学校と地域が繋がる取り組み 〜地域と共に学び社会的・職業的自立を目指す愛知高等養護学校〜

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公開日:2025/03/28 01:22

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愛荘町役場のすぐ近くにある特別支援学校「滋賀県立愛知高等養護学校」には、日常生活での行動や自主通学ができる15歳から18歳の知的障がいのある生徒が通学しています。生徒自身が就労に向けて具体的な目標を持ち社会的・職業的自立を目指すためには、地域の方々との繋がりや実践的な学びも重要と考え、実践的なカリキュラムを含めて積極的な教育課程が設けられています。

地域と学校の関わり方や、高等養護学校をもっと身近に知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

地域との密接な交流で生徒の学習意欲を刺激したい

平成25年の4月に開校した「滋賀県立愛知高等養護学校」は、県内にある4校の高等養護学校の1つで、平成 30 年度の入学生からは教育課程が普通科から“しごと総合科”に変わり、複数の専門教科を中心に授業が行われています。 学校の中に留まらず、積極的に地域とのつながりを考えている、愛知高等養護学校の教職員の方からお話を伺いました。

▼生徒たちの“人としての成長を育む”教育活動を行っていきたい

Q.まずは学校の特色を教えてください。

小川先生:保護者の方々をはじめ、スクールサポーターとして地域の皆様や教職員が協働し、生徒たちが地域社会と関わり体験しながら社会性を身につけていけるような「地域共学」を大切に考えています。 本校の生徒全員が公共交通機関や自転車などを利用して自主通学していますし、校舎が滋賀県立愛知高等学校(以下、愛知高校)の敷地内に併設されていることも特色のひとつです。愛知高校と本校の両校生徒は、共通の校歌や制服で体育祭・文化祭や部活動なども一緒に行っていることもあり、障がいの有無にかかわらず互いを認め合い共に学び合える環境の中で、一緒に地元地域との「地域共学」を柱にした教育を目指しています。在学中から地域や地元企業と連携することで、生徒たちが卒業後に社会的・職業的自立をできるように、「働きたい」という夢を叶えて欲しいという思いがあります。

Q.学ぶ教科によって地域との関わり方が変わりますか?

小川先生:愛知高等養護学校に在学中の3年間では、国語、数学といった一般科目に加え、5つの専門教科“農業、農園芸、食品加工、テキスタイル、流通・サービス”があります。流通・サービスは3年間を通して職業的な基礎スキルを学びます。1年生では全員が農業を履修し、2年生から農園芸、食品加工、テキスタイルを選択制で学ぶことができます。 農業、農園芸では、季節の草花苗や野菜の栽培を行い、花の苗や野菜を地域の方に向けて販売する機会もあります。食品加工は本校ならではのコースで、主にパン作りをします。学校の敷地内にパン工房を設けているので、生徒たちがスタッフとなり自分たちの作ったパンが並ぶ販売会を定期的に実施して、地域の方々との交流を深められる貴重な場でもあります。 また、テキスタイルでは年間を通して社会人講師を招き、織りの技術を実地に指導してもらいながら製品を作りあげて、学年度末には成果物展を行っています。

短時間で完売する、愛あい工房で作成したパン。
短時間で完売する、愛あい工房で作成したパン。
テキスタイルを学んだ生徒の手織り作品は、毎年3月に一般公開されます。
テキスタイルを学んだ生徒の手織り作品は、毎年3月に一般公開されます。

学校を開放して、地域の方を招いたフェスタを開催!

授業の中から生まれた自らの成果物を、販売会という形で地域とつながる手段にした学びの場は、人と人との繋がりをより大切にする滋賀県立愛知高等養護学校ならではの取り組みともいえます。そんな中、令和6(2024)年11月には「あいあいフェスタ2024」が開催されました。フェスタの開催に至った経緯や、地域との繋がりの先にある展望を伺いました。

▼地域とともに作り上げる行事になれば、単純作業感がなくなり、生徒たちのよい刺激になる

Q. 「あいあいフェスタ2024」の企画は、どのようにして生まれたのでしょうか?

薄井先生: 令和5(2023)年度の創立10周年記念という節目を迎えて「販売会×地域共学」をより意識して、地域社会への参加と貢献をテーマに「あいあいフェスタ」の開催を企画しました。 これまでも販売会を行ってきたので、日常的に関わってくださっている地域の方との距離は必然的に近くなっていますが、学校と縁のない方や地域の姿がまだまだあることを知って、学校と地域が一緒に何か出来る可能性を感じ、まずはもっと学校を知ってもらおうと考えました。そこで、「あいあいフェスタ2024」は、地元の小学生から大人まで、来場者の皆さんに飲食しながら楽しんで学校の取り組みを知ってもらえるように、企画の趣旨に共感してくれた地域の事業所さんを迎えて、各種の参加体験講座(ワークショップ)も用意しました。

Q. 地域の方や、生徒の皆さんからはどんな反応がありましたか?

薄井先生:通常の販売会よりも多くの方に足を運んでいただけたことに加え、生徒たち自身も他の事業所さんや地域で活躍しておられる方を近くで見ることができ、とても刺激を得ていたと思います。地域の方からの質問に、自分自身の言葉で説明をする生徒の姿はとても生き生きしていました。親子連れで地元の子どもたちもたくさん来てくれていたので、愛知高等養護学校が地元にある学校ということを知ってもらえる機会になっていたら嬉しいです。 今後も生徒たちの将来のために、さまざまな「地域共学」を行っていきたいですね。

小川先生:白菜や大根、伝統の大藪蕪など季節の採れたて野菜の販売や里芋の収穫ワークショップの他に、地域おこし協力隊の生姜プロジェクトの活動を通して愛荘町が昔生姜の産地だった歴史があることを知り、本校でも大生姜の栽培に取り組みました。 収穫量は少なかったものの、地域おこし協力隊の磯部さんへジンジャーシロップの材料として提供し、当日会場に生姜湯の試飲ブースを設けて参加者の方に楽しんでいただきました。 本校だからこそできる取り組みを続けることで、「愛荘町の学校」として町全域に「地域共学」を繋げていきたいと感じています。

学校から地域に向けて開けた場所を生み出すことで、地域との関わり方の可能性を広げる取り組みを続ける「地域共学」の形を紹介しました。 地域と学校の関り方の可能性について興味を持った方は、ぜひ「興味ある」ボタンを押してくださいね。質問も受け付けていますので、お気軽にご連絡ください!

最後までご覧いただきありがとうございました。次回の投稿までは、これまでに紹介した愛荘町の他の記事をご覧になってお待ちください!

創立 10 周年記念事業として開催された、あいあいフェスタ 。
創立 10 周年記念事業として開催された、あいあいフェスタ 。
専門教科「農業」 の地元との連携授業。
専門教科「農業」 の地元との連携授業。

このプロジェクトの地域

滋賀県

愛荘町

人口 2.14万人

愛荘町

愛荘町役場が紹介する愛荘町ってこんなところ!

愛荘町役場が紹介する愛荘町ってこんなところ! 平成18年に2つの町が合併してできた現在の愛荘町は、今年で19年目を迎えます。琵琶湖に流れる川の上流・湖東地域に位置しており、鈴鹿山系からの豊かな清水と自然に恵まれ、古くから水との関わりが深いまちとして発展してきました。

町の東側には、聖武天皇の勅願で行基が開山した湖東三山の一つである金剛輪寺があります。昔から四季折々の雰囲気を楽しめるスポットとして地元の方々をはじめ多くの人に愛され続けている場所です。また、近世には中山道66番目の宿場として愛知川宿が栄え、後の明治には郡役所や警察などの官公署が置かれ、近江鉄道が開通するなど、古くから地方の中心としても栄えてきました。

国の伝統的工芸品に指定されている「近江上布」を中心とした麻織物や、瓶のなかにてまりが入った不思議で美しい滋賀県の伝統的工芸品「愛知川びん細工手まり」など、愛荘町でしか見られない手仕事ならではの「ワザ」が光る工芸品を見られるのも特徴です。

このプロジェクトの作成者

プロフィール画像

愛荘町は2町が合併して今年で19年目を迎えます。琵琶湖までは車で約25分。軟水の湧き出る水の美味しい町です。

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