛荘町の高校生が地元の人と関わりながら、本格的な起業体験

読みもの

公開日:2026/09/18 05:48

滋賀県立愛知高校の起業体験プログラムから生まれた「模擬株式会社ECHI」。実際に法人登記された企業ではなく、生徒たちが会社経営を疑似体験する架空の会社ですが、地元企業と手を組み、商品開発から販売まで本気で挑戦しています。生徒会長の仁保琉愛さんに、昨年度の黒字化・寄付までの道のりと今の取り組みを、そしてプロジェクトの立ち上げに関わったコーディネーターの綿谷さんに模擬株式会社ECHIというプロジェクトそのものへの想いを聞きました。

まちの人と取り組むプロジェクト

毎週金曜日の放課後、愛荘町の愛知高校では、模擬株式会社ECHIのメンバーが商品づくりに励んでいます。今、彼らが手がけているのは「べジチップス」と「体にいい いちごサイダー」の2品です。

そもそも「模擬株式会社ECHI」とは何なのでしょうか。正式に法人登記された会社ではなく、生徒たちが会社経営を疑似体験する、いわば「架空の会社」です。商品の企画から販売、決算まで、地元企業の協力を得ながら取り組んでいるのだそう。

――――もともとはボランティア同好会からこのプロジェクトが立ち上がったそうですね。どういったきっかけで参加されたのですか?

(仁保さん)同じ軽音部だった先輩に誘われて、楽しそうだなと思ってボランティア同好会にも入ったのがきっかけです。先輩・後輩同士でも仲がいいイメージがありました。当時は、物を仕入れて、売るというやり方だったので、何を売るかを話し合って決めて仕入れて、イベントで販売するということをしていました。

――――昨年はボランティア部となり「株式会社」として、起業体験をしていこうとプロジェクトが立ち上がりました。

(仁保さん)株式会社とは出資者に投資をしていただいて、そのお金で事業をして利益を出さなくちゃいけないと知りました。地元の材料を使って、商品を開発して販売をすることで利益を出し還元することを目標に取り組みました。地元で出資してくださる方を募り、出資金を出していただきました。みなさん、私たちの思いに共感してくださった企業様が出資してくださり、お金が集まりました。

――――地元企業の方とやりとりする中で、印象に残っている言葉や場面はありますか?

(仁保さん)昨年、くよもん農園さんと一緒におにぎりを試作させてもらったときに、お米に梅を入れて炊く方法を教わりました。梅の色や風味がつくのかと思ったら、そうではなくて、ご飯が長持ちするという方法で。いろいろとお世話になりましたが、今まで知らなかった昔ながらの炊き方を教わったのも印象に残っています。

――――昨年度、黒字化した収益の一部を愛荘町に寄付されたそうですね。振り返ってどう感じていますか?

(仁保さん)自分たちの責任で商品を作り・売る大変さを経験できました。大変なことが多かったんですが、全ての出店で黒字という結果を出せて、本当によかったです。初めてで不安なこともありましたが、全部終わったときに達成感を感じられました。納めた寄付金が、愛荘町の未来に役立ててもらえると思うとうれしかったです。

地元企業向けに出資したもらうための説明会を開きました
地元企業向けに出資したもらうための説明会を開きました
収益の一部を愛荘町へ寄付しました
収益の一部を愛荘町へ寄付しました

今、取り組んでいること

――――今年は第2期としての活動になるのですね。

(仁保さん)はい、今年は前期よりも多くの方にご支援いただきました。なんとかすべてを売り切って収益化を目指し、利益を還元し、また愛荘町に寄付ができればと考えています。

――――今年はどんな商品に取り組んでいるのですか?

(仁保さん)今年は、「日持ちがして遠くの人にもとどけられる商品」をテーマに、島本微生物工業さんと一緒に「体にいい いちごサイダー」を作っています。いちごは地元のいちご農家「ストロベリーラボ」さんのイチゴを使っています。ほかにも、地元でとれた野菜を使った「べジチップス」にも取り組んでいます。

――――商品は、どうやって形になっていくのですか?

(仁保さん)みんなでどんな商品がいいかを考えてから地元の企業様に交渉し、素材を提供してもらったり、自分たちで作れないものは作っていただいています。できた商品をみんなで試食して、どう仕上げるか決めています。

――――野菜チップスはどうやって作ってらっしゃるのですか?

(仁保さん)集まった出資金や県教育委員会の「魅力化チャレンジ事業」で、野菜を乾燥させる機械を購入させていただきました。野菜を地元の農家さんや学校栽培のものから調達し、どういう味だと購入していただけるか試作を重ねています。

――――開発の中で、大変なことはありますか?

(仁保さん)同じように加工しても、材料によって味が変わったりうまくいかないこともあります。野菜チップスは、アク抜きの時間を調整したり、切る厚さを変えたりいろいろと試しています。

取材に伺った日は、ちょうど秋のイベントで販売するべジチップスをめぐる話し合いの真っ最中でした。話し合いは、商品そのものだけではなく、当日の販売ブースのレイアウトやパッケージ、ラベルなど見せ方についても活発に意見が交わされていました。

集まった出資金などで野菜を乾燥させる機械を購入
集まった出資金などで野菜を乾燥させる機械を購入
地域の野菜を使ってベジチップスを作ります
地域の野菜を使ってベジチップスを作ります

ECHIを支える、地域とのつながり

こうした生徒たちの活動を支えているのが、コーディネーターの綿谷駒太郎さん。2022年、地域おこし協力隊として愛荘町に着任し、卒隊後も教育を通してまちづくりに関わっていらっしゃいます。

地域と学校が協力して学びをつくる「地域学校協働モデル事業」として愛知高校が選ばれ、綿谷さんがコーディネーターとして参加することになったそうです。同校の「地域共学(地域と共に学ぶ)」という理念を具体化する方法として提案されたのが、地元企業と商品開発をする起業体験だったといいます。

(綿谷さん)地域の人と一緒に学びをつくりたいなと思い、生徒に会社経営を疑似体験させる形にしました。とはいえ、「授業に来て交流してもらう」だけでは、大人も生徒も真剣にならないんじゃないか。商品開発を一緒にしたり、地域の人が実際にお金を出して応援したりすることが、大人も子どもも本気で取り組み、地域と一緒に教育をつくることにつながるのではと考えました。

――ECHIを通して、これから生徒たちにどんな変化があってほしいですか?

(綿谷さん)商品って、自分が頑張ってPRしたものが売れることもあるし、頑張っても売れないこともあると思うんですけど……それも楽しいというか。大変な中にも楽しさがありますよね。これから大人になる子どもたちには、大変なことも多いけど、大人になるって楽しいなって思ってもらえたらいいなとも思っています。ECHIでの経験を通して、社会に出ることも悪くないと感じてもらえたら。

愛荘町の、いいところ

最後に、もう一度仁保さんに、活動を通して見えてきた愛荘町の魅力を聞きました。

――――活動を通して、愛荘町の印象は変わりましたか?

(仁保さん)愛荘町にはびんてまりや近江上布のような伝統的なものが、まちには残っているし、親切な人が多くて、あたたかいまちです。それまでは何も思っていなかったんですが、活動を通して、愛荘町でつながりを生もうとしている方々がいることを知りました。私が今できることは少ないかもしれませんが、少しでも行事に参加してつながりを増やしたいと思っています。

架空の会社という設定の中で、仁保さんたち高校生は、地域の人たちに支えられながら本気で取り組んでいます。その先に見えてきたのは、あたたかい人たちとのつながり。愛荘町のあたたかさでした。少しでも気になったら、ぜひ「♡興味ある」ボタンを押してくださいね。

イベント出店時に掲げる看板
イベント出店時に掲げる看板
チップスだけではなくラベルデザインなども自分たちで考えます
チップスだけではなくラベルデザインなども自分たちで考えます

このプロジェクトの地域

滋賀県

愛荘町

人口 2.14万人

Yurikoが紹介する愛荘町ってこんなところ!

愛荘町役場が紹介する愛荘町ってこんなところ! 平成18年に2つの町が合併してできた現在の愛荘町は、今年で21年目を迎えます。琵琶湖に流れる川の上流・湖東地域に位置しており、鈴鹿山系からの豊かな清水と自然に恵まれ、古くから水との関わりが深いまちとして発展してきました。

町の東側には、聖武天皇の勅願で行基が開山した湖東三山の一つである金剛輪寺があります。昔から四季折々の雰囲気を楽しめるスポットとして地元の方々をはじめ多くの人に愛され続けている場所です。また、近世には中山道66番目の宿場として愛知川宿が栄え、後の明治には郡役所や警察などの官公署が置かれ、近江鉄道が開通するなど、古くから地方の中心としても栄えてきました。

国の伝統的工芸品に指定されている「近江上布」を中心とした麻織物や、瓶のなかにてまりが入った不思議で美しい滋賀県の伝統的工芸品「愛知川びん細工手まり」など、愛荘町でしか見られない手仕事ならではの「ワザ」が光る工芸品を見られるのも特徴です。

▼愛荘町移住ポータルサイトはこちら https://www.town.aisho.shiga.jp/iju/

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