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移住は人生のスタートライン〜やっとホワイトボードが埋まった〜 滋賀大学生の移住者レポート(3)
「移住はファーストライフ」そう語るのは、大阪府出身の北野純哉さんです。今回私たちは、北野さんに自宅の古民家でインタビュー取材を行いました。囲炉裏や薪などがあり、どこか懐かしい雰囲気です。自然と気持ちが落ち着くような場所でした。北野さんは学生時代からの夢を叶えるために長浜市西浅井町に、2022 年 3 月に単身で移住し、同年 9 月からは家族との移住生活を始めました。北野さんの夢と、なぜこの地で叶えようと考えたのか、その経緯を紹介したい。
北野さんの夢はペンションを開くことです。学生時代から二十数年間の行動原理は、この夢を叶えるためだと語っています。ペンションを開きたいと考えたきっかけは、何だったのだろうか。北野さんは学生時代に住み込みでペンションに滞在していました。その時までは、やりたいことは特に無かったそうで、ペンションのオーナーと就職について話していた時に、「とても楽しそうに働いている。サービス業に就職してみたら。」と勧められました。このペンションでの体験が転機となり、ペンションをやりたいという夢を抱き始めます。大学卒業後はゼミの教授からの勧めで、海洋施設の施工会社に就職。それでも北野さんのサービス業やペンションへの興味は尽きず、その会社を辞めて、オーストラリアにあるホテルの専門学校に通ったそう。専門学校卒業後は帰国し、少しの間東京のフレンチで働き、その後の十年間で二つのホテルで働きました。そして前職の和食の飲食会社に転職し、海外で八年間仕事をしたそうです。
北野さんは、働いている時に日本の文化や食が受け継がれなくなっていることに、問題意識を感じたので、昔ながらの体験を伝えたいと思うようになりました。その問題意識と大学時代からの夢を組み合わせて、民宿を開くことを決意。そのため昔ながらの古民家や稲作・畑が残っている場所を探しました。「畑、田んぼ、子供の学校が近い場所、宿をした時に周りに迷惑をかけない開放的な場所の家という条件から、この古民家を選んだ。」と北野さん。実際、西浅井には畑や古民家がたくさんあり、田舎のおばあちゃんの所へ遊びに行った感覚だったそう。空気はとても澄んでおり風景も鮮やかで美しく、不思議と心と頭が軽くなり、空、畑、色づいた山と様々な色が混ざっているが、とても調和が取れていたそうです。懐かしさと癒しを与えてくれる素敵な地域です。
民宿で継承したいもの
民宿に込めたい想いは何ですかという質問に対して、「年配の人には、なつかしさを感じて欲しい。若い人には、こんな生活もあったことを伝えたい。年配の人に自分の知らないことを教えてもらいつつ、若い人に引き継げるようにしたい。」と、の未来像を語ってくれました。私たちにも、昔の暮らしの道具を紹介してもらいました。自在鉤(じざいかぎ)という道具。これは囲炉裏の火と鍋の間の高さを、自在に調節できるからそう呼ばれているそうです。私は、この道具を使ったことがないし、今生きている大半の若い人もそう。どうやって鍋や急須を支えているのか、気になって調べてみました。竹の支柱の中から出ているフック状の鉤が上下するようです。ただ、これだけだと鉤は、重力により落ちてしまう。そうならないように、魚をかたどった横木が登場する。この横木により、てこと摩擦の原理がはたらき鉤は落下しない。
昔の暮らしで使われたものは、生きるための知恵が、詰まっているように感じられます。北野さんは、このような薄れゆく日本の伝統を継承していきたいと、語ってくれました。
道具の説明をする北野さん
人生における移住の位置付け
北野さんの人生にとって今回の移住はどのような位置付けですか、という質問を投げかけました。するとこのような熱い想いを語ってくれました。「スタートラインです。セカンドライフではなく、ファーストライフ。いままではペンションがやりたいというゴールだけが見えていたが、やり方はわからなかった。ホワイトボードにスタート地点とゴール地点だけが書かれているようだった。その間は空白だったので、二十数年でやっと埋まった。今までの転職や仕事もすべてこのためだった。」
この話を聞いて私は、北野さんの経歴に納得しました。インタビューの冒頭で経歴を聞いた時は、どうして飲食・サービス業に絞って、何回も転職しているのかと不思議に感じていました。全ては大学時代からの夢を、叶えるためだったのでしょう。
北野さんの二十数年間情熱を絶やさずに、夢を追い続ける姿勢に私は感動しました。こんなに長期間真っ直ぐに、努力できる人は中々いないように思えました。人生設計が壮大でブレがなく、時間投入が圧倒的で、夢を叶えるための移住という、新たなケースに出会えたことは、インタビュー調査として有意義でした。北野さんの民宿が完成したら是非とも遊びにいきたいです。
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