「え、ここまで私がやっていいの?」島の診療所で広がった看護師の仕事。和歌山から小笠原へ

東京から船で24時間。小笠原諸島の父島。

夕方5時を過ぎると、仕事を終えて海へ夕日を見に行く人がいる。夜には散歩に出かけ、流星群でもないのに流れ星に出会うこともあります。

自然とともにある島の日常の一方で、医療には、離島だからこその難しさもあります。 そんな父島の医療現場で、看護師として働いているのが坂本莉緒さんです。

地元・和歌山県でずっと看護師として働くなか、「この先どうやって生きていこう?」とふと立ち止まり、たどり着いたのが小笠原でした。

「看護師」とひとことで言っても、できることや働き方はたくさんある——。父島で働き始めてから、そう気づいたといいます。

制約のある環境だからこそ経験できた仕事もあれば、「内地だったらもっと早く診てもらえるのに」とジレンマを感じる瞬間も。

小笠原に来て5年目。坂本さんに、島で働く看護師の仕事と暮らし、そしてここに来て変わったことを聞きました。

「え、ここまで私がやっていいの?」島で広がった看護師の仕事

新卒から地元・和歌山県の総合病院で6年ほど働き、その後クリニックに1年ほど勤めていました。看護学校も就職先もすべて県内で、一度も和歌山を離れて暮らしたことがなかったんです。

そんな私が、クリニックで働いていた頃、「これから自分の人生をどうしていこうかな」とふと立ち止まる瞬間がありました。当時は独身だったこともあり、「一度すべてから離れてみたい」という思いが湧き上がってきて……。

どうせ行くなら、電車や飛行機ですぐには帰れない場所がいい。そこで思い浮かんだのが、以前から一度行ってみたいと思っていた小笠原でした。

役場のウェブサイトを見ると、ちょうど看護師を募集していて、「今かもしれない」とドキドキしながら履歴書を送りました。

2022年6月、初めての小笠原の父島へ。あの時の直感を信じて飛び込んで、気づけば今年で5年目を迎えます。

私の普段の日中の仕事は外来で、子どもから高齢者までさまざまな患者さんを診ています。 二交代制のシフトで夜勤もあり、夜間や休日にも救急の連絡が入れば、基本的には医師1人、看護師1人で対応します。

夜勤の際には診療所の救急対応だけでなく、島内の高齢者介護施設「太陽の郷」の介護スタッフさんと連携して、利用者さんのサポートに入ることもあります。

業務の内容については、内地とのギャップに最初はかなり緊張しました。父島の診療所には日中に検査技師さんや薬剤師さんがいますが、夜間や休日には、自分たちで担う仕事の範囲が広がります。

内地の総合病院では「検体を届ける」「薬局にお願いする」「レントゲンをお願いする」という形で専門職と連携して仕事を進めるのが普通ですが、小笠原では自分もその工程の一部を担う側になります。

採血の検査結果を自分で回したり、お薬の調剤を自分で行って医師とダブルチェックしたりと、内地の総合病院では看護師がやらないことにも、医師と協力しながらやっていかないといけないんです。「え、ここまで私がやっていいの?」と最初はドキドキの連続でした。

でも、実際に自分でやってみることで「今まで薬局で『お薬一包化お願いします』と簡単にお願いしてたけど、薬を一包化するのってこんなに大変なんだ」「検査技師さんたちは検査結果を出すのにこんなに手間がかかっていたんだ」と身に沁みて理解できるようになりました。他の職種の方への感謝が深まりましたし、医療全体が以前よりも見えるようになりました。

私自身、島に来て初めて経験した仕事もたくさんありました。今働いているスタッフも、それぞれ性格も経歴も違っていて、「こういう人じゃないと向いていない」という決まった型があるわけではないと思います。

もちろん、分からないことや困ることもあります。でも、そんなときは周りのスタッフに相談できます。内地との違いも含めて、「まあ、なんとかなるよね」「大丈夫だよね」くらいに、少し楽観的に捉えられる人の方が、ここでは働きやすいのかもしれません。

島で働いていると、患者さんとの距離の近さを感じることもあります。普段スポーツサークルで一緒に過ごしている友人や近所の人が患者さんとして来院されることも多く、知り合いが来ると、声かけに行くタイミングとかはちょっと迷ったりもするんですけど……。 患者さんから「あなたがいてくれて安心した」と言ってもらえたときは、この島で看護師として働くことの意義を感じます。

父島 中央山からの風景
父島 中央山からの風景
小笠原村診療所
小笠原村診療所

「どんな働き方もできる」島に来て広がった、看護師としての視野

「看護師」と聞くと忙しいイメージを持たれがちですが、毎日遅くまで働いているわけではありません。

日勤は17時15分まで。患者さんの状況によって18時、19時頃になることもありますが、早い日は17時半には家に着きます。所属しているバレーボールサークルの練習がある日は、一度家に帰ってご飯を食べて、19時半から練習へ……なんてこともあります。

休みの日は、家でのんびりしたり近くのカフェに行ったりすることが多いです。

私はインドア派で、海に入ったりすることはほぼないんですけど、それでもやっぱり小笠原の海のきれいさや自然の美しさには癒されます。父島に来て初めて「星空ってこんなにきれいなんや」と気づいて感動しましたね。流星群に関係なく流れ星が見られるし、天の川が肉眼できれいに見えることにも驚きました。

島での人間関係は、職場や趣味のスポーツを通じて自然に広がっていきました。

特に、近所の人や仕事関係でつながった人のコミュニティの存在には本当に助けられています。買い物しそびれたときに「あそこでXXが売ってるよ」「18時になったらXXが入荷するよ」と教えてもらったり、海が好きな人から「今イルカが見れるよ」と連絡が来たり。とにかく島のいろんな情報が届くんです(笑)

どこに行っても知り合いに会うので、何度も会うことで少しずつ距離が縮まり自然と仲良くなることも。お気に入りのカフェでよく会うことから顔馴染みになって、今では夫婦ぐるみでお付き合いするようになった友達もいます。

島に来てみて、「看護師っていろんな働き方ができるんだな」と視野が広がりました。看護師って、病院で働くイメージがすごく強いじゃないですか。でも島に来てから、派遣の看護師さんと出会ったり、いろんな働き方をする人を見て、どこでどんな働き方をしてもいいんだなと思えるようになりました。

小笠原には、いい意味で「なんとかなる」と考える人も多い気がします。内地にいた頃より、私自身も物事を前向きに、たくましく捉えられるようになりました。

私があとどのくらい小笠原にいるかはわかりません。この先、内地に戻ることがあっても、看護師を続けながら、自分に合った働き方を選ぶことができるんじゃないかなと思います。

母島 南崎の風景
母島 南崎の風景
母島の診療所へ行くことも
母島の診療所へ行くことも

募集要項

※募集者 / 主催者に連絡を取りたい場合、まずは「応募したい」ボタンを押してメッセージを送ってください。

就業場所
小笠原村診療所(東京都小笠原村父島清瀬)、母島診療所(東京都小笠原村母島元地)、有料老人ホーム「太陽の郷」(東京都小笠原村父島清瀬)
業務内容

(小笠原村診療所の例) ◾️診察のサポートから予防接種まで、頼れる村の外来 診療所での外来対応がメインの仕事です。問診やバイタルチェック、処置室での対応はもちろん、小児の定期予防接種や高齢者の健康相談まで、全世代の患者さんと向き合います。

◾️夜間・休日の救急対応とオンコール 二交代制のシフトで、夜間や休日の救急受診にも対応します。万が一の搬送や緊急時には、医師とタッグを組んで島民の命を守る砦となります。

◾️検査や調剤にも幅広く対応 夜間や休日など専門の技師さんがいない時間帯は、採血の検査機器を動かしたり、お薬の調剤や一包化を医師とダブルチェックで行ったりします。

◾️地域のチームで支える医療 特別養護老人ホーム「太陽の郷」の介護スタッフや、訪問看護、保健師とも連携し、島全体のケアを支えます。

必須経験やスキル

◾️正看護師資格

救急や夜間に対応する場面があるため、一通りの看護技術や判断力があると安心です。

あれば歓迎する経験やスキル

◾️「専門外のことも学んでみよう」と前向きに楽しめる 小児科や外来の経験がなくても大丈夫! 決めつけずに「やってみよう」と大らかに吸収できる柔軟さがあれば、しっかり成長できます。

◾️人と話すのが好きで、温かい距離感を大切にできる 患者さん=ご近所さんでもある島暮らし。人とのつながりに喜びを感じられる方にぴったりです。

給与

◾️月給254,700円〜 新卒初任給(短大2卒) ◾️月給263,400円〜 (短大3卒)

※初任給決定の際は、新卒初任給に、経験年数に応じた加算がされます 年間賞与 4.65月分 その他手当あります(地域手当10%、扶養手当、時間外勤務手当、夜勤手当 等) ※条例改正により、金額等は変わることがあります

雇用形態・勤務時間

<雇用形態> 正職員

<勤務時間>※勤務地により異なります 【小笠原村診療所】 ・1週間当たり38時間45分の交代制勤務 ・休日は4週間当たり8日

(勤務シフト例) 日勤 8:00〜17:15 夜勤 16:30〜翌日9:00 休日に交代制でオンコール当番があります(手当有)

【母島診療所】 ・8:00〜17:15(休憩:12:00〜13:30) ・土曜、日曜、祝日は休みとなりますが、交代制でオンコール当番があります(手当有)

【有料老人ホーム】 ・8:00〜17:15(休憩:12:00〜13:30) ・土曜、日曜、祝日は休み

◎昼休みは1.5時間と長く、一度帰宅して昼食を取るのが島のスタンダードです。 ◎年に1〜2回の長期休暇を順に回していて、内地休暇で2〜3週間のお休みを取るのが普通です。

募集者 / 主催者
小笠原村役場 総務課 / Bricoleuse合同会社
募集者 / 主催者の
住所
東京都小笠原村父島字西町
募集者 / 主催者の
連絡先
ishida0720@gmail.com(Bricoleuse合同会社)
その他

【宿泊費無料】5泊6日 小笠原暮らし・仕事体験ツアーを11月に開催します!

小笠原で働く人や暮らす人と出会い、島での仕事や暮らしを具体的にイメージするための少人数・選考制のツアーです。

ぜひ、坂本さんや島の方に会いにいきませんか? 詳細はこちら→https://smout.jp/plans/31392

移住体験ツアーに参加ご希望の方は「応募したい」ボタンを押してください。

小笠原村役場 総務課 / Bricoleuse合同会社

このプロジェクトの地域

東京都

小笠原村

人口 0.28万人

小笠原村

小笠原移住定住窓口が紹介する小笠原村ってこんなところ!

東京から南へ約1,000km。小笠原諸島は、東京都に属しながら空港がなく、東京・竹芝桟橋から定期船で約24時間かけてたどり着く島です。

父島に約2,000人、母島に約400人が暮らし、行政や観光、農業、漁業、医療、教育など、多様な仕事が島の暮らしを支えています。2011年には世界自然遺産に登録され、一度も大陸と陸続きになったことのない「海洋島」ならではの豊かな自然が残されています。

小笠原での暮らしは、都会のような便利さがあるわけではありません。船の運航に合わせて買い物をしたり、人との助け合いの中で生活したりと、島ならではの工夫があります。その一方で、休日には海へ出かけたり、夕日を眺めたり、満天の星空を見上げたりと、自然がすぐそばにある暮らしを日常として楽しむことができます。

また、小笠原にはさまざまな地域や国にルーツを持つ人々が暮らしてきた歴史があり、現在も本土からの移住者や転勤者など、多様な人が地域を支えています。外から来た人を受け入れる風土が根づいていることも、この島の大きな魅力の一つです。

このページでは、小笠原で暮らし、働く人たちのストーリーや仕事、島での日常を通して、「暮らす場所」としての小笠原の魅力をお届けしていきます。

このプロジェクトの作成者

プロフィール画像

小笠原村の移住・定住窓口です。 小笠原村は、東京から南へ約1,000kmの太平洋上に位置し、現在は父島に約2,000人、母島に約500人が暮らしています。

一度も大陸と陸続きになったことがない海洋島で、独自の生態系と多くの固有種・希少種が育まれてきました。その豊かな自然が評価され、2011年には世界自然遺産に登録されています。

ボニンブルーと呼ばれる海にはイルカやクジラが暮らし、年間を通して比較的温暖な気候も特徴です。

また、さまざまなルーツを持つ人々がともに暮らしてきた歴史があり、現在も本土から移り住んだ人が多く暮らしています。

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