- SMOUT
- プロジェクトをさがす
- 家族として入っていくから忘れられない旅になる!! 人生を豊かにする「萩の農泊」
現在、日本のインバウンドは大変好調で、9月時点で既に前年の年間累計2507万人を上回っており、さらには過去最高だった2019年の3188万人を超えそうな勢いです。
インバウンドが増えるといいことがある一方で、東京、箱根、富士山、名古屋、京都、大阪などを巡るいわゆる「ゴールデンルート」に外国人観光客が集中してしまうことで混雑や騒音、ゴミなどのオーバーツーリズム(観光公害)や、宿泊料金の高騰などの問題が発生しています。そういったオーバーツーリズムを解消するには、観光客を受入れながら、地元住民の生活の質も確保できる持続可能な観光地域づくりを行なっていかなくてはなりません。そこで注目されているのが「農泊」です。
「農泊」とは、農山漁村に宿泊し、豊かな地域資源を活用した食事や体験等を楽しむ「農山漁村滞在型旅行」のことで、「農山漁村」と書いて「むら」と読みます。
「農泊」は、古民家・ジビエ・棚田など様々な地域資源を活用した観光コンテンツを提供し、観光客に長時間の滞在と消費を促すことで農山漁村における「しごと」を作り出し、持続的な収益を確保して地域に雇用を生み出すことと、移住・定住も見据えた関係人口の創出の入口とすることが狙いです。
確かに理想としてはそうなのですが、農山漁村にインバウンドを呼び込むには、的確にターゲットを定めた上で、農泊推進や人材活用といったソフト面と、宿泊施設等ハード面での環境整備、そして海外向けのプロモーションが不可欠。しかし人口減少と高齢化の進む農山漁村だけで、それらを担うのは大変困難です。そこで農林水産省では有望な地域を「農泊インバウンド受入促進重点地域」として選定し、誘客体制を重点的に強化することで、日本における農山漁村地域へのさらなるインバウンド受入れを図っています。
個性豊かな農山漁村が点在するここ、萩市でも10年以上にわたって農泊に取組んできました。そして今年6月、萩市ふるさとツーリズム推進協議会が、「農泊インバウンド受入促進重点地域」に選定されました。とはいえ、まだまだ知られていない萩の「農泊」。評価されたポイントや他地域との違いとは、一体どのようなものなのでしょうか。
今回、萩市ふるさとツーリズム推進協議会事務局長の宮﨑隆秀さんと、はぎまえ698合同会社の代表社員の河津梨香さんにお話を伺ってみましたので、皆さんも一緒に萩の農泊について掘り下げていきましょう! 生産者さんの顔の見えるごはんにハマって5年目の萩市ローカルエディター・三枝英恵がアテンドします。
無理せず・背伸びせず・自然体!「萩の農泊」の付加価値を形成しているものとは?
三枝
この度は、農泊インバウンド受入促進重点地域に選定されたということで、おめでとうございます。
宮﨑さん
ありがとうございます。昨年度の1次公募では落選してしまったんですが、2次公募で選定されて、萩市としても自分たちのやってきたことを認めてもらえたということで、うれしいですね。
三枝
萩市が選ばれた理由とは、何だったんでしょうか。
宮﨑さん
萩市ふるさとツーリズム推進協議会では2013年から教育旅行を中心に農泊の受入れを行いつつ、組織の自走を目指して収益性の高いインバウンドの実証実験を行ってきました。私も地域おこし協力隊として3年間、体験型観光で地域を活性化させる取組みに従事しました。
そして2019年に、同じ萩市地域おこし協力隊として活動していた河津梨香さんと「はぎまえ698合同会社」を設立して事務局を移管し、海外の旅行会社と契約を結んで本格的なインバウンド定期ツアーの受入れを開始しました。現在、コロナ期間を除いて年間30本以上のツアー数、約390名の受入れを行っています。
今回の選定では、そういった民間組織による事務局運営、萩のまちの特徴でもある歴史と自然の双方を味わえるコンテンツ提供を心掛けていること、教育旅行時代から長年にわたり地域と一緒に築いてきたホームステイ型の受入体制などを評価して頂いたのではないかと思います。
三枝
しかし…インバウンドツアーの受入れを本格的に開始した矢先のコロナショックだったんですね。よくぞここまで復活されましたね!
河津さん
はい。水際対策が緩和された2022年の秋から、受入れを止めていたインバウンドを再開したのですが、私たちが凄いというわけでなく、ホストとスタッフが凄い!ということをぜひ強調したいです。もちろん、ちょっとは不安がありましたが、何よりホストの方々の受入れへの熱量が凄かったんです。「やらない」という人はいませんでした。萩の人の特性なんでしょうか、「萩のためになりたい」という思いが強いんですね。
宮﨑さん
全国的には、コロナで自宅への受入れが難しくなってきたことで一棟貸しが増え、ホームステイ型は珍しくなりました。やめてしまった協議会もありますし、新しくできた協議会もあります。そういったところは、地域の中でレストラン・宿泊・アクティビティと分ける分散型ホテルスタイルをとっていて、宿泊メインではないところも多い印象です。
そうやってホストを務めてくださるご家庭が全国で減少する中で、萩ではモチベーションが保たれていた、というところがあります。
河津さん
ホームステイ型のいいところは、ホスト側は暮らしている家を活かせること、ゲスト側は素の暮らしの中に、まるで家族のように入っていけるところです。
たとえば、あるご家庭では「日本のいち家庭の団らん」といった感じの滞在を提供しています。スイカ割りやカードゲーム、一緒におやつを作る、駄菓子コーナーに行くなど、家族の団らんの中でゲストも楽しまれています。また、ゲストのリクエストを受けて、可能であれば柔軟に応えるホスピタリティもお持ちです。
宮﨑さん
海外の方は交流を求めていると思います。そして知的好奇心も満たしたい。それにはコミュニケーションが欠かせません。一方通行だと楽しくないですから。
私たちの提供する農泊は、あくまでホームステイだというところが持ち味です。ポイントを巡る旅行とは違って、萩に居ること自体が異文化に居るという体験になります。
河津さん
たとえば着付けができる方だったら、着付けが好きで、受け継いできた着物もあるから、そういったおもてなしをされています。「イネの苗床を見る」という体験を提供するご家庭もありました。主体性をもってやっているからこそ、形にすることで、付加価値が形成できます。技・人脈・コミュニティといったホストの方々のチカラを通して、“萩らしさ”を体験して頂けると思います。
宮﨑さん
他の地域には“農泊だったらこれをやる”というのがあるように感じるのですが、萩市ふるさとツーリズム推進協議会では、ホストの方々におまかせしています。無理をしないで、背伸びをせずに、自然体で受入れてもらいたいと考えています。
河津さん
萩は維新に限らず、暮らしや風景においても伝統や歴史が最大の魅力だと思うのですが、外国人ゲストはそこを評価してくれますし、萩の魅力を大切に思うホストのことも評価してくれます。
そういった外的刺激は地域の人々にとって、本来の魅力に目を向けるきっかけにもなりますし、萩を愛する気持ちにプラスの作用をもたらしていると感じています。
農泊インバウンド受入促進重点地域に選ばれたことは、ホストが萩にもっている思いや誇りもふくめて、萩の人や文化が素敵なことを世界の人に知っていただくチャンスだと思っています。
まるで親戚の集まりのような、帰省中の家族のような…家族に溶け込んで萩暮らし!コタツの魔力から抜け出せるかな?(笑)
浴衣姿でポーズをとる女性たちと、苗床を手にニコニコの男性。異文化体験を楽しんでいらっしゃいますネ!
萩はホストがプレイヤー!若い世代や移住者も参入してまち全体の活力につなげたい
三枝
今回「農泊インバウンド受入促進重点地域」に選定されたことで、どのような支援があるのでしょうか。
宮﨑さん
国は地方の観光客をもっと増やしたいと考えていて、農水省では年間延べ宿泊者数を令和7年度までに700万人泊とすることを目標にしています。そのうち訪日外国人旅行者の割合は 10%です。目標達成に向け、そのモデル的な位置付けとして農山漁村振興交付金(農泊推進型)による追加的な受入れ体制整備の支援や、特設webサイトやデジタルパンフレットによる情報発信、海外旅行会社等との商談会や観光庁との連携、JNTO(日本政府観光局)による海外向けプロモーション支援などがあります。
私たちとしては、発信力に関してはまだマンパワーが弱いので、そういった支援があるのはすごくうれしいですね。
三枝
萩市ふるさとツーリズム推進協議会としては、これからどのように活動していかれますか?
宮﨑さん
インバウンドはとても大きなマーケットなので、農泊をまち全体の動きにしたいと考えています。
ホストファミリーにも、新しく若い世代や移住者の方も加わってきていて、萩の中での事業、活力として大きな可能性があります。これからもホストの方々や、英語スタッフさんと協力しながらチャレンジしていきたいです。
河津さん
萩はホストがプレイヤーです。萩の農泊をもっと知って頂きたいです。
移住体験としても、農泊はぴったりです。ぜひ萩の人に会いに来てください。
三枝
ありがとうございました。これからもがんばってください!
左から宮﨑さん、河津さん。そして作戦参謀&英語スタッフ&ホストとマルチに活躍してくれる秋山さん。みんな萩市地域おこし協力隊のOB・OGです。こんな風に一緒に戦い抜いてきた仲間がいるから頑張れる!
入村式に迎えに来たホストファミリーのアットホームさにびっくり。ゲストの緊張がほぐれる瞬間です。
「人生とは旅である」ならば、「旅は人生のショート体験コースである」
人生はよく旅に喩えられます。なぜなら人生は、何も持たずに生まれてきて、何かを得て生まれる前の場所へ帰ってゆくまでの一つの旅路だから。
一人の人間が何も知らずにで生まれ出て、様々な人や物事にふれる中で知識を蓄え、いろんな術を身に付け、その過程で感情、情緒、思考といったものが芽生え、それが個性や人格をつくり、発言や行動に現れて人生をつくってゆく旅。つまり、刺激となるような、自分の成長の糧となりそうな出会いが多ければ多いほど、その人の人生は豊かになるということになります。
それでは、「人生とは旅である」ならば、「旅は人生のショート体験コースである」と言い換えてもいいのではないでしょうか。すると、素通りの旅がいかに意味を持たないのかが見えてきます。何の感情も湧かない、心動かされない旅など、人生を豊かにするわけがないからです。
「インバウンド」という言葉を度々聞くようになって10年余りが経ち、良い面だけでなくトラブルの様な負の部分も耳にするようになりました。
これがなぜ起きるのかいうと、ポイントだけを駆け足で回るような観光旅行では、お金を払ってその旅を「買った」と錯覚し、正にポイントをゲットしたら、旅の目的が達成したと思ってしまう人がいるからではないかと私は思います。そういう人に「訪れた国・人・文化にリスペクトを持て」「行動に責任を持て」と言っても難しいのかもしれません。
一方、ホームステイ型で家族の一員となって過ごす旅はどうでしょうか。自分の家や家族をないがしろにしたい人なんていないでしょう。家族との暮らしは平凡なようでいて、同じ夕陽が一日とないように、実は毎日少しずつ変化があります。最初は想像もしなかったような遠い異国の地で、物言わぬ家や自然との間で、人と人との間で、暮らしの中で、肌で感じながら過ごす体験は、お金で買うことはできません。きっと自分だけの宝になるはずです。
萩市ふるさとツーリズム推進協議会が、地域の皆さんと一緒に提供する農泊は、決して形だけ整えて用意できるようなものではなく、暮らしそのもの。「地域資源」というと、豊かな自然や歴史遺産といった「環境」だけに注目してしまいそうですが、萩の農泊にとって最大の資源は、なんと「人」だったんですね。
萩市ふるさとツーリズム推進協議会のような活動を通じて、日本におけるインバウンド観光の価値観も変わっていったらいいなと思いました。皆さんはどう思いますか? よかったら一度、萩の農山漁村にもいらしてくださいね! それでは次回のレポートでお会いしましょう! 最後までおつきあい頂き、ありがとうございました。
リクエストを受けて訪れた酒蔵で、丁寧な説明に感激するゲスト。酒造りの里で素敵な思い出ができましたね!
最前列右から2番目のひときわ元気なピースサインの奥様はホストさん。2列目の一番右は移住者で英語スタッフの牧野さん。「萩の農泊」は地域で一丸となっておもてなししてくれるから力強い!
にユーザー登録して もっと活用しよう!無料
- 地域をフォローできるようになり、地域の最新情報がメールで届く
- あなたのプロフィールを見た地域の人からスカウトが届く
- 気になった地域の人に直接チャットすることができる
皆さんは、「はぎまえ698」の“698”って、何のことだかわかりますか?
実はこれ、萩市全土の広さ698.31平方キロメートルのことなんです。萩市は、北部を日本海、東部は島根県に接し、南部の市境界付近には標高700mを超える山々が連なる変化に富んだ豊かな自然環境が特徴で、東京23区の総面積627.53平方キロメートルを超えるほどの大きさです。
今回、社名の由来についてあらためて代表社員の河津さんに伺ってみたところ、「江戸前」という言葉があるように、萩の眼前に広がる豊かな海、そして地域毎のイイところを萩全土(698)から集め、素敵な萩ブランドを取揃えてご用意します!という思いを込めてネーミングされたそうです。
また、旅行・観光業では
・情報収集して計画を立てる「旅マエ」
・旅行先で実際に行動する「旅ナカ」
・旅行の感想やお土産を周囲に拡散する「旅アト」
という段階ごとの3つのアプローチがあります。
萩の「旅マエ」計画は、「はぎまえ698」で情報収集ですよ〜! といった意味もあるそうです。
はぎまえ698および萩市ふるさとツーリズム推進協議会のfacebookには、参加した人たちの「旅ナカ」「旅アト」の笑顔があふれています。萩を訪れたいと思っている方は、ぜひ一度のぞいてみてくださいね!
ちなみに今年、SMOUT秋のキービジュアルに、はぎまえ698「FURUSATOサイクリング」の光景が選ばれました。
こんな素敵な旅を、萩で体験してみませんか?興味ある&お問い合わせ、お待ちしております。
こんにちは!萩市ローカルエディターの三枝です。萩・明倫学舎4号館「はぎポルト」から、地域で輝く人や楽しいイベントなどを紹介しています。わたし自身も東京からの移住者ですので、これからも移住者としての視点も大切にしながら、皆さんのお役に立てる情報をお伝えして行きたいと思っています。
【はぎポルト 開館時間】
毎週火曜日~土曜日
9:00AM~6:00PM
地域のディープな情報や空き家の提供や空き家バンクのご相談、定住相談の窓口として、どなたでも自由にお越し頂ける開放的なスペースです。キッズコーナーもありますので、お気軽にお立ち寄りください。
興味あるを押しているユーザーはまだいません。