人材不足から始まったデジタル活用が、高付加価値・業務内容拡大の大きな力に

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公開日:2025/11/10 00:14

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チャレンジ石垣島から徒歩1分。観光客に人気の平良商店の隣にあるのが、浄化槽110番を運営しているパラダイスアメニティです。

石垣市、竹富町では、公共下水道が敷設されているのは一部のみで、そのほかの地域は浄化槽(汚水や排水を沈殿や微生物の働きにより分解・浄化し、きれいにして放流するための設備)を使用した汚水処理が基本となっています。 有限会社パラダイスアメニティ(以下、パラダイスアメニティ)はその点検・清掃などを担い、八重山の美しい海と環境を守っている企業。 様々なIT・デジタルツールを導入して効率化を図っており、車両運行管理システム導入からデータの蓄積・分析・活用にも挑戦しています。 その結果、移動ルートの最適化を行い、約30%という大きな生産性向上を成し遂げています。

当初デジタル化やデータ活用のきっかけは、現在多くの企業が直面しているある課題に対処するためでした。そこから、いま沖縄本島への進出を目指すまでに業務改革ができて、業績が伸びています。

※本記事はチャレンジ石垣島が、地域産業で働く魅力を発信・理解促進を目的に取材・公開情報をもとに作成しました。

急がば回れ!浄化槽点検の現場がシステムになった道のり

株式会社パラダイスアメニティは、「浄化槽110番」として、沖縄の生活に不可欠なインフラ(浄化槽)の保守点検・清掃を担っています。

現場は、長年にわたり「紙の点検記録」「手書きの報告書」「事務所に戻ってからの再入力」が当たり前の、アナログな世界でした。 特に浄化槽点検は、正確な記録が行政への報告義務と直結するため、「デジタル化」はミスが増えるリスクの方が大きいのではないか、という強い抵抗感が現場にありました。

しかし、業務量の増加とスタッフの負担増を背景にデジタル化を「いきなり進めず、急がず、無理せず、少しづつ」進める、現場に寄り添った「優しいデジタルシフト」を試みました。

◎ステップ1:二度手間を解消する「身近なフォーム」の魔法

現場スタッフが最も負担に感じていたのが、「二度手間」でした。炎天下や雨の中で紙に手書きで点検記録を記入し、事務所に戻ってから、それをパソコンで報告書フォーマットに再入力するという作業です。 私たちは、このストレス源にピンポイントで対処しました。

道具はタブレットとフォームアプリ:高価な専用システムではなく、市販のタブレットと、誰でも簡単に扱えるフォーム作成サービスを使いました。 紙の見た目を再現:従来の紙の点検リストの項目を、そのままフォーム上に再現。複雑な機能は一切使わず、現場でタブレットに直接入力するだけで、データが自動でクラウドに集約されるようにしました。

この導入により、現場での入力作業は残るものの、事務所での再入力作業が劇的にゼロになりました。スタッフは「タブレットに変わっただけで、報告書作成の時間がこんなに短縮されるなんて」と、初めてデジタル化のメリットを実感し始めました。

◎ステップ2:「電話」を減らし「安心感」を生む可視化

次に「少しづつ」進めたのは、情報伝達の効率化です。

課題:各担当の点検スケジュールや進捗状況が分からず、事務所と現場スタッフとの間で「今どこにいる?」「あの顧客の点検は終わった?」といった電話での確認が頻発していました。

「無理せず」の解決:ステップ1で集約されたフォームのデータを、Googleスプレッドシートに流し込み、「誰でも見られる」状態にしました。

このシートを見るだけで、事務所のスタッフは誰がどの顧客の点検を終えたか、リアルタイムで把握できるように。結果、確認の電話は激減し、現場スタッフは「自分の状況が把握されている安心感」と「作業への集中」を得ることができました。デジタル化は、コミュニケーションの質も向上させたのです。

◎ステップ3:現場の熱意がシステム導入の背中を押す

既存ツールでの成功体験が積み重なるにつれ、組織内には「もっと便利にできるはず」という熱意が生まれました。この現場の「もっとこうしたい」という声こそが、高機能なシステム導入へと進む最終的な動機となりました。

現場からの声:「フォームのデータを行政提出用の報告書フォーマットに自動で流し込みたい」「顧客の過去履歴を一瞬で呼び出したい」

この切実なニーズに応え、浄化槽点検業務に特化したクラウド管理システムを導入しました。しかし、いきなりシステムを押し付けたわけではありません。すでに「タブレット入力」や「クラウドでの情報共有」に慣れていたため、新しいシステムへの移行はスムーズに進みました。

段階的なアプローチを経たからこそ、私たちはデジタル化を「現場の敵」ではなく、「地域のインフラを守り、仕事を楽にするための相棒」と捉える意識へと変えることができました。

代表の西里さん
代表の西里さん
パッケージシステム使用からオリジナルのシステム開発へ
パッケージシステム使用からオリジナルのシステム開発へ

イレギュラーな業務はデジタル、90%の定期業務はアナログ管理

パラダイスアメニティは、最終的に「すべてをデジタル化する」という道を選びませんでした。それは、現場スタッフの「慣れ」と「安心感」を最も大切にした結果です。

特に浄化槽点検の業務は、毎月のルーティン点検(全業務の約90%)と、年に数回発生する清掃手配や故障対応といったイレギュラーな業務に分けられます。

私たちは、思い切って「90%の定期業務は、あえてアナログ管理を残す」というハイブリッド戦略を採用しました。

◎ステップ4:あえて残した「紙」の安心感と効率

私たちは、毎日のルーティン点検の現場で、あえて紙のチェックリストを残しました。 「慣れ」を優先した安心感: 現場スタッフは長年の経験から、紙のリストのどこに何が書いてあるかを体が覚えています。無理にデジタルに切り替えるよりも、使い慣れた紙を使う方が点検のスピードと正確性が保てるという判断です。

屋外作業の現実: 炎天下や雨天の屋外作業において、タブレットよりも紙の方が耐久性があり、バッテリー切れの心配もありません。

しかし、以前と違うのは、この紙の記録を「最重要データ」とはしなかったことです。この紙は、あくまで現場での「メモ・記録」として活用し、顧客データや報告書は、デジタル化を担う次のステップへと引き継がれました。

つまり、「現場の作業を邪魔しない紙」を残すことで、90%の定期業務の効率と正確性を維持したのです。

◎ステップ5:イレギュラーな業務をデジタルで救済する

一方で、私たちは残りの10%の「イレギュラーな業務」にこそ、デジタルの力を集中させました。 イレギュラー業務とは、「いつ、誰が、何をすべきか」がすぐに分からなくなる業務です。 清掃・修理手配: 顧客からの「ポンプが動かない」「清掃期限が近い」という問い合わせに対し、手配記録や業者とのやり取り、写真などを一元管理する必要があります。

緊急時の対応記録: 突発的なトラブル対応の際には、時系列で記録を残し、後で全スタッフが経緯を確認できるようにする必要があります。

これらに対応するため、私たちは、既存のチャットツールやクラウドフォルダに加え、「顧客ごとのタイムライン」を作成できるシンプルなプロジェクト管理ツールを導入しました。

故障の問い合わせが入ったら、すぐに専用のデジタルタイムラインを作成。**「担当者」「対応期限」「業者とのチャット履歴」「現場写真」**をすべてそこに集約しました。

この結果、「イレギュラー業務の属人化」を解消することができました。誰かが休んでいても、タイムラインを見るだけで、他のスタッフがすぐに状況を引き継ぎ、適切に対応できるようになりました。

★まとめ:ハイブリッド戦略がもたらした「持続可能な現場」

「イレギュラーな業務はデジタル、90%の定期業務はアナログ管理」というハイブリッド戦略は、私たちの現場に大きな変化をもたらしました。 アナログ管理を活かしたことで、ベテランスタッフの長年の経験と作業の安定性を損なうことがありませんでした。同時に、デジタルを集中させたことで、トラブル対応のスピードと正確性が劇的に向上し、経験が浅いスタッフでも安心してイレギュラー業務を担えるようになりました。

デジタル化は、組織を急進的に変えることだけが正解ではありません。現場の特性を理解し、「紙の方が効率的」な部分は紙を残す勇気と、「デジタルでないと対応できない」部分に集中投資する戦略こそが、沖縄の現場を支え、持続可能な働き方を実現する鍵だと確信しています。

タスク管理ツールTrelloとGoogleフォームを連携
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業務は月ごとにシフトを組み、ホワイトボードとマグネットで掲示する
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島の当たり前を守る誇り。大浜さんが語る、石垣島での地域貢献

◎はじめに:都会の華やかさよりも、「島の安心」を創る仕事

株式会社パラダイスアメニティ 石垣島店で働く大浜さんの仕事は、一見すると地味かもしれません。それは、家庭や事業所から出た生活排水を処理する「浄化槽」の保守点検・清掃を担うことです。しかし、この仕事こそが、石垣島の美しい自然環境と、私たちが日々享受する「当たり前の生活」を支える、究極の地域貢献だと大浜さんは語ります。

大浜さんのやりがいの根底にあるのは、島のインフラを支えているという誇りと、お客様との信頼関係を築く温かい交流です。

★やりがいその1:誰かの役に立っている実感 =「島の命綱」を守る誇り 大浜さんが感じる最も大きなやりがいは、「島のインフラを自分の手で守っている」という強い使命感です。

石垣島のような離島において、浄化槽が適切に機能することは、環境保護と公衆衛生に直結する「島の命綱」です。 点検作業は、ただのルーティンワークではありません。それは、島の美しい海や自然に汚れた水が流れ出さないよう、日夜、水質をチェックし、機械を整備するという「水質のエキスパート」としての役割です。

「観光の華やかな仕事ではないけれど、私たちがいなければ、島全体が立ち行かなくなる。この使命感があるからこそ、困難な現場でも最後までやり遂げる力になるんです。」

この「島の当たり前」を支えるという確かな役割は、都会で感じるような「自分がやってもやらなくても変わらない」という無力感とは無縁です。自分の働きが、ダイレクトに島の安心・安全につながっているという確かな実感こそが、大浜さんの原動力となっています。

★やりがいその2:お客様との信頼が生む「ありがとう」 大浜さんの仕事は、常に地域住民の方々とのコミュニケーションが伴います。浄化槽点検は、お客様の敷地内に入る必要があり、生活に密着したサービスだからこそ、技術力と同じくらい「人柄」と「信頼」が求められます。

大浜さんは、「誠実・丁寧な対応」を心がけることで、お客様との間に深い信頼関係を築いています。

点検の際に、浄化槽の状態や水質の結果を分かりやすく説明する。 お客様からの質問や不安に、真摯に耳を傾ける。 小さなトラブルでも迅速に対応し、安心を届ける。

こうした一つ一つの丁寧な対応が、お客様からの「あなたに任せてよかった」「いつもありがとうね」という感謝の言葉となって返ってきます。地域に根差した仕事だからこそ得られる、人の温もりを感じるやりがいだと言えるでしょう。

★やりがいその3:知識と技術が身につく「自己成長の喜び」 大浜さんの仕事は、決して簡単なものではありません。浄化槽の構造、水質検査の知識、機械の整備技術、さらには排水詰まりなどのトラブル対応スキルまで、多岐にわたる専門知識が必要です。

大浜さんは、この仕事を通じて、「普段の生活に役立つスキルや知識」を身につけていくことに喜びを感じています。会社は、有資格者(浄化槽管理士)による確かな点検を掲げており、大浜さん自身も、日々業務を通じて専門性を磨いています。

★まとめ:「石垣島の日常」を支える仕事の温かさ 大浜さんが石垣島で感じるやりがいは、「島の自然と水を守るという大きな使命」と、「お客様との温かい交流」、そして「プロフェッショナルとしての自己成長」という三つの要素で成り立っています。

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車両のメンテナンス作業
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このプロジェクトの地域

沖縄県

石垣市

人口 4.76万人

石垣市

チャレンジ石垣島が紹介する石垣市ってこんなところ!

♦︎石垣島ってどんなところ? 沖縄県八重山諸島の主島である石垣島は、東京から約2,000km、飛行機で約3時間半の亜熱帯の楽園です。島全体が美しいサンゴ礁に囲まれ、透明度抜群の海には色鮮やかな熱帯魚やマンタが泳ぐ世界有数のダイビングスポット。 夜空は「星空保護区」に認定され、光害の少ない島だからこそ見られる満天の星空は、都会では味わえない感動をもたらします。グルメも充実!「石垣牛」は濃厚な味わいで人気を集め、新鮮な魚介類や南国フルーツも豊富です。 そして何より、この島の宝物は「人」。温かく、のんびりとした島の人々の人情は、訪れる人の心を包み込みます。「イチャリバチョーデー(一度会ったら兄弟)」という言葉のように、初めて会った人とも家族のように接する文化が今も息づいています。

このプロジェクトの作成者

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コンセプトは、「島から、世界を面白く」 〜石垣島のコラボ&発信拠点〜

チャレンジ石垣島は、世界で働く人たちを受け入れるワーケーション施設であり、イベントスペースを設けた石垣島最大規模のテレワーク施設です。 島内外の地域や世代を超えた人々がつながって、島の魅力や新しい価値観に触れながら様々なプロジェクトにチャレンジできる、まさに沖縄のチャンプルー文化を体現する石垣島の発信拠点。 人と、島と、地域につながる日本最南端のイベント&コワーキングスペースです。

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