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- もしも、人生の答えが『えらぶブルー』にあるとしたら ~第一章・学生編~
都会の極々ありふれた中流家庭で育った、極々ありふれた一人の壮年が
人生の岐路に立たされたとき
一筋の光に導かれて、聞いたこともない離島に辿り着きました。
普通に学校を卒業して、普通に就職をして、普通に家庭を持って、普通に年を取っていく。
普通が当たり前だと思っていたけれど、
挫折をしたり、辛酸を舐めたりしたとき、ときどき思うことがあります。
「あれ?」
「普通ってなんだろう?」
「幸せな人生ってなんだろう?」
学生時代、国語の授業で習った小説に、こんな一節がありました。
「人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短い」
これは、「何事をも為そうとしてなかった」一人の壮年が、「何事かを為す」ために行動し、
少年のころには想像もしなかった、
未知の離島『沖永良部島』で暮らし始めるまでの経緯のお話です。
大人になんてなりたくなかったあの頃
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「当機は間もなく着陸態勢に入ります。えらぶゆりの島空港の天候は晴れ、気温は・・・」
大きめのスーツケース1つとリュックサックを持った壮年は、
もう秋にもかかわらず陽炎ゆらめく滑走路を歩いて、到着ゲートをくぐりました。
都心の在来線の駅よりも圧倒的に小さい空港の玄関口を抜けると、
ぱっと見年齢不詳で声のでかい、今日から壮年の直属の上司になる人が迎えてくれました。
「やっと会えたね!はじめまして、ジョーです!」
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小学生の頃の夢は、『プロサッカー選手』とか、『パイロット』とか、そこら辺によくいる少年でした。
地元じゃそれなりに博学才穎、中学校の定期テストでは、悪くて学年3位とか。
特にこれといった野心もなく、とりあえず地元でも有数の進学校へ進みました。
高校時代の3年間は、長い学生生活の中でも一番楽しかった記憶しかありません。
男子校で、文武両道、勉強も行事も部活も、一丸となって全力で取り組む環境でした。
6歳からサッカーばかりしていた青年は、もちろんサッカー部に入・・・かと思いきや、
体験入部で「なんか違う」と入部をやめてしまいます。
男子校という環境では、中学校までの、吹奏楽部や女子テニス部からの黄色く熱い視線は皆無です。
そうして、「絶対モテそう」というなんとも薄っぺらい思考で軽音楽に興味を持ち始めます。
当時といえば、カラオケでGLAYやRADWIMPSでも歌っときゃ、女子高生にもてはやされたでしょう。
今思えば、男しかいない環境に放り込まれて数日で、性欲の猿にでも憑りつかれていたんだと思います。
そんな感じで、適当でもそれなりに青春を謳歌していた青年が、初めて挫折を味わうのは、高校3年の終わりのことです。
初めて降り立った、潮風香る沖永良部島の空港。
何者にでもなれたあの頃。
傲りと、色恋と、挫折と、
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「もともとワーホリで海外にいて、コロナもあって帰国したほうがいいと思ったんだけど、
どうせ暮らすなら自然豊かな離島が良いなって。」
「あと、東京でバリバリ働くことに疲れちゃったってのもあって・・・」
壮年よりも一足早く移住した一組のカップルに、沖永良部島に来たきっかけの話を聞きながら連れてこられた先には、
絵に描いたようなプライベートビーチが広がっていました。
白い砂浜のところどころには、岩礁がせり出して木陰ができていて、
足元をよく見ると、小さなヤドカリたちが壮年の足も気にせずのんびり歩いています。
「ここから歩いてエントリーしよう!」
ジョーのでかい声と共に、シュノーケルをつけた壮年は、限りなく透明な海の世界へ落ちていきました。
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高校3年の春頃から、大学受験に向けて本格的に予備校に通い始めましたが、一つ懸念がありました。
それまで2年間も、男しかいない環境で思春期の完成を遂げた青年が、
セーラー服を着た女子高生を間近に見て、正気でいられるわけがないじゃないですか。
授業をサボって非常階段でカップ麺をすすりながら、
通り過ぎる女子たちを勝手に品定めする体たらくは、黒歴史の一つといっても過言ではありません。
そしてとうとう受験勉強も山場を越えた秋の夜長、同じ予備校に通う女子生徒と交際を開始するのでした。
若気の至りとはよく言ったもので、
共通テスト(当時はセンター試験)直前に交際なんて始める高校生の末路は想像に容易いでしょう。
大学入試も交際も大失敗に終わった高校の卒業式の後、
友人たちと撮ったプリクラに映る自分の顔は、羞恥心まみれの情けない表情でした。
当時の青年に浪人する気力なんて微塵もなく、それでもなんとか引っかかった志望校でもない大学へ進学するのでした。
残暑の厳しい秋の午後。透き通る海の中は、少し冷たかった。
全盛期も、黒歴史も、すべて詰まった高校時代。
人生なんて、なんだかんだ良い方向に進んでいくものだと思っていた
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「帰りたいときに帰れるように代行予約しときな。島は終電なんて概念ないんだから。」
沖永良部島の職場の仲間たちと訪れた居酒屋は、想像以上に活気がありました。
島の特産品である『キクラゲ』の天ぷらは、
中国産の乾燥キクラゲしか目にしたことがなかった壮年の概念を覆す巨大さと美味さでした。
「俺は東南アジアでたくさんのパトカーに囲まれたが気合で乗り切った。」
「自動車なんか今まで何台つぶしたかわかんねーよ。」
8人掛けの座敷のど真ん中で、満面の笑顔で語るジョーは、本当に年齢がわからなくなるほど生き生きとしていました。
彼が巷で『クレイジー・ジョー』と呼ばれていることを知るのは、もう少し後の話です。
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大学入試に失敗はしたものの、青年は入ったら入ったでぼちぼちキャンパスライフを楽しんでいました。
複数のサークルに所属し、うち1つのサークルでは副部長も務めるほど馴染んでいましたが、
その頃から、心のどこかで自分の将来について悲観的に捉えるようになっていました。
「大手企業に就職して出世ルートに乗りたかったけど、今から頑張ったってこの学歴じゃどうせダメだ。」
「受験失敗したけど、こうして浪人せず大学通えてるし、就活もなんとかなるっしょ。」
成人式では、ギャル男感満載のブリーチ髪で同窓会の幹事をしたり、
予備校時代に交際していた女子生徒と久々に再会してドキドキしたのも、今では良い思い出です。
あっという間に4年間が過ぎたころ、卒業単位ギリギリで留年を回避した青年は、
とりあえず適当に応募して内定が出た『Webマーケティング会社』に就職するのでした。
そしてここから、学生時代に「何事をも為そうとしてなかった」青年に、社会の厳しさと理不尽さが押し寄せてくるのです。
もしも、人生の答えが『えらぶブルー』にあるとしたら ~第二章・新卒編~ へ続く
島の職場の仲間たちは、壮年が想像もしない経験の持ち主ばかりでした。
この頃は、まさか自分が社会に叩きのめされるなんて思ってもみなかった。
~第二章・新卒編~を公開しました
第二章が公開されました。
なんとなく学生時代を謳歌し終わった青年は、社会の洗礼を受けて疲弊していきます。
都会からなぜ島へたどり着いたのか、少しでも興味が湧いた方は、お気軽にご質問お待ちしております。
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年間平均気温は22度。とても温暖な気候で、名産の"えらぶゆり"、ソリダゴなどの花卉栽培や、黒糖、じゃがいも、きくらげなどの生産が盛んです。
島の地下には大小様々な洞窟、鍾乳洞が200以上存在しており、「花と鍾乳洞の島」と呼ばれています。
島にいれば、どこからでもほぼ10分以内に海へアクセスできます。自然のままの真っ白なビーチは、人っ気がなくいつでも独占状態。水辺ではヤドカリがあちこちで顔を出し、一度海へ潜れば、当たり前のようにウミガメと一緒に泳ぐことができます。本当ですよ!
そんな自然たっぷりの島ですが、飛行機と船は共に毎日複数便は寄港し、大型スーパーや総合病院もあるので、生活には全く不便しません。
島民性は、「おっとり」「根気強い」「シャイ」などと言われますが、とてもお話好きなので、島の中心街では挨拶やおしゃべりの声が至る所で響いています。
また昨今では、ビーチのゴミ拾いや洗剤の計り売りなど、SDGsを見据えた取り組みも島の各地で始まっています。
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都心からほど近い、埼玉のベッドタウン育ち。
都内でIT系企業に勤めていたが、直感で島移住。
現在は鹿児島県大島郡「沖永良部島」にて、島のあらゆる産業の人材不足や課題を払拭すべく、「えらぶ島づくり事業協同組合」の職員としてマイペースに生活中。
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