（篠田）大津市のマンションで料理教室を開いてたんですが、それがコロナで難しくなって。それで、密を避けた環境で新しいことやろうと。

そうして巡り会った甲賀の集落に第一印象で“ひとめぼれ”されたそうです。

（篠田）豊かな自然に魅了されました。とにかく、水も空気もおいしいですし、地域の人たちもとても温かくて外から来た私の暮らしをいつも気にかけてくださいます。

地場産の素材を使ったトマトソースやジャムなどを次々と商品化している、篠田さん。東草野地域内外の人たちと交流しながら“料理のプロ”として新しい事業を生み出されています。

人が住まなくなった集落内の古民家を改修して、いつでも人が住める状態にして移住者を受け入れしているのが、長年、　地域づくり活動家としてさまざまなアクションを起こしてきた法雲俊邑さん。
じつは法雲さん、甲賀集落にあるお寺「観行寺」のご住職。みずから空き家を買い取ってリノベーションするなど、まさに粉骨砕身、人生をかけて「地域をなんとかしよう」と活動されています。

（法雲）いきなり移住を決めていただける人はなかなか現れませんので、イベントなどを開催することで、“関係人口づくり”を推進してきました。

前出の篠田さんも、この関係人口づくりイベントに料理研究家ならではのスキルをいかして協力しておられます。炭焼きピザの体験試食会も、そのひとつ。炭は、この地域伝承の黒炭。ピザは、伊吹山の特産である薬草や山菜が味のアクセントに使われてます。

（法雲）特に黒炭は、この地域を象徴するもので、我々は炭焼保存会も立ち上げてその文化継承に力を注いできました。炭焼き、夏場は暑くて重労働ですがね。

火力が強いこの黒炭は、古くは近隣の長浜市国友で鉄砲鋳造に使われていたそうです。法雲さんたちメンバーは珍しい二口窯も復元。三日三晩、寝ずの番をして炭を焼くイベントも開催して炭焼き文化を次代に継承しています。
https://smout.jp/plans/8217

他にも、みんなで山歩きをしながら盆栽にしたい植物を採取して、炭と組み合わせて持ち帰る“炭盆栽”のイベントや、山野の蔓（つる）を使って篭編み体験をするイベントなど、ひとつひとつの規模は小さいが継続的に開催することで着実に関係人口を増やし、移住者受入へとつなげてこられました。そう、小さな炭の火種から大きな炎が生まれるように。

（法雲）「ここで暮らしたい、と思っていただける方を一人でも増やしたいと思って活動を続けています。でないと、過疎化して集落がその伝統や文化とともに消滅してしまう。その危機感を共有できる仲間たちと懸命に、そして楽しく移住者受け入れにつながることを続けてます。

美しい里山の景観が日本遺産にも選ばれている、東草野地域。その“美しさ”は風景だけではなく、なんとか人口減少を食い止めようとがんばっている人たちの郷土愛の“美しさ”でもあると感じました。みなさん、伊吹山を見かけたらその山麓に、未来をあきらめない小さな集落があることを思い出してくださいね。

この記事を読んで少しでもご興味を持たれたみなさま是非、法雲さんの活動に参加してみてください。
経過レポートにて、参加できるイベント情報を発信していく予定です。