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大津市北部の暮らしを紹介します vol.2 農的生活の営み~暮らしを耕す~(その2)
今回は10年前に大津市北部の北比良に移住し、農的生活をされている加藤夫妻の大輔さんと真帆さんに、SMOUTライター三輪(以下 三輪)がお話を聞きました。大輔さんは京都府、真帆さんは大津市和邇出身で、10年前に北比良に移住されました。現在はお子様2人を含め4人で生活されています。
加藤夫妻は除草剤や殺虫剤などを用いない環境にやさしい農業をされています。また、稲作を通年で体験することのできる「田んぼのがっこう」や子どもたちが自然の中で学ぶことのできる「ひら森のがっこう」を運営されています。また、味噌や醤油づくり体験など消費者の方々が農業に触れるきっかけや技術を習得するための場もつくっています。
湖西に移住したきっかけや経緯、取り組まれている農業について、そして湖西の自然環境を生かした子育てについて伺いました。
自給自足の体験学習を提供〜自給自足の営みで伝えたいこと(田んぼのがっこう)〜
―――三輪:ご夫婦で、「田んぼのがっこう」や「ひら森のがっこう」、醤油、味噌づくり体験などさまざまな体験の場を子どもたちや地域の方々に提供されていますが、そのようなことをやろうと思ったきっかけを教えてください。
大輔さん:農的生活を続ける中で、僕の周りにもお米作りをやりたいなっていう声がちらほら聞こえてきたこともあって。じゃあ、僕が借りている農地を使って、みんなで学びながらやろうかというのが、「田んぼのがっこう」の始まりです。
自給自足の生活をしている中で、僕たちがやっていることは、農業に触れる機会が少ない人にとっては当たり前のことではなくて。僕たちような農業のスタイルを取り入れた体験="農的生活"をやりたい人が僕の周りにいる。じゃあワークショップでやってみようかって。
野菜の場合だと貸し農園とかがわりとあるんですが、お米作りをやりたいってなると、田んぼを借りるハードルが高い。田んぼの水路は地域のみんなで、管理するっていう考え方があって。だから、町の人がちょっと来てやりたいって言っても、こちらの都合だけでは貸してもらえなかったりとか。通年っていうのはなかなか難しいんです。
「田んぼのがっこう」の場は僕としては、体験で終わらず、ゆくゆくは自分でお米を自給できる技術を身に着けてもらいたいっていう思いでやってます。完全な自給自足じゃなくても家族の分を作ったりとか。
「田んぼのがっこう」の活動を通して、多くの人に少しずつ自給できる比重を増やしていってもらえたらなっていう思いもあります。
―――三輪:田植え体験や稲刈り体験などのイベントは最近目にすることが増えたのですが、実際に自分で最初から最後までやるってなると、全然違いますよね。草刈りとか水の管理とか、イベントでは見えない部分がお米作りにはたくさんあるなって思いました。
真帆さん:そうですね。うちに参加しにきてくれている方の中には、作業がある日は毎回来て、たくさん質問して熱心に学ぼうとされる方もいます。お米づくりについて深く知りたいと思っている人には、すごくお得な講座になっていると思います。
自給自足の体験学習を提供〜自給自足の営みで伝えたいこと(ひら森のがっこう)〜
―――三輪:「ひら森のがっこう」の活動について教えてください
大輔さん:「ひら森のがっこう」は基本的に週に2回、火曜日と木曜日にやっていて、月に一回、土曜日もやっています。学校に行ってる子も来てくれてるし、不登校の子も来てくれていますね。
―――三輪:学童とフリースクールの機能が合わさったような感じですか。
大輔さん:時間的には9時半から3時半ぐらいまでだから、学校の代わりみたいな感じ。暮らしと遊びをテーマに、野外活動をメインでやっています。お米作りや味噌の仕込み、びわ湖で泳いだり、川で魚を捕まえたり、野草を採ってきてお昼のおかずにしたり、竹で水鉄砲を作ったり、その日やりたい事を朝のミーティングで話し合って、1日の活動内容を決めています。
真帆さん:無理に大人が色々詰め込むっていうよりは、子どもたちそれぞれで、学びのタイミングが、はまっていくといいなという思いで見守っいてる感じです。自然と触れ合った感覚的な学びが、中学、高校ぐらいになってきた時に、繋がったり、言語化できるようになったり、自分で思考して、理解できるようになればいいなと思っています。
―――三輪:僕も小さい頃に穴掘りばかりしていて、でもそれが後々に役に立ったなと思うことがあります。偏差値教育とはちょっと離れて学ぶということですよね。
真帆さん:中学生くらいから、偏差値教育ってずっと続くじゃないですか。より良い高校へ行くための中学、大学へ行くための高校みたいな流れしかないとは思ってほしくないなって。
それらの評価で進学することを望むことは悪いことじゃない。でも私は、色々な選択肢があっていいし、数値だけで測られることってどうなんだろうと疑問に思っています。「自分はどうしたいのか」、「自分は自分」って思えることも大事なんだと思う。「ひら森のがっこう」では、色々な選択肢をできるだけ具体的に、大人も一緒に見つけていけたらと思っています。
―――三輪:これからこの地域でやっていきたいことはなんですか?
大輔さん:「ひら森のがっこう」を事業として成り立たせていきたいですね。関わってくれているスタッフがボランティアに近いので、お給料を払えるようにしていきたいです。現在は週2日なんですけど、将来的には小、中学校と同じように週5日間通ってもらえるようにしたい。学校に馴染めない子どもたちの選択肢になってほしいです。
―――三輪:真帆さんはいかがですか?
真帆さん:そうですね。子どもたちが日本の未来をつくっていくし、私たち大人にとっても、毎回学びの多い時間になっているので「ひら森のがっこう」が必要とされるなら続けていきたいです。出会った子どもたちと、お互いに育っていける場所として、気持ちよく継続していけたらいいなって思っています。だから「ひら森のがっこう」に関わってくれている人には、時間を割いてもらった分のお返しをできたらと思います。あとは、スタッフは今後、色々な世代の方を折り混ぜて、どこからどこがスタッフか分からないようになると面白いなって思っています。今のスタッフは40代以上の人が多いんですけど、大学生や20代の人たちが増えて、色々な大人や先輩と関わることで、子どもたちに、こんな生き方があるんだっていう選択肢を見せられたら嬉しいです。
「田んぼのがっこう」での稲刈り
「ひら森のがっこう」今日やること
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