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定年後、築約95年の古民家に移住【移住者インタビュー】
多賀町敏満寺(びんまんじ)集落に移住して来られた久保宏昭さんと久保円(まどか)さん。
築年数不詳ですが、95年は経っている家に住み始めてもうすぐ2年になるそうです。
以前から、イベントなどで何度か出会って、「移住したばかりで、地域のことを知りたくてイベントに来たんです。」とお話しされていたのが印象的でした。
また、昨年4月に、「多賀あさひや」で開催された、久保円(まどか)さんと久保文音(あやね)さん母娘の「染織/きもの&絵画/日本画二人展」でのことでした。
関東に住む文音さんが、「実家が多賀町になったんです!」と楽しそうに話しておられて、まったく知らない土地が実家になるのは、どんな感覚なのだろうかと、想像してしまいました。
娘さんの新たな実家となる敏満寺集落に住むことになった理由を伺いたくて、今回インタビューのお願いをしました。
T(龍見):早速ですが、この集落に来られたきっかけを教えていただけますか?
久保宏昭さん:どういう町で、どういうところか全く知らずに、偶然、多賀町に住むことになったんです
久保円さん:知っているのは、多賀大社と美味しいコーヒー豆屋さんがあることだけだったんです(笑)。
ほんの数分、ちょっと出かけて楽しめるが日常に
T:お二人は、県外のご出身なのですね。
久保円さん:共通して、父親が転勤族で、全国いろんなところを転々と移住してきました。
家族が、先に、不動産屋さんの仲介で近江八幡市から敏満寺地区に2020年に越して来ました。家族の手伝いに多賀町に通っているうちに、ご近所さんとのご縁で、今住んでいる古民家を紹介いただき譲っていただきました。
久保宏昭さん:自然が豊かで、ちょっと車に乗れば奥山にすぐに行けて、旅行気分が味わえるのが多賀町の素敵なところ。
ミツマタ群生地には、図書館に本を返しに行ったついでに寄りました。ほんの数分で四季折々絶景の別世界に行けます。
久保円さん:大瀧神社大蛇ヶ淵周辺も好きで、遊歩道にベンチがいくつかあって、コーヒー豆を挽いて外でモーニングをする贅沢な時間を日常で過ごしています。
T:わかります!!私もお弁当を持って奥山ランチはよくします(笑)。
久保宏昭さん:近所を散策したら、至る所に歴史が日常にあって。
この町の歴史が古いのは、来てから知りました。
久保円さん:今住んでいる小字は「茶売小路(ちゃぶりしょうじ)」と、全く普通に読めない地名で、何か意味がありそうで奥深くて面白く、地名からも昔を想像して楽しめます(笑)。
久保宏昭さん:それぞれのお家の庭先にお地蔵さんがあるのは、日本中どこにも無い光景で、しかも祀られているお地蔵さんは16世紀などの古いもの。
古いものが日常に当たり前にあるのを、見て歩くだけでも楽しいし素晴らしく、驚きますよね。
T:お地蔵さん文化は、私もびっくりしました。一家に一体もしくは数体お地蔵さんを祀る文化は多賀町ならではですよね。ほんの数分でピクニックの贅沢時間も楽しめて、歴史があふれるところですよね。
ここ数年で有名になったミツマタ群生地は絶景。
各家の庭先にお地蔵さんが祀られているのは、日本中ここだけ?
移住者を受け入れる世代交代の過渡期がまもなくやってくる
久保宏昭さん:住んでから分かったことですが、敏満寺集落は、古いまちで、空き家は多くあるのに、物件が頻繁に出ないところでした。
都会とは違って、年間通して奉仕作業などが多く、集落の行事がうまく受け入れられるかが、移住したあとの大きなカギになると思います。
T:なんとなく、分かります。
私も以前、京都のベッドタウンに住んでいて、その後、奈良の昔ながらの行事が多く受け継がれている集落に、村入りして住みました。
希薄から一気に濃密な環境に。
行事の歴史やいわれを知ることが新鮮だったので、身が引き締まる思いで参加した記憶があります。
久保円さん:積極的に地域の方々の仲間に参加できるので、ご近所の方とも親しくしていただき、都市の生活では考えられないような、人情を感じることができ、私たちは偶然ではありましたが良いところに住むことができてよかったです。
久保宏昭さん:今は仕事を退職したので行事に参加できます。
若い世代は、家を構えるものの、仕事があると、どうしても周りの人と交流する機会が少なくなると思います。子どもの成長と共に、子ども会に入ることが地域と関わる入り口になっているのではないでしょうか。
久保宏昭さん:時間のある世代ですと、地域の方と触れ合う機会も多く、わりと快適に過ごせると思います。
そういう世代がまずは入ってきて、次に若い世代が入って来られる体制づくりが出来てくるのが良いのかなあと思います。
T:親世代移住者から子世代移住者へ
久保宏昭さん:徐々に若い世代が増えてくると、多様性を持った生活が増し、移住もしやすい環境になるのではないかと思います。
帰省してきたお孫さんのお供え、小石が並ぶお地蔵さん。
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久保さんご夫妻と共感した、多賀大社御神木「杉坂峠の三本杉」を紹介します。
多賀町栗栖(くるす)地区の杉坂峠にある多賀大社御神木「三本杉」の地は、伊邪那岐命が降臨したと伝えられています。この土地に降り立ち、杉坂峠を下って芹川の上流栗栖(くるす)の里に鎮まられました。道中、村人に柏の葉に盛られた粟飯を出され、たいそう喜んで召し上がられたそうです。その時に地面にさされたお箸がやがて芽吹き、三本杉になったと伝えられています。
8月3日の多賀大社万灯祭では、御神木の地で御神火祭が行われ、神火を熾します。神火はふもとの調宮(とどのみや)神社の神事で祀られます。その後、多賀大社に神火を運び神事ののち、午後7時提灯に点灯されます。
久保さんは4月初めに行かれたそうです。山が雲の中に入っていた日で、霧が出ていて幻想的で思わず御神木に触れてしまったそうです(写真)。
50歳代くらいまでの地元の人は、遠足で歩いて行ったそうですが、今は地元の人でもなかなか行けないところです。絶壁の細い山道は車の対向が出来ず、雨が降ると落石で大変危険なところで、車で行くのはおススメできません。標高590m、調宮神社から片道徒歩約1時間半。携帯電話が繋がらない場所がほとんどで、ヤマビル・マダニ対策必須です。
香川県東かがわ市生まれ
高校卒業後、県外の大学に進学
大学卒業後、東京で就職。
転職後、京都市内に住む。
結婚して、京都府木津川市に住む。
その後、天理市、奈良市に住み、
現在パートナーの実家がある滋賀県多賀町に住んで16年になります。
多賀町の自然の美しさに感動し、草花の種類の豊富さに驚き、越して来たころは植物図鑑片手に植物の名前を調べ歩きました。
2014年頃より、多賀町の民俗聞き取り調査に参加。
主に食文化について調査しています。
2019年、多賀町中央公民館オープン時に、地元の郷土料理を展示してふるまうイベントを主催。
2019年4月より、「多賀の食べるをつなぐ」をコンセプトにYOBISHIプロジェクトがはじまりました。
現在YOBISHIプロジェクトの代表をしています。
YOBISHIよびしとは、多賀町の方言で親戚やご近所さんを呼んで行事の時などにおもてなしをすること。
多賀町に伝わる郷土料理の聞き取り調査をして、レシピ化する活動をしています。聞き取った内容は、noteに綴り公開。また、動画撮影をしてYouTubeで少しずつ公開しています。
イベント情報はYOBISHIのInstagramアカウントで発信中。
年数回イベントに合わせて、町内全戸に「よびし通信」を発行。
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