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賑わいを失った商店街にあの日のトキメキを。高齢者の願いを形にしたいあるテニス屋さんの思い。
現在、日本の高齢化率(※総人口に占める65歳以上人口の割合)は、2022年9月現在で29.1%。2位のイタリアを5%引き離し、世界一の高齢化大国となっています。
現状のまま推移すると、2065年には38.4%に達すると言われていますが、
県別にみるとより深刻で、約20年後の2045年には全国47都道府県のうち40%に当たる19県で、40%を超える見込みです。
萩市の現状も高齢化率44%と、未来を先行く自治体の一つになっています。
少子高齢化は、社会保障制度や財政の問題、生産年齢人口の減少、経済の低迷、貯蓄率や国民一人一人の豊かさが低下するなど、社会に様々な影響を与えます。
この問題の解決策として、とかく若い世代の移住者を増やしたり、出生率を上げたりといったことに目が向きがちですが、
急激に上がると考える方がむしろ不自然ですよね。我々に打つ手はもう、ないのでしょうか…。
実は、あります。
それは意外にも「お年寄りの健康促進」にあったのです。
今回のインタビューは、都会から萩市に移住し、コロナ禍の2021年にテニスショップをオープンした柴田圭さんです。
お店の場所は、古くから萩城下のメインストリートとして栄えた通りにある「田町商店街」。
アーケードを掛けたのが今から50年以上前で、
少子高齢化の波と共にだんだんと人の気配が少なくなり、今では閑散としてしまっている商店街です。
柴田さんは地元の高齢者たちから話を聞くうちに、ここであるイベントを開催しようと考えました。
“月に一度は #ブラタマチ”
再び萩の人の心に活気が溢れるよう奮闘する、テニス屋さんの思いを聞きました。
萩市ローカルエディターの三枝英恵がお伝えします。
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柴田圭さん
1981年生まれ、名古屋市出身。
三種の神器の1つ「草薙剣」が御神体の、有名な熱田神宮の目の前で育ったという柴田さん。
パンが大好きで、将来はパン屋さんになりたいと思うような素朴な少年でした。
テニスは中学時代から始め、大学卒業後は全国でスポーツクラブや健康づくり支援などを展開する企業に就職。実業団の選手としても活躍され、全国大会で準優勝した経験を持つ実力の持ち主です。そちらで15年ほどお勤めされた後、2020年9月に退職されました。
2020年11月に家族で萩市にIターン移住し、翌年1月には田町商店街に「48K shop」をオープン。テニススクールとスポーツショップを経営しながら地域の子供たちの成長と、高齢者の健康をサポートしています。
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“萩の主役”は高齢者。これからもっと主役になっていく10年後の日本に渡せるものを作りたい
三枝「どうして地方に移住されようと思ったんですか?」
柴田さん
「前職は仕事柄、転勤や不規則な時間帯で仕事をすることが多かったんですね。36歳で結婚して子供が産まれて、ライフサイクルを考えた時に、もっと家族といる時間を大切にしたいというか、自分が一緒にいたかっただけなんです」
三枝「萩を選ばれた理由は?」
柴田さん
「前職では自治体向けに健康産業を届ける仕事をしていて、萩を含む高齢化の進んだ地域でヒアリングをする中で、自分でもできるんじゃないかと思うところがあって。
妻の実家がある萩もぶっちぎりの高齢化先進国で課題も明確だったので、もしここで何か実現できたら、これが一つのロールモデルとなって10年後の日本に渡せるものができると考えて、萩市ビジネスプランコンテスト2020にエントリーさせて頂きました。それが萩に至る経緯ですね」
三枝「柴田さんのプラン『テニスで健康増進&教育充実化プロジェクト~より豊かな萩暮らしを実現するために~』は見事、新規創業者部門で優秀賞を受賞されたわけですが、萩ではテニスを通じてどのようなことができるのでしょうか」
柴田さん
「テニスは、運動できる体を維持できるだけでなく、介護なしに日常生活できる年齢を10歳伸ばせるという科学的根拠があります。少子高齢化、娯楽の少なさといった課題を抱える地方の自治体でテニスを普及させることができれば、アクティブな高齢者が増えて街は盛り上がります。そして健康寿命が延びれば、介護医療費も抑えられます」
三枝「なるほど。それで、田町商店街を出店先として選ばれたのはなぜですか?」
柴田さん
「初めはお店を構えるつもりはなかったんですが、萩に来た時に昔はこういう商店街だったよ、というお話をいろんな方から聞いて、現状を憂う高齢者の方も多くて。
街の中心にあって萩の核ともいえるこの場所に、外から来た移住者が突っ込んで行った方が本気度も見せられるし、萩の主役とされる高齢者の方々の声もいっぱい聞けるかなと思ったので、あえてここでやってみようって」
三枝「今、“萩の主役”っておっしゃいましたね!」
柴田さん
「もちろんですよ。だって44%いるんですもの。もっと増えるわけですから。今後日本の主役にもなっていくわけで。だからぼくは、まだまだイキイキと頑張ってもらいたいなぁと思ってて。
古い人の考えは…っていうのもわかるんですけど、萩らしさを残したまま紡いできてくれた方たちだと思うので、そこはやっぱり大切にすべきなんじゃあないかなぁと思って、田町に入りました」
三枝「さぁ、そんな柴田さんは移住半年で“ブラタマチ”を始められたわけですけれども、きっかけは何だったのでしょうか」
柴田さん
「ある日、商店街の昔の写真を持って来てくれた方がいたんんです。
『えぇ!? こんなに人がいたんですか?』
『あなたね、ここから向かいのお店へ行くのも大変だったのよ。ここに百貨店があってね、映画館があってね…』
って話してくれてるその表情がやっぱり素敵で。
一瞬でもいいからあの時を思い出してもらえるような場面を、たまにでも作ることができたらいいかなって思って。それって年に1回のお祭りではなくて、やっぱり日常に近いものじゃないと意味がないって思って。
ただ、僕らがが毎日ここに人を溢れさせるのは到底無理ですし、月に1回でも最後の日曜日に田町に行ったらそれなりに人がいて、お店もちょっと珍しいものが出てて、『あの時みたいだね』って懐かしんで話してくれたりとかしてくれればいいなっていうのがきっかけです」
三枝「それでどうしたんですか?」
柴田さん
「とりああえず萩ぜんぶ棚卸ししようって、調べたら400軒ちょっとしかなくて。そこに電話と直アポかけたんです。するとOKとか話聞きたいって言ってくれたところが40軒あったんですよ。10%ってめちゃくちゃ高いコンバージョンで、スタッフ全員で大盛り上がりで。だから、その10%の方々をまず大切にしようねって。
そこでやり続けていったら残り360軒や、さらにその後に続く人たちへと、繋がりでちょっとずつ広がっていっていくかなと思うんです」
三枝「宣伝はどうされたんですか?」
柴田さん
「高齢者の方のホットスポットを求めて、市内いくつかの大きなスーパーの前でDH(ダイレクト・ハンディング)をしました。チラシを渡したら『田町で何するの?』 『あなたたち、誰?』みたいな話になって。
皆さんSNSとかやってなくて、やっぱり直接お話できればつながりを作るきっかけにもなるし、僕たちのことを知ってもらえるチャンスにもなりましたね」
左から柴田圭さん、店員の中村さん、江尻さん。テニスを愛し、いっしょに街を盛り上げる3人の仲間。
いつもはシャッターで閉まっているお店の前も、#ブラタマチ では出店者と来場者のコミュニケーションの場に。
自分のやりたいことではなく、地域に必要とされるものを形にすることが仕事になる。
三枝「初めの客入りはどうでしたか?」
柴田さん
「もしかすると、初回が一番多かったんじゃないかな。特に高齢者の方と子供が多かったのが嬉しかったですね。
声をかけてくれた方も結構いらっしゃいました。『ありがとね』『あなたたちがやったんでっしょ?』って」
三枝「ところで“48K”って何て読むんでしょうか」
柴田さん
「シバケイです。実はそう聞いてもらえたら、僕の勝ちです。それで会話が生まれて自己紹介のきっかけを頂けるので」
三枝「48Kの意味は、柴田さんのお名前と、24金なんてありますけど…」
柴田さん
「そうです!萩の方にもっと輝いて欲しいと思って。皆さん24金ぐらい輝いてるんですけど、その2倍くらいという願いを込めて48Kにしています」
三枝「自分が輝くんじゃなくって、萩の人に輝いてほしいんですね」
柴田さん
「そうです。僕ら激安で48K・Tシャツ売ってるんですけど、地域の方が運動着や作業着として買ってくれてるんですよ。それを着てると、“あ、自分いま輝いてるのかな”って思えるように」
三枝「48Kさん、何の会社なんでしたっけ…?」
柴田さん
「テニス屋です(笑)。“あぁ、テニス屋さんがまた何かやってるね”って面白がって頂けると、テニス自体に興味を持ってくれる人が増えるようになるし、“この人たちに言ったら何か形にしてくれる”って思ってもらえれば」
三枝「#ブラタマチ は、今ある商店街はそのままに、通りに机を出してお店をする感じ。自由にやっていいっていう場なんですよね」
柴田さん
「はい。“あ、こんなんでいいんだ”って思ってもらったら、チャレンジする方もどんどん増えると思うので、ほとんどルールはありません。僕らも朝、机を出してダンボールで手書きの看板作って、皆さんの受入れをして終わりです」
三枝「ダンボールの看板は、トレードマークになりつつありますね」
柴田さん
「そう!もうオープンから使いまくりですね。僕らは #ブラタマチ をビジネスとは考えていなくて、あえてビジネス的な要素があるとしたら、つながりが生まれたりするということ。
萩の事業者様がこれをきっかけに何か掴んでもらって、何かにトライしたりだとか、悩んでる事業者様同士でつながって、チャレンジやセーフティーネットになる場面作りだと思ってるんですね」
三枝「いろんなこと考えるテニス屋さんなんですね」
柴田さん
「はい、テニス屋です。あと、萩にいろいろ持ってきます。今、大阪大学大学院医学系研究科のスポーツ医学教室とつながりがあって、TOKYO2020の代表チームが競技で使っていた心拍数や活動量がわかるセンサー付きのウエアがあるんですよ。それを一般社会に実装するために、萩モデルを作れないか検討しているところなんです。
例えば、山間部で孤独に生活している高齢者でも、そのウエアを着てもらえばデータ解析で見守りをして、いざという時には高レベルの医療を萩で受けられるという構図も作れます。そんなふうに健康をサポートできたら、萩って高齢者にとってめちゃくちゃ過ごしやすい町になると思うんですね」
三枝「山間部に住んでいても見守りができるというのは、離れて暮らすご家族にとっては心強いですね」
柴田さん
「そうなんです。萩には高齢者向けの進んだサービスがもうあるよ、ってなれば、デメリットの部分もメリットになることだってあると思うんですよ。僕が持ってるつながりや知識、人で、何かサポートできる部分があったら、どんどん萩に還元できたらと思ってます」
三枝「いちお父さんとしてはどうですか?」
柴田さん
「子供にはやりたいことをさせてあげたいので、スネかじらせられるぐらいは稼がないとなと感じています。
それと、萩から出ることの少ない地域の子供たちに、テニスを通じてもっと外の世界を見せてあげたいと思ってるんですよね。これは大人の責任でもあるし、役割だと思っています」
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いかがでしたか。柴田さんの生き方って、素敵だと思いませんか?
自分の得意なことが人を笑顔にしたり、地域を活性化させたりすることができて、それでつながりができて、仕事になる。
そしてそれは、明るい未来にもつながっていく。
移住先での自分の居場所の作り方、暮らし方として、そんな可能性を示してくださいました。
もっと柴田さんのお話を聞きたいと思った方は ぜひ #ブラタマチ にお越しください。
背伸びしない、借り物でもない、そこにいる人たちだけで作る、令和の新しい息吹を感じることができる筈ですよ。
コロナで中止になっちゃった時は“カキタマチ”。コロナが明けたらどんなことを実現したいかを書いてもらいました
48K shopの前ではミニ四駆で「ブラタマチカップ」も開催!盛り上がります!!
#ブラタマチ に出店してみたい人募集!!
毎月1回開催されている #ブラタマチは、BtoB、BtoCの関係を築くのに最適な場です。
「自分の商品や作品を見てほしい」
「新しいお客さんを増やしたい」
「いつもお店に閉じこもっているので、ふれあいの機会が少ない」
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当日は出店者のプロフィールが張り出されます。#ブラタマチ で「あなた自身」をアピールしましょう!
飲食・雑貨・パフォーマンスなど様々な方が出店しています
所要時間:毎月最後の日曜日 11:00〜15:00
費用:出店手数料500円(税込)
集合場所:萩・田町商店街(ジョイフルたまち)48K shop
解散場所:萩・田町商店街(ジョイフルたまち)
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こんにちは!萩市ローカルエディターの三枝です。萩・明倫学舎4号館「はぎポルト」から、地域で輝く人や楽しいイベントなどを紹介しています。わたし自身も東京からの移住者ですので、これからも移住者としての視点も大切にしながら、皆さんのお役に立てる情報をお伝えして行きたいと思っています。
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