地域に愛されている中華レスト🍜67歳オーナーの想いとは?【高知県】

 高知県安芸市に、時の流れをゆっくりと刻んできたような一軒の店がある。扉を開けると、そこに広がるのは昭和レトロな趣の店内。赤い椅子や落ち着いた照明、そして店内に並ぶ品々が、まるで昔ながらの喫茶店に迷い込んだかのように思える。  店名は「禮印房」で、「れいんぼう」と読ませる。内装や名前からは、昔ながらの喫茶店のようだが、実はここ、知る人ぞ知る街中華の人気店で、自ら「中華レストラン」を名乗っている。

 「40年ほど前から、街中華がメインで営業しています。ちょっと変わった名前なんですが、理由があるんですよ」  オーナーの谷岡一規さん(67)が説明する。  父が「レインボー」という店名の喫茶店を営んでいた。谷岡さんは、飲食店を継ぐ目的で、中華料理を中心に県内外で武者修行、26歳の時に帰ってきた。その際に、喫茶店と街中華を合わせた店を、スタートさせることになり、店名を「禮印房」に改め、今の店舗を新築オープンさせたそうだ。

 ここで味わえるのは気取らない街中華の味だ。店内の一角には料理のサンプルが並ぶ棚があり、ガラス越しに眺める色とりどりの料理たちは、昭和の食堂文化を今に伝える小さな展示物のようにも見える。  メニューを開くと、食欲を刺激する料理の数々が並んでいる。どの品も気取らず、どこか安心感のある佇まい。そして、運ばれてくる料理をひと口味わえば、華やかな流行の味とは違う、昔から愛されてきた街中華ならではの温かさが広がる。

 「そんなに特別なことはしていませんよ。ただ、地元の人たちの口に合うように、試行錯誤を重ねて続けてきました。それが今のメニューと味に繋がっています」

 料理の味付け、食べ応えのある量、そして何より「また来たい」と思わせる親しみやすさ。それは、谷岡さんが長い年月をかけて作り上げてきたこの店だけが持つ魅力なのだろう。  店内を見渡すと、地元の人が気軽に食事を楽しむ姿がある。家族で訪れる人、仕事の合間に立ち寄る人、昔から通い続けている人。それぞれの時間が、この小さな中華レストランの中で静かに交差している。

 地域の人々の憩いの場にもなっている「禮印房」だが、谷岡さんも年齢が67歳となり、後継者のことを考える時期になった。親族に後を継ぐ候補がいないことから、後継者候補を全国から募ることに決めたという。  「どんな方に継いでもらってもいい。店の味やメニューを引き継ぎたければ、伴走支援もしますよ」  手際よく中華鍋を振りながら、谷岡さんが微笑んだ。  禮印房は、単に料理を味わう場所ではない。昭和の面影を残す空間と、変わらぬボリューム感あふれる料理を通じて、安芸の街の日常を感じられる場所だ。料理の味だけではなく、人の記憶に残る街中華。この温もりの空間を次代に繋げる後継者が現れることを地域の人々が望んでいる。

オーナー 谷岡さん夫妻へのインタビュー

———— 料理人になったのはいつから?  父が喫茶店を経営していたので、その道に進もうと考えて、県内外の飲食店で修業しました。中華料理を中心に様々な料理を経験し、26歳の時に、父と共に今の店を始めたんです。父の喫茶店メニューと私の中華メニューが融合した店が今の禮印房のスタートです。それから40年以上経ちましたね。

———— 地元に合うように料理の味付けには苦労されたのでは?  本格的な中華料理を提供しても、それが人々の口に合わなければ何にもならない。いかに、皆が喜ぶ味を出せるか。それをずっと考え続けています。そんなに研究熱心だとは自分では思ってませんけどね(笑)。人気なのは、エビ天や麻婆豆腐ですかね。セットメニューもよく出ます。麻婆豆腐はかなり辛めですが、辛党には人気ですよ。

———— 一人で作っているとお聞きしましたが?  料理は一人で作っています。だから、込み合う時間帯にはお待たせするケースも多々あります。手は抜きたくないですから、どうしても後に入って来たお客さんへの提供が遅れたりするんですよね。常連の方々は分かってくれてますが…。

———— どんな人に継いでもらいたいですか?  意欲のある方なら誰でもOKです。後継者が希望すれば、屋号やメニューを引き継いでもらって構いません。味を引き継ぐのは時間がかかりますが、その間は一緒に働くなどして、伴走支援しますよ。まだ暫くは中華鍋を振れますからね。

地域を守る「継業」という選択肢

「地元のためにお店を続けたいが後継者がいない」 「高齢になってしまって事業継続が難しい」

地域の生活を支えてきた中小企業や商店では、こういった理由から、事業縮小や廃業を余儀なくされるケースが後を絶ちません。

一方で、働き方が多様化する今、県外からのUターン者や移住者が過疎地域に住まい、ゼロから起業をするより圧倒的にコストが抑えられる、”なりわい”を活かした「事業承継」や「継業」といった働き方に注目が集まっています。店舗そのものや機材設備などの初期費用一式を抑えられるほか、一定の顧客や販路、技術までもそのまま引き継げるとして、地方暮らしを目指す方々にとって新たな選択肢となっています。

こちらの事業承継も、そういった地域を支える取り組みのひとつなんです。

高知県には、次の世代の担い手を待つ地域がたくさん!

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